5号館を出て

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使用説明書通りに使わないことで起こった事故の責任は消費者だけのものなのか

 経産省の調査で「ときには命を奪うこともある重大製品事故のうち、およそ2割が消費者の誤った使い方や不注意で起きていることが」わかったというニュースが出ていたのですが、それは消費者という存在を過大評価していないだろうかという気がしました。

 重大製品事故の2割、消費者の誤使用・不注意 経産省 (朝日コム)
 重大製品事故は、死亡▽重傷(全治30日以上)▽後遺障害▽一酸化炭素(CO)中毒▽火災――のいずれかの被害が出た事故。07年5月に経産省への報告がメーカーと輸入事業者に課され、昨年末までに約2100件報告された。
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 そのうち、経産省が昨年度調査を終えた440件を原因別にみたところ、誤使用や不注意など消費者に非があるとされた事故は、43製品で計91件(21%)あった。
 といいますが、消費者の中には使用説明書も読まず、作って売る側が想像すらしていないような使い方をする人がいることを想定せずにものを売って商売してもいいものなのでしょうか、と思ってしまいます。というか、ものを売るということは、その値段の中にそうした「異常な使い方」をすることを想定したリスク回避の費用が入っているというのが消費者の期待だと考えてはいけないのでしょうか。

 上の表を見ても、火の消し忘れや石油ストーブに洗濯物や布団が付いて火事になるとか、給油時に油が漏れて引火したなどというものはさておき、掃除不足や電動自転車の片足乗り、衣類乾燥機にオイルの付いたタオルを入れて乾燥させる、汚れた電子レンジを使うなどということまで消費者の責任にしてしまうのはちょっと酷だと感じました。

 もちろん、そうした製品には使用説明書というものが添付されており、そこに書いている注意を守らずに使って起きた事故に関しては販売者側は免責されるということになるのでしょうが、「人間はミスをする」という前提に立つならば、免責うんぬんを越えたフェイルセーフな製品を作っていくのが企業の責任というものだと思います。
 経産省製品事故対策室は「消費者の側に、製品の安全性に対する過信や危険性への意識の低下があるのではないか。注意書きや取り扱い説明書をよく読んで使ってほしい」と話している。
 このようにおっしゃいますが、私から見ると「経産省や企業の側に、消費者の使用行動に対する過信や危険性への意識の低下があるのではないか」と思ってしまいます。

 政府は国民から税金を集めているのですし、企業はものを売ってお金を集めているのですから、経産省には国民の教育と、企業にはどんな使い方をしても事故が起こらない製品の開発にもっとお金を投入していただきたいと考えます。
Commented by それでも at 2009-03-23 07:21 x
それでも過剰なものは過剰ですよ。
マンナンライフだって逆に企業が可哀そうだとおもいませんか?
高齢のお年寄りに食べさせて、詰まらせて死亡した事故だってどっちかといったら介護者が責任を問われるべき。
そんなことが多くなってきているとも感じます。
使用責任と製造責任どっちも大切なのは言わずもがなですが。
Commented by ゆー at 2009-03-23 07:58 x
確かに、経済産業省の事故報告書は酷いですね。
製品の側に責任を押し付けると、面倒なことになるのはわかりますが、消費者を保護し再発防止策を考えるという発想に欠けます。
それでもさんは一度、経済産業省の製品事故報告書を実際にご覧になってみることをお勧めします。
マンナンライフは異常な事件でしたので、特殊な事例を持ち出すのはフェアではないかと。
一番大事なのは、企業側で消費者の使用実態を知り、それに即した製品をつくることではないでしょうか。
Commented by Yottin at 2009-03-23 10:14 x
消費者は経産省の指導で買うわけではなく、自分の選択権を行使して商品を購入するわけですから、なんでも役所のせいにするのはどうかと思います。そんな仕事をするための人員を増やせば、役所には「税金の無駄」、企業には「もっと安くしろ」という声が行くのは必至だと思います。
日本人の様々な意識低下が起きているのは間違いないでしょう。
Commented by stochinai at 2009-03-23 12:42
 基本的にはYottinさんのおっしゃることに賛成ですが、そのためにはまず役所の組織とそれが現在持っている膨大な許認可権を大幅に縮小し、売る側と買う側それぞれが「自己責任」を全うできるような体制にすべきだと思います。
 現在のような「大きな政府」で膨大な税金を使いながら、政府の責任を回避し消費者に自己責任を押しつけるのは無責任もはなはだしいと感じたのです。
by stochinai | 2009-03-22 23:42 | つぶやき | Comments(4)

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