5号館を出て

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痛めつけられる若手研究者・大学生

 今日は朝が来ない感じで始まり、暗い一日のまま夜になりました。

 空はどんよりとしていたのですが、地面には薄っすらと雪が積もっていました。

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 この後もみぞれ混じりの雪が降り続いたのですが、夜までには解けてしまいました。しかし、夜になって気温が下がってからまた雪が降り、今はまたこの写真とほぼおなじ風景に戻っています。そして、気温はマイナスになってきました。明日は更に気温が下がり、一日中マイナスになる予定で、今年初の「真冬日」になるようです。

 おまけに朝から東北で大きな地震があり、久々に津波も発生したとのことでテレビはおおはしゃぎでした。幸い、地震や津波による被害は最小限にとどまっているようで、さすがに地震大国は地震に強くなりつつあるとは思いましたが、地震や津波の度に原発の心配をし続けなければいけない状況というのはこの国のエネルギー政策としては明らかに間違っているということは子供でも感じていることではないでしょうか。

 さて、地震のことしか伝えてくれないテレビを見ずに新聞に目をやると、一面トップにとんでもない記事が載っています。

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 私のように大学にいたものにとっては当たり前の情報が大ニュースになっていることには驚きましたが、いつ会社がつぶれて職を失うかもしれない多くの会社員のことを考えると国立大学の教員だって当たり前だと言われることを恐れてあまり声を大にしては主張できない当人たちのためにはこういう記事も大切なものだと思います。


 こうした傾向は04年度の国立大の法人化後に強まっている。主に教員給与にあてる国の運営費交付金が減り、特定の研究ごとに若手を雇う例が増えたためだ。長いログイン前の続き時間がかかる基礎研究への影響を懸念する声も出ている。
 こうした現状について、文科省は「人件費を抑えるため、身分が不安定な任期つき雇用を増やさざるを得ない国立大が増えている」とみる。

 と法人化を強行した文科省の他人事のようなコメントには呆れますが、文科省はなんとかしようという気はないようです。もともと国家公務員だった教員は任期付きということはほとんどなく100%が終身雇用として雇われていました。

 文科省によると40歳未満の若手教員は、データを取り始めた07年度には約1万8千人おり、うち「任期つき」は約6900人で39%だった。その後、任期つきの若手は増え続け、16年度は約1万7千人のうち約1万1千人で若手全体の63%を占めた。

 この記事だと39%から63%になったようにも読めますが、正しくは0%から63%になったと読むべきデータです。記事の最後の一文は、かなり恐ろしい結末が描かれています。

 任期つきの場合の待遇は大学によってさまざまだ。また、任期が切れた場合、実績がかわれて任期なしの職を得るケースもあるが、実際には少なく、任期つきの職場を転々としたり、一般企業に就職したりするケースもあるという。

 こんな状況でノーベル賞をもらうような研究をしろというのはとても無理な話です。

 大学教員予備軍でもある、若手研究者の置かれた状況も決して明るくはありません。昨日の大学ジャーナルONLINEの記事にもかなりひどいことが書かれていました。

 日本学術振興会の人材育成企画委員会は、若手研究者の自由な発想に基づく研究を推進させ、学術研究の人材育成を進めるための提言をまとめた。特別研究員事業の充実や海外派遣の充実、大学改革の支援、ワークライフバランスの課題解決を4つの柱に掲げ、日本学術振興会がこれを基に人材育成を支援すべきとしている。
 日本学術振興会によると、特別研究員事業では、博士課程後期在籍者に対し、1人当たりの研究奨励金を半額にしてでも採用数を2倍にし、より多くの者を支援するのも1つの方法だとした。

 給料を半額にして雇う人数を倍増させるって、あり得ない提案だと思います。

 しかも、さらに若い学生支援に関しても絶望的な記事が出てきました。参議院選挙の時には希望たっぷりというふうに宣伝していた給付型奨学金のことです。なんと「給付型奨学金 十分な財源確保のめど立たず」なのだそうです。

来年度予算案の編成では返済の必要がない「給付型奨学金」の創設が焦点の1つですが、政府内では、今のところ十分な財源を確保できるめどがたっておらず、財務省は政府・与党内での調整を急ぐことにしています。
「給付型奨学金」は返済の必要がない奨学金で、経済的な理由で大学などへの進学が難しい若者を支援しようと、政府・与党が創設に向けて給付額など、制度設計の検討を進めています。この中では月額3万円を軸に、給付する案などが検討されていて、財務省では、文部科学省の教育関連の事業などを縮小して財源を捻出しようと協議していますが難航しています。
一方で、大学生などの子どもを持つ世帯の所得税の負担を軽減する「特定扶養控除」を一部、縮小し、そこで生まれた増収分をいかすという案も政府・与党内で浮上しています。これは教育への支援は税の控除による負担の軽減より給付のほうが効果的という考えに基づくものですが、「特定扶養控除」の縮小には慎重な意見も多く、理解を得られるかが課題となっています。
このように来年度予算案の編成で焦点の1つとなる「給付型奨学金」をめぐっては今のところ十分な財源を確保できるめどがたっていないのが実態で、財務省は今後、政府・与党内での調整を急ぐことにしています。

 選挙の時には「やるやる」と言って票を集め、今になって「財源がない」はないでしょう。選挙の時からわかっていたことのはずです。

 とまあ、学生から若手研究者までいじめられ放題ですね。日本の若者はおとなしいから、いくらいじめても反抗しないと見ているのかもしれませんが、ヤクザ映画でもあるように、あまりにもひどいことを続けると我慢するにも限度があるということで大反乱が起こるかもしれないという想像力を政府の方々はお持ちじゃないのでしょうか。

 なめていると、とんでもないしっぺ返しを食らうことになります。

 まったく関係ないですが、最後はせっかく撮してあったので、今日の雪の動画です。











by STOCHINAI | 2016-11-22 22:14 | 大学・高等教育 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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