5号館を出て

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一日も早い電力販売の自由化を

 我々はお金を払って電気を買っています。買うからにはより良いものをより安く買いたいのが消費者の心理というものですが、なぜか電気は選んで買うことができません。灯油やガソリンも電気と似たエネルギーですが、こちらはより良いものをより安く買うという消費行動を行使することができます。なぜ電気だけが選択して買えないのでしょうか。

 従来は北海道ならば北海道電力、関東ならば東京電力というように、地域ごとの電力会社だけが電気を売る(供給する)ことが許されていましたが、10年くらい前からはこうした旧来の電力会社以外にも特定規模電気事業者や他の地域の電力会社から電気を買っても良いというように法律が変わっているはずなのですが、我が家に北電以外の業者が電気を買いませんかという勧誘に来た気配はありません。

 ここにはおもしろいことが書いてあります。
【Q5】一般家庭でも電気の購入先を選べるのですか?

【A5】まだ、自由化の対象にはなっていないので、現在は電気の購入先を選べません。一般家庭を含む50kW未満の低圧、電灯需要家については、平成19年4月より全面自由化に向けた検討が開始される予定です。
 この件については、どうなっているのでしょうか。なんと、東京電力のホームページに衝撃的なことが書いてありました。
第四次電気事業制度改革(2008年)

小売部門の自由化範囲の拡大については、自由化範囲の拡大は家庭部門のお客さまにメリットをもたらさない可能性があるため、自由化範囲を拡大せず、まずは既自由化範囲において競争環境整備に資する制度改革を実施すべきとされました。
小売自由化範囲の拡大については、5年後(2013年)を目途に再検討することとなりました。また、競争環境整備については、託送料金制度などの改革が実施されました。
 「家庭部門のお客さまにメリットをもたらさない可能性があるため」改革が見送られたらしいのです。2013年を目途に再検討だそうです。うがって考えると、東京電力のような旧体制の電力会社が圧力をかけて計画をつぶしたのではないかと勘ぐりたくなる経過です。

 それでいて、東京電力は抱え込んだ膨大な顧客の迷惑を顧みずに「計画停電」をやろうというのですから、売り手としては無責任もはななだしいのではないでしょうか。(暴論を承知で書いています。)明日はやらないようですが、明後日からはまた「計画」されています。
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 私が毎日大学へ通う道に手作りのお餅やさんがあります。そこでは朝6時半からお餅の販売を始めるのですが、だいたい9時か10時頃に売り切れてしまうので、売り切れ次第閉店になってしまいます。もちろん、売り始める前から「売り切れ次第、閉店します」と言っているので、10時半にお餅を買いにきたお客さんも閉まっている店の前で怒るなどということはありません。

 しかし、今回の東京電力の「計画停電」は東京電力の責任で電気を作る量が減ってしまったことによる販売量の削減が原因で起こったことです。そういう意味では、販売量を確保できなかったことに対して責任を取るべきは東京電力であり、顧客の皆さんではないはずです。であるにもかかわらず、停電による被害はお客さんだけが受けるのはなんとも理不尽と言わざるを得ません。
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 こんな迷惑をかけておきながら、どうやら電気代は普通に徴収しようとしているとも聞きます。東京電力の都合で停電を繰り返すのであれば、販売するものの品質が保証できないということですから、料金を払えなどと言える筋合いではないというのが普通の商売というものではないでしょうか。

 そもそも、停電を「計画」するという発想自体が上から目線すぎると思います。お客様に迷惑をおかけする停電をさせていただく時には、「計画停電」などという言葉を使わず、せいぜい「予告停電」と呼んだ上で、停電を繰り返している間は料金を徴収しないくらいの低姿勢で臨んだほうが良いのではないかと思います。

 いかがでしょうか。
Commented by DFAT at 2011-03-29 23:15 x
もっと驚くことが起こっています。地震により今月分の検針が出来なかったので、とりあえず先月分と同額の料金を引き落とすと東電から一方的な通知がなされています。今月の電気料金の徴収で生じる過不足分を今後どのように調整するかについても一切説明されていません。被災地ではないのに検針が出来なかったのは東電側の責任です。計画停電で先月よりも電気使用料は減っていると思われるのに....使ってない電気料金を一言のお詫びも無く徴収するような会社ですから、原発事故の責任は徹底的に取らせるべきだと思います。天下りした元高級官僚も大勢いるし、政治家も手懐けてあるし、どうせ政府(税金)が助けてくれると東電幹部はたかをくくっていると思います。一般市民には、「気に入らないなら電気止めるよ! 電気止まったら困るっしょ」くらいの余裕を今月の電気料金の徴収からも感じます。とほほ。
Commented by stochinai at 2011-03-30 14:42
 ここまで東京電力に好き勝手をさせているということは、政府も完全に同罪と言えますね。
Commented by そうはいっても at 2011-03-30 14:46 x
自由化すると、大口電力消費者=企業への優遇がさらに強まる可能性が高いですよ。コストのかかるところへは電気がこなくなりますし。
Commented by stochinai at 2011-03-30 15:33
 それでもなお、私は消費者の「選ぶ自由」も尊重すべきだと考えます。今回のような事故の後だと、「うちは原発やりません」と言う会社の電気が多少高くても売れるように思えるのですが、甘いですか?
Commented by 現実主義者 at 2011-03-30 20:20 x
複数の電力会社が自由競争する状況下だと事態はよくなっていたでしょうか。A社、B社、C社が存在するとしてA社の供給能力が壊滅的な打撃を受けた場合、A社の顧客の状況はどうなるでしょうか。おそらくB社、C社は余剰の電力をA社の顧客に廻すかもしれませんが、需要をまかないきれるものではないでしょう。あるいはB社、C社は電気代をあげて経済的に余裕のない人が泣きを見ることになるでしょうか。
自由競争は技術革新を促し、無駄を廃してシステムを効率化する反面、余剰な供給力を削ぐため脆弱性をもたらします。電力や水道など社会の基盤をなす事業は、長期的な視野にたったインフラ整備、災害時でも安定供給できるよう一定の余剰供給能力の保持が必要なため自由競争には向かないと思います。数年前カリフォルニアでおこった大規模停電が証明してるのではないでしょうか。今回の東電の対応を擁護するつもりは全くありませんが、電力供給が自由化される状況下であれば事態が今よりよかったとはとても思えません。
Commented by 現実主義者 at 2011-03-30 20:22 x
ここ数年、私達は自由化という魔法のことばに踊らされすぎてきたように思います。その向こう側には必ずしもバラ色の世界があるわけではないことを十分学べたはずなのですが。
Commented by stochinai at 2011-03-30 21:02
 確かにおっしゃることも良くわかります。自由化しさえすればすべてが解決するとはいかないでしょうが、今の政府が国有化して効率的な電気事業を行う力があるとも思えません(もちろん自民党が政権でも同じでしょう)。完全なる「自由化」はさておき、とりあえずは電力も小規模な地域発電に分割していくのが良いのではないかと考え始めています。
Commented by 通りすがり at 2011-04-02 04:51 x
自由化をしても、最終的に配電系に供給出来る能力があるのは現状では配電系を持つ事業者です。PPSは、顧客の消費発電量に見合う(一定の範囲内の誤差を許容された)同時同量相当の電力を系統に流しているだけです。
全く今回の事態解決に役に立たないばかりか、系統電力の安定供給とは関係がありません。
むしろ、当面の課題解決はIPPの積極的な立地を推進する方がより現実的ではないでしょうか。
Commented by stochinai at 2011-04-02 09:48
 技術的なことはおっしゃるとおりだと思いますが、ともかく東京電力の「独裁」をなんとかしようということで「自由化」を言ってみました。

 自然エネルギーの開発もさることながら、ともかく小さな電力会社あるいは発電組織をたくさん作るということが、未来へ向けたエネルギー対策として進めるべきことだと思います。
 コメント、ありがとうございました。
by stochinai | 2011-03-29 20:10 | つぶやき | Comments(9)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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