5号館を出て

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平成の教科書墨塗り事件

 10日付の朝日新聞朝刊「声:若い世代」という欄に。高校生の投書「知識を広げる教科書作りを」があります。その中に、ちょっと衝撃的な一文がありました。

 「中学3年の時、教科書の遺伝のページに、斜線を引くようにと指示されたことがある。私には興味があるテーマだったが、新しい教育課程が実施されたので、勉強する対象から外れたためだった。とても納得できないことだった。」

 そりゃあ納得できないだろうと思います。

 だいたい勉強をしている過程で「これは学んではいけません」とか「それ以上学んではいけません」という状況に出会うことがいかに理不尽であるか、主体的に勉強をしたことがある人ならばすぐにわかることです。そこから先は「未知」であるところまで到達することが勉強の終着点であり、そこまで行けたときには限りない満足感が得られるものです。

 そして、そこよりも先は研究と呼ばれる領域であることを認識することが、科学への導入でもあるのです。このままでは、科学をめざす子どもも出てこなくなるでしょう。

 特に、今の子ども達は「生活科」や「総合的学習」などで教科の枠を越えた発展的学習のおもしろさを知っているのです。

 おもしろくてどんどん調べていったら、行き止まりがあって「ここから先に行ってはいけません」と書いてあったら、とたんにやる気が失せること請け合いです。さらに、悪いことに、そういう禁止を設定した先生や文科省、ひいては社会に対して猛烈な不信感を持つと思います。

 まったく教育的ではないことばかりを繰り返していると思います。

 あちこちで指摘されているように、未来に希望を持てない子ども達が勉強から逃げているだけではなく、意欲のある子ども達ですら学ぶ楽しさを奪われた「勉強」を拒否しているのかもしれないと思わされる投書でした。
Commented by kiyoaki.nemoto at 2005-04-10 18:13
その高校生は不幸でしたね。
教師の側は、恐らく、「ここは試験に出さないよ」的なニュアンスで言えば良かったのでしょう。でも、多感な学生には、ショックであったろうことが容易に想像できます。
私も中3の数学の教科書に開平法が載っていたので自学自習できましたが、先生からの説明はありませんでした。
勿論、学習の対象外だ等とも言われませんでしたが、自己満足の邪魔をされなかっただけでもマシだったのかも知れません。
Commented by stochinai at 2005-04-11 16:04
 確かに先生は子ども達の負担を軽くしてやろうという好意で線を引かせたのだと思うのですが、やっぱりそれって子どもをバカにしてると思います。だいたい学校ではテストに出ること以外は教えないって、いつからそんなにゆとりのないことになったんでしょう。私たちは、いわゆる詰め込み世代(詰め込まれ世代)と言われるんですが、教室での先生の無駄話はかなり多かったように記憶しています。そういう意味では、すごくゆとりありました。
 ゆとり教育って「ゆとり取り教育」だったのかもしれませんね。
by stochinai | 2005-04-10 14:21 | 教育 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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