5号館を出て

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科学技術政策マニフェスト評価集

 NPO法人サイエンス・コミュニケーションが、今回の選挙で出されている各政党のマニフェストから科学技術政策を抽出、整理した表を作ってくれています。

 正直に言って、今回の選挙で(というよりは日本の政治で)教育や科学政策がほとんど全く論点になっていませんので、それをマニフェストから読み解くということにどれほどの意味があるのかという疑問はぬぐえませんが、せっかく比較しやすいように努力してくださった皆さんの行為は称賛されるべきものだと思います。

 評価集では、「重点分野・第三期科学技術基本計画に対する姿勢」「科学技術振興に対する施策」「若手研究者、女性研究者に関する政策」「奨学金」「理科教育」「大学政策」「知的財産」「その他注目すべき施策」という項目を立てて整理されています。

 マニフェストというのは、現政権の施策をどのように評価・批判するのか、それに対してどのような対案があるのか、ということが書かれていなければならないはずですが、自民党が現在行われている政策の説明資料をコピペしてマニフェストとしている以外は、どの政党も具体的な批判や検討を加えていないと言っても良いほど何も書かれておらず、まったく議論になっていないことがすぐわかります。

 これは、野党の勉強不足・科学政策に対する責任放棄と言っても良いと思います。

 この比較表を見る限りは、共産党を除く政党(公明、民主、社民)の科学技術政策は、現在自公政権下で行われているものを基本的に受け継ぐということにしか読めないわけで、投票に関してはまったくと言って良いほど参考にはならないことがわかります。

 さすがに共産党だけは、現場にいる科学者の支持者が多いせいか、研究者のおかれた立場、女性や若手研究者への気配り、研究の自由の保障、大学政策などについて情報が多く、それなりに現場から上がってきたと思われる議論がなされているとは思いました。しかし、一方の自民党がそれらについては全く触れておらず、完全なすれ違いに終わっています。

 やはり最大野党である民主党がきちんとした科学政策の対案を持っていない、というより民主党の科学政策が自民党と変わらないことが、この国の科学のおかれた最大の悲劇だと言えましょう。

 今回の選挙では科学政策は変わらない、ということが示されたのだと思います。

 日本では、昔から「教育や科学は票にならない」ということで、選挙の争点になった試しはなく、教育も科学政策も政権党の思うがままにもてあそばれてきた歴史があるように思います。その分、政治から独立して安定した政策が行われる可能性もあったのだと思いますが、結果的に見ると目も当てられないくらい気ままな改変が繰り返されているというのが現状だと思います。

 もちろんこのままで良いとはおもいませんが、とりあえずは絶望的な状況にあります。しいて対策を考えるとすると、これからは科学者や教育者がきちんとした政治活動をしていき、現場からの意見が国政に反映されるような状況を作っていかなければならないように感じています。

 とりあえずは、参議院全国区あたりで科学者の代表を国会に送り込むようなことから始めると良いのかもしれません。

 とりとめのない感想になってしまいました。
Commented by ヤマグ at 2005-09-08 18:27 x
面白いものを紹介いただきありがとうございます。

久々に笑えました。笑っていられない問題なのかもしれません。

それにしても、科学技術に関して、共産党以外の各党は情報ソースがないとしか思えません。これだったら、新聞読んで適当に書いといてというぐらいでしょう。しかも、科学技術政策なのに、科学技術を使った経済政策のようですよね。日本では何においても、経済が優先されるという話なのかもしれませんね。いつから、そうなったかは自分もわかりませんが、お金に結びつかないものは悪とする風潮のようで。

情報発信をしなかったという科学者の問題もありますが。これからは、そのための、CoSTEPですね。これを通して、報道も変わってくると良いのですが。
Commented by stochinai at 2005-09-08 19:43
 そうですね。各党に科学技術政策がまったくないということが明らかになっただけでもマニフェストの意義はあったと思いたいです。
 CoSTEPでは科学政策も扱わなくてはならないですね。幸い、北大には公共政策大学院というものもできたようですので、環境は整ってきたとも言えます。
 ヤマグさんにも、ご支援をたまわれればと思います。
Commented by blue at 2005-09-08 21:32 x
 確かに共産党以外は打算的な経済政策とも言えない皮相なプラグマティズムのようです。金にならなければ科学は要らないというスタンスが読める党もありますね。まっ、拝金主義が跋扈しているのでしょうね。ホリエモンを批判するかたも多いですが、日本全体がホリエモンでしょうか。昔、ソ連のロケット開発史を読みましたが、革命後のソビエト初期において共産主義と科学技術との理論闘争が読みごたえがありました。なぜ人類にとって科学を発展せねばならないか?ですが、科学の本質を議論するわけです。今の日本はすべてナンボノもんや?でしょうか。
Commented by stochinai at 2005-09-08 22:02
 郵政が民営化すれば今の日本のすべての問題が解決すると武部さんがおっしゃっていました。さすがに他の方は自民党員といえどもそこまで言う人はそんなにいません。でも、経済さえなんとかなればすべてが解決するというのは、自民・公明・民主の共同理解なのかもしれません。
 結果オーライが横行している国では、科学は育たなさそうです。
by stochinai | 2005-09-08 14:59 | 科学一般 | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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