5号館を出て

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京都大学のファウナ・ヤポニカ

 かつて,というか今でもかなりそうだと思うのですが,生物学と美術は切っても切り離せないところがあると思っています。写真技術が発達してきたので,学術的には手描きによるスケッチは教育的な現場を除くとほとんど使われなくなっていると思いますが,生物学(博物学)と芸術(美術)が蜜月状態にあった頃に描かれた生物の精密画は今見ても,生物学的記録としての意義も十分高く,さらに芸術作品として心を打つものでもあります。

 間違いなくそうしたものの代表のひとつとして1800年代に出版された,シーボルトの「ファウナ・ヤポニカ FAUNA JAPONICA (日本動物誌)」があります。
シーボルト編『FAUNA JAPONICA』(日本動物誌)について

 シーボルトは、日本で収集したたくさんの標本を本国オランダへ送り、1830年に帰国するとライデン市の国立自然史博物館館長テミンクと館員シュレーゲル、 デ・ハーンの協力を得て、1833年から1850年にかけて美しい図版を豊富に配した『FAUNA JAPONICA』(日本動物誌)全五巻を刊行しました。
 その内容は、甲殻類篇(1833~1850)、哺乳動物篇(1842~1844)、鳥類篇(1844~1850)、は虫類篇(1842~1844)、魚類篇(1842~1850)と分かれており、 約820種の動物を4000点を超える図版を添えて紹介しています。シーボルトは、このほかにも棘皮動物篇の図版を準備していたようですし、たくさんの貝類も収集していましたが、 動物誌棘皮動物篇、貝類篇が刊行に至らず未完におわっているのは大変残念です。
 図版の印刷は、単色の石版刷りに1枚1枚手彩色を施した美しいもので、特に第四巻の魚類篇の図版の多くは長崎の絵師川原慶賀の絵が原画として使われ、ムツゴロウやエツなど有明海の珍しい魚も収録されています。
 出版当時は分冊形式で刊行され、各編分冊が同時進行でバラバラに刊行されているため、今では全巻を収集し製本保存されているのは世界でもきわめて希少な存在になっています。 当館所蔵本では、哺乳動物篇と鳥類篇が合冊製本されていますので、外観は全四冊の豪華な革装丁本になっています。
 というわけで機会があれば,いつでも見たいと思っていたこの本が,京都大学の図書館によってデジタル公開されていることを知りました。
京都大学のファウナ・ヤポニカ_c0025115_1992473.jpg
 日本語コードがEUC-JPなので文字化けしていたら,トランスレーションを変えてみてください。

 見ているとあきません。カンパチです。
 タチウオです。
 サカナの絵もも美しいですが,なんといってもトリがきれいです。小樽にもいるアオバトです。
 絶滅したトキです。
 このトキの図は,Wikipediaでも公開されていたのですが,その解像度があまりにも違いすぎることに驚かれるかもしれません。上が京大図書館のもの,下がWikipedeiaのものです。
京都大学のファウナ・ヤポニカ_c0025115_1962457.jpg
 こちらにはもっとひどい状態のものが公開されています。
 それでもないよりはましだったのですが,これほどの細精状態で公開してくれた京大図書館に感謝したいと思います。

 なお,京大図書館では「フローラ・ヤポニカ (日本植物誌)」も公開されています。
by stochinai | 2011-08-30 19:37 | 生物学 | Comments(0)

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