5号館を出て

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スウェーデンでタミフル耐性ウイルスの環境調査が開始された(メインターゲットは日本)

 ちょっと前、26日のScienceDailyニュースです。

 What Is The Fate And Effects Of Influenza Drug Tamiflu In Environment?(抗インフルエンザ薬タミフルは野生ウイルスにどのような影響を及ぼしているのか?)

 スウェーデンの科学省のようなところだと思うのですが、FORMASという組織が、590万スウェーデンクローネ(5.9 million Swedish kronor = 744 526.9 U.S. dollars= 70.8870704 million Japanese yen 日本円で7000万円ほど)の研究費を出して、タミフルによって環境中でどのくらい耐性ウイルスが出現するのかという予測調査をすることになったというニュースです。

 ご存じのように、我が国を始め世界的にタミフルに耐性のインフルエンザウイルスが出現しています。科学者はヒトに処方されたタミフルが分解されずに自然界に拡散していくことが、野生ウイルスが耐性を獲得する原因になるのでないかと危惧しているとのことです。私は、ヒトの身体の中でタミフルにさらされたインフルエンザウイルスの中から耐性のものが出現するのだとおもっていましたが、スウェーデンの科学者達はタミフルによる環境汚染を心配しているようです。

 もちろん、懸念されている新型インフルエンザの世界的流行が起こった時に、すでにウイルスがタミフルに対する耐性を獲得していたりしたら、対策がかなり難しくなることが予想されるということで、ウプサラとウメオの両大学とカロリンスカ研究所の環境化学者、ウイルス学者それに感染病学者などが協力して研究するプロジェクトです。

 その記事の中で、ちょっと気になることが書いてありました。研究調査対象として日本の汚水処理施設におけるタミフルの分解調査と、日本各地の表層水(池や川や湖や海岸も?)にどのくらいのタミフルが含まれているのかを調べることが入っています。日本ではインフルエンザにかかったヒトの40%にタミフルが処方されているという世界の「タミフル最先端国」です。そのために研究チームでは日本を「ホットスポット」として調査の最重点地域にしているとのことで、調査には京都大学の研究者も協力することになっています。環境中にあるタミフル量が推定された後には、それをカモなどに投与してトリインフルエンザにどのくらいタミフル耐性が出現してくるのかを調べることにしています。

 研究プロジェクトの正式名称は"Occurrence and fate of the antiviral drug Oseltamivir in aquatic environments and the effect on resistance development in influenza A viruses"です。下手な訳をしてみると、「水環境中に放出されたタミフル(オセルタミビル)の動態とそれがA型インフルエンザにどのように耐性を与えるかの影響調査」とでもなるでしょうか。

 私はそこまで考えたことはありませんでしたので、彼らが日本におけるタミフルの膨大な使用量に目をつけて、それが環境中に放出されてそこでウイルスに耐性を獲得させているのではないかという視点は新鮮でした。それと同時に、日本におけるタミフルの使用状態が「過剰」なのではないかと批判されているような気分にもなりました。

 外国の資金で日本の環境調査をしてもらうなどということは、「科学立国日本」としてはちょっと恥ずかしいことなので、文部科学省もこのプロジェクトに協賛してお金と人と便宜をはかり、共同研究を立ち上げるべきではないかと感じた次第です。

 日本の科学者としては、ちょっと恥ずかしい話題になってしまいました。
Commented by こーた at 2008-12-01 09:23 x
発想もすごいですが、環境中のタミフル関連物質の量なんて検出できる濃度なんだろうか・・・?
by stochinai | 2008-11-30 23:51 | 医療・健康 | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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