5号館を出て

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新しい生物学辞典

 ネットや電子辞書の時代になって、紙に印刷された分厚い辞典というものの存在が日に日に薄れてきていると思われる今日この頃ですが、本日、久々に本格的な紙の辞典が届きました。
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 東京化学同人創業50周年記念出版の「生物学辞典」です。

 現在、発売記念特価で販売されています。
2010年12月10日刊行
A5判特上製箱入 1634ページ

生物学辞典

発売記念特価 10,290円(税込)
本体9,800円(特価期限 2011年4月末まで)
2011年5月以降、定価12,600円(税込)
 なぜか私は昨年、完成を目前にしたところで滑り込み執筆者としていくつかの項目をかくことになり、今回もありがたいことに執筆者割引で、発売記念特価よりも安く手に入れることができましたので、ラボの学生用にもう一冊購入させていただきました。

 動物学会などでも特別価格による販売が行われているようなので、書店に走る前にあちこちに問い合わせてみると良いかもしれません。

 生物学辞典と言えば、岩波のものと決まっていた時代が50年くらい続いていたのですが、岩波の生物学辞典は1996年に第4版が出て以来、改訂版が出ておりません。
新しい生物学辞典_c0025115_2016238.jpg
 書店に並んでいるのをパッと見ると、岩波の第5版が出たのかと思われる人も多いのではないかと思われるくらい、見た目の雰囲気もよく似ています。

 岩波の第4版はCD-ROMが出ており、学生がレポートを書く時などに、大変に重宝していたという話を聞いていましたが、今や無料のウェブ情報でレポートを書いてしまう学生が多くなっておりますので、生物科学科の所属と言えども、岩波の生物学辞典を持っていない学生がいるのではないかと思います。

 とは言え、やはり日本における生物学の基準知識となるような「辞典」は必要ですので、岩波の第5版が出ることを待ち望む声が多かったことは事実です。そこへ、ダークホースのように東京化学同人から「生物学辞典」が出たのは、ある意味ちょっと意外ではありますが、日本の生物学界としては大歓迎です。

 この辞典の編者のトップに、亡くなった石川統先生の名前がありますが、この本は2005年に石川先生が亡くなられるずっと前の2001年から計画が始まったと序文に書かれているのを読んで、改めて辞典を作るということのたいへんさを思い知らされた気分です。

 私は最後の最後にほんのわずかばかりの貢献をさせていただいただけですが、その前に10年間にわたる編者・執筆者の方々の血のにじむような努力があったことをかみしめております。

 ただ、できるならばこれだけの大きなデータベースですので、もちろん適正な価格を設定した上で、やはりCD-ROMやウェブ・アクセスできるような仕組みを提供していただけると、使い勝手が格段に上がるということを出版社に申し上げておきます。

 辞典というものは、使われて初めて意味が出てくるものですから、よろしくご検討ください。
Commented by ぢゅにあ at 2010-12-14 00:10 x
私も一瞬、岩波かと思ってしまいました。
インターネットにあふれるジャンク情報に辟易しはじめ、今では紙の辞典に回帰しつつあります。辞典を開くとついついあれもこれも眺めてしまうので調べものの効率としては何とも言えませんが、それも紙の辞典の醍醐味だと思ってます。
Commented by stochinai at 2010-12-14 12:46
紙の書籍は、船やJRでの旅のように「贅沢品・嗜好品」という時代がきつつあるのを感じます。
by stochinai | 2010-12-13 20:35 | 生物学 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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