5号館を出て

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北海道における遺伝子組換え作物論争を振り返る「場」

 先週の土曜日、3月13日(土)に「北海道GMO問題を各人の立場で振り返る場」というものに参加させて頂きました。これは、ひょんなことから私もメンバーに加わることになった社会技術研究開発センター(RISTEX)の研究開発プロブラム「科学技術と社会の相互作用」に採択された研究課題「アクターの協働による双方向的リスクコミュニケーションのモデル化研究」の実践のひとつとして行われたものです。

 研究とといえば、生物を使ったものしかやったことのなかった私にとって、こうした実際に社会の中で起こっていることを、そこで生活しているリアルな存在である人間と関わり合いながら行なう「研究」は勝手が違うというより、これは「研究」というよりは「実践」以外のなにものでもないという感覚でした。

 特に、参加された人の多くが、長年北海道で遺伝子組み換え作物(GMO)問題に深く関わってこられた、研究者、生産者、販売者、消費者ということもあって、これまでそうした場にほとんど関わったことのなかった私にとっては、とりあえずいろいろとお話をうかがってみようという気持ちでした。

 もちろん、過去の事情について間接的な情報以外に接したことのない私ですから、過去のGMO問題を振り返るなどということができる立場にはないので、研究プロジェクトのメンバーという立場から司会という役割をいただいたものの、実質上は会のタイムキーパー・進行係ということでした。

 それにしても、7年前から北海道におけるGMO問題の議論の中心におられた方々の言葉のひとつひとつがとても迫力のある重いもので、私などが授業の中で学生たちと行なう議論とのスケールの違いを噛み締めながら聞かせていただいておりました。

 会の時間として4時間とってあったのですが、中央でメインに話し合いを行なう円卓にファシリテーター・コメンテーターを含めて8名。そして、その話を聞きながら疑問やコメントを基本的にはメモとしてこちらに渡してくださるフロアのオブザーバーが20名弱いらっしゃいましたので、最初から時間が足りなくなることを想定しながら、発言者には失礼と思いながらもどんどんと時間切れということで発言をさえぎることが私の主な仕事でした。

 7年前に札幌の北海道農業研究センターで遺伝子組換え稲の初めての試験栽培が行われた時には、反対派と賛成派の間で激しいやり取りがあり、話し合いや妥協の余地などないような雰囲気だったと聞きます。しかし、それから 7年経つ間に北海道では食の安全安心条例やGM作物関連の条例が作られ、2006-7年にはGMに関して多様な立場の道民が参加した「コンセンサス会議」が開かれるなどの経過の中、さまざまな話し合いが行われて現在に至っているのだと思います。
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 そうしたことを反映してか、当日の話し合いでは確かに賛成派や慎重派という立場の違いは持ちつつも、円卓の方々は自分と意見を異にする人がなぜ異なった意見を持っているのかについては理解しているという雰囲気を十分に感じ取ることができました。

 特に、驚いたのは遺伝子組み換え作物には反対だとおっしゃっている方の何人かは、自分は遺伝子組み換え作物を食べることができると思っている(つまり、そういう意味での拒絶反応を持っているのではない)ということでした。口に入れたからといって、ただちに問題を起こすような存在ではないことはわかりつつも、環境や人々のライフスタイル、農政や食糧供給システムの問題として遺伝子組み換え作物に対して慎重な姿勢を取っているということのようです。

 もちろん、推進派の方々もおそらくそうしたことはわかっていながら、現実問題として今の日本において自由に遺伝子組み換え作物の栽培が許されていないことに対する不満を持っておられるようでした。

 というわけで私には、お互いが相手の考えていることや立場、そして遺伝子組み換え作物とは何かということについてのある程度の理解が深まっていると見えました。そうであるならば、この先はお互いが時間をかけてじっくりと話し合いを重ねていけば、お互いが納得できる方向を見いだすことは不可能ではなかろうと思います。

 良くはわからないのですが、同じ遺伝子組換え技術を使うならば、農薬をどんどん使っても大丈夫とか、農薬を使わなくても病気や虫がつかないとか、特別な栄養が付け加わったとかではなく、「これはおいしい」と誰でもが思えるようなものを作れば、生産者と消費者の利害が一致したところで、遺伝子組み換え作物の利用についてもう少し生産的な対話ができそうにも思えたのですが、素人の戯言でしょうか。

 というわけで、こうした社会問題に対しては稚拙なレベルにいる私ですが、ただの市民のひとりとしてこれからも勉強並びに参加させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

※このエントリーは、RIRiCブログ「話し合いによってお互いが納得できる結論へ至ることができるか」と同じ内容です。
by stochinai | 2010-03-16 19:55 | 札幌・北海道 | Comments(0)

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