5号館を出て

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生物多様性遺産図書館

 Facebookにも登録されていますが、Biodiversity Heritage Library という組織があります。あえて訳すと生物多様性遺産図書館とでもなるのでしょうか。生物多様性に関する古典的文献をデジタル化してオープンアクセスで世界に公開しようという運動をやっています。

 こちらがFacebookのカバー写真です。

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 生物学の研究は生物多様性の研究から始まったと言えると思います。生物多様性の研究というのは世界中にどんな生き物がいるのかということを記載して報告するということで、生物学の夜明けの時代から現在まで延々と「種の記載」を続けています。世界中にどのくらいの数の生物がいるのか定かではありませんが、現在までに種の記載が終わっている数百万種類の生物は地球上にいる生物のほんの一部であることだけは認識されています。

 生物種の記録は時として地味な研究ですが、初期の頃は珍奇な生物を世界中からかき集めて報告するという傾向が強かったのではないかと思います。ヨーロッパにはいないゾウやキリンやラクダなどを紹介して人々を驚かしたというのが、最初の頃の活動だったと思います。現在はそうした「すごい新種」の報告は珍しくなってきたので、地味な研究と思われがちですが、もともとは「山師」のような派手さを求めた研究者達をひきつけていたような気がします。

 それはさておき、このサイトで紹介される古典的動植物の絵画(もちろん芸術というよりは生物学の図版として描かれたものなのですが)がとてもいいので、時々見に行っています。

 もう一枚のカバー写真がこちらでした。

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 一昨日でしたか、もうひとつの私の好きなZoobornsというサイトからウォンバットの赤ちゃんがお母さんの袋から出てきたという記事を紹介しました。

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 ミナミケバナウォンバットという種らしいのですが、オーストラリアの有袋類です。オーストラリアの有袋類が次々と報告されたのは哺乳類動物学の黄金時代のひとつだったのではないかと思い、この動物についての古典的図版などを探してみようと思い、BHL(Biodiversity Heritage Library)を探してみました。

 こちらがBHLのホームページです。

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 ここからさらに flickr のページに飛ぶと大量の古典的図版画像にたどり着けます。

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 ここからウォンバットの図版を探し出しました。ここにあります。1863年発行のオーストラリアの哺乳類という本の中です。

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 有袋類が並んでいますが、最初の数枚がウォンバットです。2枚めの図がこちらです。

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 どうやら上の赤ちゃんのご先祖様のようですね。ミナミケバナウォンバット。


18. ON THE IDENTITY OF THE HAIRY-NOSED WOMBAT (PHASCOLOMYS LASIORHINUS, GOULD) WITH THE BKOAD-FRONTED WOMBAT (P. LATIFRONS, OWEN), WITH FURTHER OBSERVATIONS ON THE SEVERAL SPECIES OF THIS GENUS
By: Murie, James
Type: Article
In: Proceedings of the Zoological Society of London.
Volume: 1865
Date: 1865
Publication info: London :Academic Press, [etc.],1833-1965.

 その中に描かれた図もダウンロードできます。

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 現在、動物園でほそぼそと生きながらえているウォンバットも貴重ですが、それが最初に世界に紹介された論文に簡単にアクセスできるのですから、まったくいい時代になったものだと思います。

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 世界中の古典的論文はすべてこうしてデジタル化して無料公開するというのが正しい人類遺産の共有の仕方だと思います。

 本当に素晴らしい!








by STOCHINAI | 2017-10-31 22:29 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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