5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

恐竜の小ささ自慢

 科学の世界の悪習の一つが、最初のとか最古のとか最大のとか最小のとかを比べ合う風潮だと思いますが、やはり誰にでもわかりやすい物差しのひとつなので、次々と出てきます。そして時にはその競争が災いの種となり、勇み足とかねつ造が起こったりすることもありますので、気をつけなければなりません。(とは言え、私も論文を書くときには、ついつい「これは世界で初めての・・・」というフレーズを書いてしまうことがあります。)

 さて、今回は恐竜の最小記録の更新です。なんと、今日出た論文の内容なのですが、すでに復元模型もできていました。

 復元模型の写真があるのは、ナショナルジオグラフィックニュースです。

北米で最小の恐竜、極小チワワ並み
 写真は、カリフォルニア州ロサンゼルス郡の自然史博物館に展示されているティラノサウルス・レックス(T・レックス)の頭骨の手前に置かれた北米最小の恐竜、フリタデンス・ハーガロルム(Fruitadens haagarorum)の復元模型。体長は尾の先まで含めてわずか70センチ、体重は1キロにも満たない体で身軽に動き回る恐竜だったと考えられている。1億5000万年ほど前のジュラ紀にブラキオサウルスなどの大型の草食恐竜やアロサウルスなどの肉食恐竜の足下を駆け回っていたのだろう。
恐竜の小ささ自慢_c0025115_20164125.jpg
 あまりの小ささに、化石が発見されたのが1970年代だったにもかかわらず、子どもの恐竜だと思われていたのか、今日までまじめに分析されてこなかったようです。

 それをこの度調べた結果、新種の恐竜の成体の骨であることがわかり、「、2008年に確認されたニワトリサイズの恐竜アルベルトニクス・ボレアリスを、北米大陸最小の恐竜の座から引きずり降ろすことになった」というわけです。

 原著論文もオープン・アクセスになっています。

Lower limits of ornithischian dinosaur body size inferred from a new Upper Jurassic heterodontosaurid from North America
Richard J. Butler, Peter M. Galton, Laura B. Porro, Luis M. Chiappe, Donald M. Henderson and Gregory M. Erickson
Proceedings of the Royal Society B
Published online before print October 21, 2009, doi: 10.1098/rspb.2009.1494


 こちらには、もっと学問的な香りのする発掘現場の地図と、再構築スケッチが載っています。
恐竜の小ささ自慢_c0025115_20204390.jpg
 そう言えば、今日出たNatureにも今年の春に PLoS One に出て、ヒトとサルをつなぐミッシング・リンクの発見として、世界中の報道をにぎわせたIda(Darwinius masillae)の歯列がヒトの祖先型に似ているのは収斂進化によるもので、決してヒトとサルの共通祖先などではないという論文もでていましたね。

 解説
Fossil primate challenges Ida's place
 原著
Convergent evolution of anthropoid-like adaptations in Eocene adapiform primates

 間違いはどうやっても起こるものです。大いに発表して大いに議論し、間違いもどんどん正されていくということでいいのではないでしょうか。
by stochinai | 2009-10-22 20:33 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai