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ミステリークレイフィッシュは新種のザリガニである

 欧米ではMarbled crayfishと呼ばれ、日本ではミステリークレイフィッシュと呼ばれているメスしかいない単為発生のザリガニがいます。アメリカの南東部、フロリダに生息するヌマザリガニ(slough crayfish, Procambarus fallax)の単為生殖型ではないかという論文が出ていて、そうかなあというふうに思われていたのですが、これはそれとは異なる独立した新種であるという論文が出ました。

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 オープンアクセス論文ですので、どなたでもpdfをダウンロードして読むことができます。

 内容はストレートで、ミステリークレイフィッシュとProcambarus fallaxを比較して、別種であると結論しているものです。

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 上の図のAではメス(ミステリーはメスしかいない)の受精孔の形を比較しています。左からミステリー、fallaxそしてalleniという3種を比較しています。ミステリーとfallaxはよく似ていますが形は違います。さらにBでは甲羅の長さと一腹の卵の数を比べています。赤線で示したのがミステリーですが、fallaxとくらべて明らかに大きく、たくさんの卵を生みます。

 おもしろいことに、fallaxのオスとミステリー(全部メス)を交尾させることができるのですが、その結果生まれてきた子どものDNAを調べてみると全部がミステリーの遺伝子型を持っていました(下図C)。つまりfallaxの精子のDNAは子を作るときに使われていないということです。そしてさらにミトコンドリアの全DNAを比較してみても、fallaxとミステリーが系統樹の別の枝に分かれます(下図D)。

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 そして、分類学的に必要とされる細かい形態計測のデータを出して、やっぱり違うことを示して、最後にこれは新種として良いだろうと結論づけています。

 こちらがその新種の記載に使われたholotype標本の写真です。

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 そしてこの業界では写真よりも大切なスケッチです。

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 最後に遺伝子マーカーも載っているのが今風の記載論文ですね。

 私達も論文をいくつか書いているミステリークレイフィッシュですが、論文を書くたびに「種はまだはっきりしていない」と書くことになんとなくわだかまりがあったのですが、今回の論文を持って以降はとりあえず新種として学名をかけるのは喜ばしい限りです。

 この感覚って、業界以外の人にはなかなかわかってもらいにくいかもしれませんね。「なんだかんだいったって、ただのザリガニじゃねえか」というところでしょう。まあ、それはそのとおりなんですけどね(笑)。








by STOCHINAI | 2017-12-28 21:42 | 生物学 | Comments(0)

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