5号館を出て

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デジタル・ディバイドで分けられた方にこそデジタルが必要

 今度の参議院選挙では選挙期間中のホームページとブログの更新は禁止されないことになったようです。ただし、インターネットそのものによる選挙運動が解禁されたわけではなく、twitterとメールは禁止のままだそうです。

 まあ、民主党としては前原代表辞任の原因となった「ホリエモン偽メール事件」のトラウマがありますので、メールは使いたくないという気持ちがあるのもわからないでもありませんが、twitterに関しては公式アカウントというものすらあるのですから「なりすまし」がどうのこうのというのは難癖にすぎないような気がします。

 それにしても、前回の選挙の時には民主党がネット選挙解禁を強く要求していたのに、今回は自民党がネット選挙解禁を主張して、民主党が防衛に回っているという図式は、「政治というものはそういうものなのだから」と言ってしまえば身も蓋もありませんが、与党も野党も信用できない存在であることを自ら証明しているようなもので、苦笑を押さえることができません。

 さて、自民党であれ民主党であれ、ネット選挙に反対する勢力がいつも決まって持ち出す理由の一つが、デジタル・ディバイドと呼ばれる、デジタル機器を使いこなせずに情報アクセスから疎外される人々のことです。さすがに、だんだんとデジタル・ディバイドを主張する声が小さくはなってきていますが、これは有線電話やラジオ・テレビのような無線通信放送サービスが始まった時にも、同じような理屈でサービスにアクセスできない人がいる限り、どんなに便利なものでも「公式」な選挙や行政サービスに使うべきではないということが言われたことの繰り返しに過ぎません。
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 (C) photoXpress

 たとえどんなに複雑な機械といえども、利用するにあたってその物理的原理や回路などについての知識などが必要ないことは、電話やラジオ・テレビなどですでに証明されたことであり、今やどんな「お年寄り」といえども、これらの機器を利用していない人はほとんどいません。

 つまり、インターネットもまったく同じ状況にあると考えると、時とともに「デジタル・ディバイド」などという言葉が近い将来に死語になることは確信できます。

 今日、私が言いたいことは、デジタル・ディバイドで仕分けられる側だと考えられる老人や、田舎に住む人などこそがもっともデジタル機器やインターネットが必要な人々だということなのです。

 先日、「老人向けの iPod touch としての iPad」という記事を書きましたが、iPod touch や iPhone の素晴らしさの一つが、画面上で2本の指を広げるというジェスチャーをするだけで字が大きくなるという仕掛けです。これで、老眼が進んだ人がうっかりメガネを忘れた時にも安心してメールやウェブの文字にアクセスすることができます。もちろん、普通のコンピューターを使いこなせれば、そういう機能がありますが、汎用のコンピューターがユーザーに優しくないインターフェースを持っているせいで、必要な人が必要な機能を使えないというのがデジタル・ディバイドの原因だったのだと思います。そういう状況の中で文字を読むということに関して、拡大縮小が直感的に可能になったのがiPod touch (iPhone) の出現である、そこまで行って初めて「視聴覚弱者」などに対する大きな味方になってくれる存在となったのです。

 さらには、様々な理由で運動機能が大きく疎外されて、自由に字を書くことや話すことができなくなった人々がデジタル機器のおかげで健常者に負けない文章表現ができたり、合成音声として「話し」たりすることができるのも、ホーキング博士や先日なくなられた多田富雄さんの例を引くまでもなく可能になったのもデジタル機器の進化のおかげです。

 同様に、どんな人でも年を取って老眼になったり、運動能力が低下してきたり、あるいは若くてもとんでもない田舎に住んでいたとしても、インターネットを使うことで、様々な情報に簡単にアクセスできるだけではなく、大きな労力や負担なしに買い物や販売などができるようになってきていることを考えてみれば、いわゆる「弱者」と言われる人々こそが大きな恩恵を受けるのがデジタル機器やデジタル環境だということです。

 そういう意味で、年をとってもあるいは逆に年をとればとるほどデジタル機器や環境に積極的にアプローチすべきだと、私は考えております。身体の衰えを補ってくれるのが、そういう機器だということが実際に自分が年をとってきて実感を伴ってわかるようになってきました。

 というわけで、このような状況で政府がやるべきことはデジタル・ディバイドで「被害者側」となると想定されているような方々が、スイッチ一つでテレビなどと同じような感覚で利用できるデジタル機器や環境の開発や提供なのだと思います。

 今なら1-2万円くらいでiPadと同じくらいの機能と、もっと使いやすいユーザーインターフェースを持った機器の開発は可能だと思います。政治家というものは、そうして開発したに日本発のデジタル機器を日本中のそして世界中の全家庭に無料配布するくらいの展望を持ってもいいのではないか、と思う今日この頃なのです。
by stochinai | 2010-05-13 22:02 | コンピューター・ネット | Comments(0)

日の暮の背中淋しき紅葉哉            小林一茶


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