5号館を出て

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北海道大学教員有志からの安全保障関連法案反対声明

 いちおう議会制民主主義体制をとっている日本ですから、たとえ国会で与党が安定多数をとっているからといっても、歴代自民党政権も違憲と言い続けてきたし、日本国憲法を読んだことがあるならば、たとえ高校生でも憲法違反だと簡単に判断できるような法律がこれほど簡単に衆議院を通過し参議院に送られるとは思ってはおりませんでした。

 こちらが日本国憲法第9条です。
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第二項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」を放棄し、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と明記しているのが、日本のあらゆる法律に優先する憲法に書いてありますので、今回提出されたいわゆる「安全保障関連法案」という、外国との交戦を認める法律は明らかに憲法違反であり、国会で憲法違反のいわゆる「違憲立法」が禁じられている以上、そんな法律が通るはずはないと思っていたところがあります。

 ところが、国会の内閣法制局を支配下におき、国会議員の多数派を握っていると、その不可能なはずの違憲立法があれよあれよという間に可能になってしまうというマジックが目の前で繰り広げられにいたり、日本の法制度の欠陥も見えてきたと思います。

 つまり、このままだと違憲立法が成立してしまうということになります。もちろん、最高裁判所の違憲立法審査権がありますので、最後はそれに期待していますが、この「伝家の宝刀」は違憲立法によるなんらかのアクションが実施された後でなければ抜けないというものらしいのです。

 そうなると最悪の場合には自衛隊が実際に交戦を開始してから最高裁が動き出すという間抜けな事態になる可能性もあり、場合によっては自衛隊員の犠牲も想定しなければなりません。もちろん、「交戦国」から日本ならびに日本人に対するテロだけではく正面戦の危険さえ限りなく大きくなります。

 という状況のもとでは、平和を愛し憲法を守る国民としては、国会の動きを手をこまねいて座視しているわけにはいきません。

 特に、学問の府にいる我々としては、明らかに憲法学という学問を無視した違法行為が国政の名のものと行われることを監視し、押しとどめる義務があるだろうと思います。

 というわけで、全国の動きに多少遅れをとってはしまいましたが、北海道大学でも教員有志が声明を出すことになりました。


安全保障関連法案に反対する北海道大学教員有志の声明

安全保障関連法案の廃案を求めます

 北海道大学で研究と教育に従事する私たちは、安全保障関連法案の廃案を求めます。

 集団的自衛権の行使容認は、明らかな憲法違反です。安倍内閣が、憲法学をはじめとする数々の学問的蓄積を無視し、また、人類の歴史的な成果である民主主義と立憲主義を軽んじていることに、私たちは深刻な懸念を抱いています。
 この法案は、日本が他国の戦争に参加できるようにするためのものであり、日本の若い世代の命を危険にさらすものです。同時に、米国等が「敵」とみなした国の無辜の人びとの命をも脅かす可能性をはらむものです。無数の住民を殺害したイラク戦争は、「大量破壊兵器の存在」を口実に、米国が一方的に仕掛けた不当な戦争でした。しかし、日本政府はこの戦争の不当性をいまだ公式に認めていません。この法案が成立すると、これまで米国に追従してきた日本は、米国主導の不当な戦争に本格的に参戦する恐れがあります。私たちはそれを認めるわけにはいきません。
 この法案は、武力で平和が達成できるとの前提に立っています。対立する相手を「敵」と決めつけ、武器を構えると、相手はさらに強力な武器を構えるでしょう。20世紀の二つの世界大戦と冷戦期の軍拡競争はそのように起こりました。それがどれほどの惨禍を巻き起こしたのかは歴史をひもとけば明らかです。
 本当の平和は対話によってこそ生まれると私たちは考えます。そこで必要になるのが知性です。歴史を知り、相手の立場を知り、自己批判をいとわず、しかし言うべきことは言い、時間をかけて共存できる関係を築くこと。軍事力の増強ではなく、「対話の場」の構築に資源を注ぎ込むべきです。いまこそ「軍事による安全保障」から「対話による安全保障」への転換が求められています。

 大学は知性を磨き、高める場です。知性を敵視した戦前戦中の日本政府は、軍機保護法、治安維持法などにより、知識人・大学人の言論の自由を弾圧し、私たちの先達が不当に逮捕・監禁されました。その中に北海道大学の宮澤弘幸(工学部生)、ハロルドとポーリン・レーン夫妻(英語講師)がいたことを、私たちは痛みをもって思い起こします。
 今日の安倍政権も知性を恐れ、抑圧する道を歩み始めています。まず特定秘密保護法を強引に成立させて、市民が知る権利を制約しました。国立大学に国旗掲揚・国歌斉唱を求めるばかりか、文系(人文社会科学系)学部の廃止や見直しを求める通知まで出しました。そうした流れのなかで安保法案が出てきました。
 私たちは愚かな歴史を繰り返さないために、安保法案に反対します。そして、隣人たちと平和な関係を築き、未来世代に希望ある社会を手渡すために、戦争を止める知性を、平和をつくる知性を求めつづけます。

2015年8月

呼びかけ人:
姉崎洋一(教育学研究院・高等継続教育学)
石岡丈昇(教育学研究院・社会学)
小田博志(文学研究科・文化人類学)
柿澤宏昭(農学研究院・森林政策学)
加藤博文(アイヌ・先住民研究センター・考古学)
北村嘉恵(教育学研究院・教育史)
蔵田伸雄(文学研究科・倫理学)
笹岡正俊(文学研究科・環境社会学)
敷田麻実(観光学高等研究センター・観光学)
辻智子(教育学研究院・社会教育学)
戸田聡(文学研究科・西洋古典文献学)
栃内新(北方生物圏フィールド科学センター・生物科学)
中村太士(農学研究院・生態系管理学)
西部忠(経済学研究科・経済学)
波多野隆介(農学研究院・農芸化学)
東山寛(農学研究院・農業経済学)
三上直之(高等教育推進機構・社会学)
宮内泰介(文学研究科・社会学)
宮崎隆志(教育学研究院・社会教育学)
山崎幹根(法学研究科・地方自治論)

 本日から賛同者を募っておりますが、すでに呼びかけ人を含め100名を突破しました。

 今回は賛同者として、北海道大学での教育・研究に携わっているあるいは過去に携ったことのある方という限定がありますので、どなたにも賛同の署名をしていただけないのが申し訳ないのですが、もしもお近くにあるいはお知り合いに賛同の署名をしていただける方がいらっしゃいましたら、この活動をご紹介願えると幸いです。

 今回の違憲法案に対して、若い方々さらには高校生の皆さんもデモに出られるという今までの政治には見られなかった動きも出てきています。そうした方々はもしも日本が「戦争のできる普通の国」になったら自分たちあるいは自分たちの友人・パートナーが戦場に送られるという危機感が強いのかもしれません。

 戦後70年間、若者を戦場に送り出してこなかった日本の世界に誇るべき伝統をここで絶やしてはならないと思います。

 この美しいキャンパスから、学生を戦場に送り出した歴史を繰り返したくはありません。(写真は、安保関連法案に反対する北大教員有志のFacebookpageからお借りしました。)

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by STOCHINAI | 2015-08-03 20:00 | 大学・高等教育 | Comments(0)

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