5号館を出て

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ビットコインで学ぶ貨幣経済と著作権管理

 デジタル情報の優れたところは、情報の劣化なしにいくらでも複製ができることだと、よく言われます。そのために、デジタルに記録された音楽、映画や文学などは著作権の管理が難しいためにいくらでも違法に複製されるという欠点があるとされてきました。音楽、映画や文学作品が劣化なしに誰でも簡単に何回でも複製できるとなれば、確かにそれらを売買することによってなりたつ著作権業界は存立は難しいのかもしれません。

 一方、最近大騒ぎになっているビットコインというものは、デジタル情報で管理されている「仮想通貨」だということです。たとえ仮想とは言え通貨がデジタルに存在しうるということはどういうことなのか、私には最初にわかには理解できませんでした。
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 しかし、ここ数日世間を騒がしているビットコイン騒動を見て、いくつかの解説記事を読んでいるうちに、デジタル情報で通貨が管理できるのだということがなんとなく理解できてくると、これは革命的な時代になってきたということも感じるようになりました。

 ビットコインの存在は貨幣がデジタル情報化できているということを意味します。貨幣というものは唯一無二のものですから、もちろんコピーなどができてはならない存在です。各国の中央銀行などが発行している紙幣も簡単には偽造できないように作ってありますが、それでも偽造紙幣が出現しているということはまだ貨幣としては完璧ではないということだと思います。偽造を防ぐためには貨幣自体を偽造できない「金」などにしてしまえばいいのですが、地球上に存在する金の総量自体が有限であるため、世界経済を維持することができるほどの金貨を発行することができないために仕方なく「仮想通貨」としての、紙幣などが発行されているのが現実だと思います。

 一方、複製しやすいはずのデジタル情報で作られているビットコインなどの仮想貨幣は適切にプログラミングされている限り、発行総量も規定できますし、決してコピーされることもありませんので、印刷というアナログな方式で作られている紙幣などよりはるかに貨幣としての安定性が保証されることが可能らしいと思えてきました。その証拠に、今回の混乱はビットコインが勝手に複製されたという事件ではなく、ビットコインが「盗まれた」という事件のようです。つまり、ビットコインは唯一無二の存在だからこそ、盗まれることはあるけれども消え去ることはないという、貨幣としての条件を備えた存在であることを証明したのではないかと感じています。

 ただ、問題はビットコインはその所有者に関しての匿名性が保証がされている存在らしく(我々が毎日使っているお金も、所有権に関してもある時点で実際にそれを持っている人のものであって、もし落としてしまったとしたら拾った人が自由に使えることも保証されてしまいます)、盗まれた場合にも誰のビットコインが誰の手に渡ったという情報は管理されていないようで、この特徴は今回のような窃盗事件の場合には犯人追求がしにくいという欠点になっているように感じました。しかし、それはある意味で使いやすい貨幣というものの宿命なのだとも思います。

 大事なポイントは、このようにデジタル情報で貨幣の価値というようなものまで管理できるアルゴリズムがあるのだとすると、最初に出てきた音楽や映画、文学などの販売に関する著作権管理はデジタルの世界ではすでに完成しているということです。

 そういえば、デジタルテレビの普及とともに録画の問題が議論され、最初の頃はコピーワンスとか言って、デジタル放送プログラムは録画はできるもののそれはコピーして複製することはできませんでしたが、最近はムーブと言って最初の録画を消去すると別の媒体にコピーすることができるというシステムもできています。録画を貨幣の使用と置き換えてみると、たとえ1回でも2倍に増えるコピーができることは許されず、だからといって移動できなければお金として使えないので、いくらでも自由に移動できることが保証されていなければなりません。今のムーブでは、元のプロゴラムを消去することによって、何度でもコピーできるシステムがあるのかもしれませんが、これはまさにビットコインのアルゴリズムと同じなのではないでしょうか。ビットコインでは媒体の種類を問わずいつでもどこでも何度でも自由に移動できるかれども、決して複製されることはないようになっているため、通貨として使えているのだと思います。逆に盗まれるということは所有者の意思に反して、ムーブが実行されてしまい、ビットコインがなくなったことは確認できるものの、移動した先はわからないということなのでしょう。

 これは、システムとしてはある意味、素晴らしいものだと思います。まだまだセキュリティを上げなければ怖くて使えないという気もしますが、通貨としての最低の基準はプログラム上(インターネット上)ですでに達成されているということを意味しているようにも思えました。

 複製して収拾がつかなくなるということでなく、唯一無二の財産を移動する泥棒が出たということは貨幣の完成を意味しているような気もします。

 不幸な事件だったかもしれませんが、あと数歩で貨幣はすべてデジタルになるという時代がくることを予感させられた、というのが実感でした。

 この記事が、今回の事件でもっとも私に情報を与えてくれました。深く感謝します。

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by stochinai | 2014-03-01 21:26 | コンピューター・ネット | Comments(0)

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