5号館を出て

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なぜ我々は勝手に「清純派女優」を作り出し、壊れたイメージの責任まで当人に負わせようとするのか

 もはや取り上げるには遅すぎるきらいもある酒井法子事件ですが、これだけ大騒ぎしたあげくに起訴猶予などという脱力的な顛末になりそうな気配もあります。とはいえ、同じような事例をこりずに繰り返している我々はそろそろ目を覚ます必要があるのではないかと思い、思い指を動かしながらキーボードに向かっています。

 そもそも、酒井法子という女優を「清純派」として売り出そうとしたのは誰なのでしょうか。また、その宣伝文句にまんまとだまされて、彼女を清純な人間だと信じ切っていたのは誰なのでしょうか。

 もしも本人自らが進んで自分を清純派女優として売り出そうとしていたのだとするならば、とても堅気の商売とは思えない「サーファー」などという人と結婚することを世間に公表するはずがないと思われますので、どう考えても彼女は自分が清純派女優であることを自覚していたとは思えません。もし、自分から清純派女優を売り物にしようと考えていたならば、その虚像を壊すことのない日常生活を送るのがプロというものです。(注記:寡聞にしてプロのサーファーというものが日本にいるとは思わなかったので、サーフィンをするだけで生活できる「サーファー」というれっきとした職業があるのだとしたら、お詫びして訂正します。)

 とするならば、彼女に貼られた清純派女優というレッテルは、彼女を売って金儲けをたくらむプロダクションやテレビ会社などの営業戦略に過ぎなかったのだと思います。それに、まんまと乗せられた我々の多くはただの愚か者だったということです。

 彼女個人としては清純派女優として売り物にされることに反発していたに違いありません。その結果、サーファーとのできちゃった結婚を公表し、その後は足首に刺青を入れたり、誰が見てもはしゃぎすぎと思えるようなクラブでDJをする姿を録画されてYouTubeに投稿されるなどという、いわゆる不良的な行動を人目にさらすことを意図的に行っていたのではないかとすら推測されます。少なくとも、清純派を装うことを努力してはいなかったことは明らかです。

 清純派女優として売り出されそうになり、自らそれを破壊して本人は楽になったのではないかと思われる存在として、私は沢尻エリカを思い浮かべてしまいます。「パッチギ」を見た時の彼女の印象は、私にとっては清純派そのものでした。しかし、その後の「エリカ様」報道などによって、それが意図的に作られたものであるということが赤裸々になりました。逆に、彼女はそのように清純派として祭り上げられそうになった状況を自分で打破したのかもしれません。

 一方、酒井法子はそれほど強くなかった、あるいは積極的でなかったため、人が自分のことを清純派と思い続けるならばそれは勝手にすればよいと放置したのではないかと思われます。「この世界」では自分から破壊しない限り、自分の虚像を作り上げ商売に使おうとする力の方が強いので、結果として今日に至るまで酒井法子=清純派女優のイメージが温存され続けてきたのだと思います。

 彼女の周辺あるいは彼女自身のスキャンダルは散発的には出ていたようですが、彼女のイメージを破壊するところまで至らなかったのは、彼女の中にもあえてその状況を壊さずに、できればそれを利用しつつ自分の利益につなげようという気持ちがあったからかもしれません。

 いずれにせよ、今になって出てきた彼女の「真の姿」は清純派女優とはほど遠いものがたくさんあったにもかかわらず、今回の事件が起こるまで彼女は清純派として扱われ続け、事件が起きた瞬間に「あの清純派女優に何があったのか」という扱いになり、数日後には「あの『清純派女優』は実は・・・」という、いわば「お約束の事件報道」が、デジャブのように今回も繰り返されているというのが私の印象です。

 覚醒剤を使用するなどという違法行為は、淡々と処罰されるべきものだと思います。しかし、覚醒剤に手を出した彼女には清純派女優としての自覚がなかったことは明らかであり、清純派女優がファンの期待を裏切ってそうした行為に及んだという非難はまったく当たらないと思います。

 イメージが壊れたのではなく、最初から無かったイメージを本人の意図とは無縁のところで勝手にまつりあげ、商売にしアイドルとして期待したプロダクション、映画会社、テレビ局そして消費者としての我々の責任も問われなければならないのだと感じています。

 こうした構造の中で、我々は何人の若者の青春を破壊してきたのでしょうか。そろそろこうした悪循環を断ち切って、成熟した「芸能」の世界を作っていきたいと願うものです。
Commented by nw5709 at 2009-08-12 02:32
そうそう. 何故、清純派が?とか、いう見出しがあったけど、外野からしてみたら、ちゃんちゃらおかしい.なんか、最近、変だよ.メディアは.
それとも視聴者である人々が試されてるんかな? もうTVはうんざり.とってももの足りない人たちが、それ相応の番組つくってるて、見え見え.人材不足は、こういうところにも影響しだしてる.
Commented by 123 at 2009-08-12 11:32 x
あの手のお肌のつるつるしたかわいい顔を持った女の子を見ると(デビュー当時の)、清純派であってくれ、清純派に違いないと思うようなスイッチがどこかで入るようなパターンが前からあるんじゃないでしょうか。子供は必ず無垢だと思ったり、無垢はいいことだと思ったり、日本の大衆文化の1つとしての無垢願望が擦り込まれてるようなところがある気がします。
Commented by docnosuke at 2009-08-12 11:56 x
「アイドル」という言葉の意味するところは「偶像」であり、彼女の仕事はそんな虚像を提供することです。彼女にとってはそれが仕事だったわけなので、それを自分の飯の種にしていた以上は、自覚のない行動の後にこういった扱われ方をされてもしかたがないのかとも思います。まあメディアはネタになればなんでも良いわけだし・・・

>とても堅気の商売とは思えない「サーファー」などという人と結婚することを世間に公表するはずがないと思われますので

これはちょっと言い過ぎではないでしょうか・・・。スポーツ選手は恥ずかしい職業なんでしょうか?芸術家は?瑣末の研究者は・・・?
Commented by stochinai at 2009-08-12 12:53
 確かに、ちょっと言い過ぎでした。ただし、サーフィンというスポーツで食べていけるプロというものは、日本で存在するのでしょうか。サーフィンのインストラクターとかならわかるのですが・・・・。
Commented by stochinai at 2009-08-12 13:10
酒井法子さんの夫について、「日本プロサーフィン連盟は4日、『当団体には登録されておらず、“プロサーファー”ではない』とのコメントを発表した」という記事もありますので、プロのサーファーというものがいるということですね。認識不足でした。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2009/08/05/02.html
Commented by stochinai at 2009-08-12 13:12
日本プロサーフィン連盟ホームページ
http://www.jpsa.com/
Commented by ひろ at 2009-08-13 20:33 x
彼氏がサーファーでクラブにいく女性なんてやまのようにいますよ。だから彼女らが悪女というわけではないですよ、すこし行動が単純だとは思いますが。ちゃんとした会社に勤めていて服装もしっかりしてるけど、内心では男は金づるとしかみていない計算高い清純派ぶった悪女のほうがへどが出ますがね。のりぴーがどっちのタイプの女性か知りませんが、本人は「これで芸能生活終わりね」ぐらいの感想なのでは。のりぴーが青春返せとは思ってないと思いますが。
。成熟した芸能も青春も存在できないと思いますよ。本当のわたしを見てってよくドラマのセリフにありますが、本当の人間さらけだされたら見るに堪えないのでは。アイドルの転落を含めて虚像を楽しむのが芸能でしょうから先生が嫌いでもたのしんでる視聴者がいる限り繰り返すでしょう。ちょっと未熟なほうがアイドルも青春もおもしろいのでは。
もしかして青春かえしてほしいのはのりぴーファンだった先生というおちではないですよね。
Commented by stochinai at 2009-08-13 21:26
 残念ながら、私はのりぴーが登場した時にはすでに大人になりすぎており、彼女のドラマや音楽はほとんどフォローしていないのです。というわけで、私にとっては実はどうでもいいエピソードなんですけど、選挙前の大事な時にマスコミがこんなささいな「事件」に大きなエネルギーを割いていることを見て、ひとこと「嫌み」を言ってみたというところでしょうか。

 ところで、一部ではすでに言われていることですが、人が死んでいる「押尾事件」のほうがはるかに重大ではないかと思われるのに、なぜかそちらがおろそかになっていることも感じられ、のりぴー事件がそちらをごまかすために必要以上にフレームアップされているということもあり得るかなと、野次馬としては思ったりもします。
by stochinai | 2009-08-11 23:54 | つぶやき | Comments(8)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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