大本営発表くらい簡単にできる人材
そろそろ書かなければならないと思っておりましたら、フラスコさんが「大本営発表はあるか?」というエントリーをたてられました。これは、前のフラスコさんご自身のエントリー「余ったポスドクで大本営発表」の中で投げかけられた質問「記事では早稲田大学の話ですが、5号館のつぶやきで話題にされるCoSTEPも含まれるんじゃないでしょうか?」に、ご自分で書かれたコメントです。
最初のエントリーに対しては、CoSTEP関係者からのコメントもありますが、複数のCoSTEPウォッチャーから適切なトラックバックが返されたばかりではなく、大元のきっかけとなったエントリー「余剰博士の就職について」を書かれた永井俊哉さんからの反論「政府は科学ジャーナリストに金を出すべきか」も出てきて、なかなかおもしろい議論になっているのですが、黒影さんヤマグさんが素晴らしい議論を展開してくださいましたので、あえて私が意見を述べる必要も感じませんでした。しかし、いずれは何かを書かなければならない宿題感も持ち続けていたのです。
そこへフラスコさんから、総まとめのようにエントリーが書かれたので、ますます私の出る幕はないと思ったのですが、書こうと思ってキーボードを打ち始めましたので、このまま進めたいと思います。
とりあえずフラスコさんの結論を再掲させてもらいます。
私はここを足がかりに始めるのか良いかと思いましたが、まずは最後のコメントの中にある「予算がどのくらい」と言うことに関しては、情報があります。インタープリターやコミュニケーター、サイエンスライターの養成は平成17年度科学技術振興調整費のうち新興分野人材養成分野に含まれ、そこの平成17年度充当見込額は新規選定分15億円から出される予定になっておりましたが、10課題採択されました。医療やナノテクノロジー、コンピューターなどのように大きな研究経費が想定されない養成ユニットには、(確実なデータをもっているわけではありませんが、)それぞれ1億円を越えない額が配分されていると思います。
1億円というと個人で使うには大きな額ですが、何十人もの受講生を育てるということになると、とても無駄な公共事業を想像させる額ではありませんよね。それはさておき、私は他の方々からのコメントとはちょっと違う切り口で論じて見たいと思います。
さて、こうした「政府ひも付き」の予算で育てられた科学技術インタープリター、科学技術コミュニケーター、科学技術ジャーナリストの養成が成功した暁には優秀な科学技術を伝える人材が何十人か何百人か育つことが期待されます。
CoSTEPではすでに職業についておられる方もいらっしゃいますので、そういう方がもとの職場にもどってCoSTEPで身につけたテクノロジーを駆使して大本営発表を行ったら、それは永井俊哉さんが恐れるようなパワーを発揮する可能性はあるでしょう。逆にそそのくらいの力を持った人材が育たなかったとしたら、テクノロジーの伝達に失敗したことになります。
また逆に、受講を終えた方々がNPOや民間団体で同じく身につけたテクノロジーを駆使して、科学政策に対する批評や批判・パブリックコメントを出す側に回ったら、それまた「市民」にとって限りなく頼もしい科学技術メディエイターになってくれることでしょう。
CoSTEPを含め各大学の養成コースでは、思想教育は行っていないはずですし、大学院生以上のリテラシーを持っている大人に、大本営発表を強制する教育など考えただけで不可能だということはおわかりになると思います。
特にCoSTEPでは、養成する科学技術コミュニケーター・スキルの大きな柱に「双方向性」というものを掲げています。それは、一方向のみが強調された大本営発表とはまったく異なる新しいコミュニケーションの姿であり、たとえ国費のおかげでほぼ無料でそうしたスキルを身につけることができたとすると、その暁には日本という国に恩返しをしようという気持ちになったとしても、たまたま今の日本で国政を担当しているに過ぎない機関のために国民を犠牲にするような役割を担うようになるなどということは、どこをどう叩いても出てこない議論だと思います。
もちろん、CoSTEPで身につけたコミュニケーション技術を悪用して大本営発表を行う人間が未来永劫出てこないという保証などできませんが、それは政府が育てたとか私学で行ったとか独学で行ったとかいう問題とはまったく関係のない、個人的都合がかかわったまったく別の話になるのではないでしょうか。
同じ議論を政府がサポートする自然科学について行うと、我々がやっている研究はみんな国策科学ということになってしまいます。もちろん政府が国策として行いたい科学に大きな予算をつけることはあるでしょうが、それを否定するとなると国立大学や国立の研究所における研究をすべてやめなければならなくなりますが、永井さんもまさかそこまではおっしゃらないと思います。
だからたとえ政府がお金を出してコミュニケーター、インタープリター、ジャーナリストを育てたとしても、それは大本営発表要員を育てることには全然ならないのです。ご安心ください。今回の政府の出資は国民すべての利益に合致しますし、我々一同がその方向に向かって努力もしているところです。(書いていて、これが大本営発表だと言われる可能性を感じましたが、結果は10年後に判断されることを期待いたします。^^:)
長いわりには内容も薄くまとまりのないものになってしまいましたが、議論をまきおこしてくれたフラスコさんにお礼を述べて、ファイルを送信します。
Tracked from 永井俊哉ドットコム評論編 at 2005-12-02 04:08
最初のエントリーに対しては、CoSTEP関係者からのコメントもありますが、複数のCoSTEPウォッチャーから適切なトラックバックが返されたばかりではなく、大元のきっかけとなったエントリー「余剰博士の就職について」を書かれた永井俊哉さんからの反論「政府は科学ジャーナリストに金を出すべきか」も出てきて、なかなかおもしろい議論になっているのですが、黒影さんヤマグさんが素晴らしい議論を展開してくださいましたので、あえて私が意見を述べる必要も感じませんでした。しかし、いずれは何かを書かなければならない宿題感も持ち続けていたのです。
そこへフラスコさんから、総まとめのようにエントリーが書かれたので、ますます私の出る幕はないと思ったのですが、書こうと思ってキーボードを打ち始めましたので、このまま進めたいと思います。
とりあえずフラスコさんの結論を再掲させてもらいます。
・科学技術コミュニケーターを養成する大学院という試みは面白いと思う
(科学技術を「伝える」術が提供されることを期待する)
・受け皿がないことから余剰博士の就職先としての機能は期待できない
(だから、大本営発表する場所も与えられない可能性が高いのではないかと思う)
・ただし、大本営発表しないという可能性も払拭されていないので、科学技術コミュニケーターを養成する大学院は、まずその懸念から払拭してほしい
(これが最初の疑問の「反論は?」という部分)
・無駄な公共事業なのかどうかは、予算がどのぐらいつぎこまれているかによるので、コメント保留(予算額が発見できませんでした…)。
私はここを足がかりに始めるのか良いかと思いましたが、まずは最後のコメントの中にある「予算がどのくらい」と言うことに関しては、情報があります。インタープリターやコミュニケーター、サイエンスライターの養成は平成17年度科学技術振興調整費のうち新興分野人材養成分野に含まれ、そこの平成17年度充当見込額は新規選定分15億円から出される予定になっておりましたが、10課題採択されました。医療やナノテクノロジー、コンピューターなどのように大きな研究経費が想定されない養成ユニットには、(確実なデータをもっているわけではありませんが、)それぞれ1億円を越えない額が配分されていると思います。
1億円というと個人で使うには大きな額ですが、何十人もの受講生を育てるということになると、とても無駄な公共事業を想像させる額ではありませんよね。それはさておき、私は他の方々からのコメントとはちょっと違う切り口で論じて見たいと思います。
さて、こうした「政府ひも付き」の予算で育てられた科学技術インタープリター、科学技術コミュニケーター、科学技術ジャーナリストの養成が成功した暁には優秀な科学技術を伝える人材が何十人か何百人か育つことが期待されます。
CoSTEPではすでに職業についておられる方もいらっしゃいますので、そういう方がもとの職場にもどってCoSTEPで身につけたテクノロジーを駆使して大本営発表を行ったら、それは永井俊哉さんが恐れるようなパワーを発揮する可能性はあるでしょう。逆にそそのくらいの力を持った人材が育たなかったとしたら、テクノロジーの伝達に失敗したことになります。
また逆に、受講を終えた方々がNPOや民間団体で同じく身につけたテクノロジーを駆使して、科学政策に対する批評や批判・パブリックコメントを出す側に回ったら、それまた「市民」にとって限りなく頼もしい科学技術メディエイターになってくれることでしょう。
CoSTEPを含め各大学の養成コースでは、思想教育は行っていないはずですし、大学院生以上のリテラシーを持っている大人に、大本営発表を強制する教育など考えただけで不可能だということはおわかりになると思います。
特にCoSTEPでは、養成する科学技術コミュニケーター・スキルの大きな柱に「双方向性」というものを掲げています。それは、一方向のみが強調された大本営発表とはまったく異なる新しいコミュニケーションの姿であり、たとえ国費のおかげでほぼ無料でそうしたスキルを身につけることができたとすると、その暁には日本という国に恩返しをしようという気持ちになったとしても、たまたま今の日本で国政を担当しているに過ぎない機関のために国民を犠牲にするような役割を担うようになるなどということは、どこをどう叩いても出てこない議論だと思います。
もちろん、CoSTEPで身につけたコミュニケーション技術を悪用して大本営発表を行う人間が未来永劫出てこないという保証などできませんが、それは政府が育てたとか私学で行ったとか独学で行ったとかいう問題とはまったく関係のない、個人的都合がかかわったまったく別の話になるのではないでしょうか。
同じ議論を政府がサポートする自然科学について行うと、我々がやっている研究はみんな国策科学ということになってしまいます。もちろん政府が国策として行いたい科学に大きな予算をつけることはあるでしょうが、それを否定するとなると国立大学や国立の研究所における研究をすべてやめなければならなくなりますが、永井さんもまさかそこまではおっしゃらないと思います。
だからたとえ政府がお金を出してコミュニケーター、インタープリター、ジャーナリストを育てたとしても、それは大本営発表要員を育てることには全然ならないのです。ご安心ください。今回の政府の出資は国民すべての利益に合致しますし、我々一同がその方向に向かって努力もしているところです。(書いていて、これが大本営発表だと言われる可能性を感じましたが、結果は10年後に判断されることを期待いたします。^^:)
長いわりには内容も薄くまとまりのないものになってしまいましたが、議論をまきおこしてくれたフラスコさんにお礼を述べて、ファイルを送信します。
もし政府がお金を出せば、皆政府よりになる、というのであれば、大学卒業者(とくに国立大学卒業者)はすべからく大本営側ということになりますよね。でも、現実の社会を見ればそうじゃないわけです。
研究費というのは政府がらもらうわけですが、だからと言って政府が内容をすべてコントロールしているわけではないですし、できないわけです(もちろん申請のときの審査でセレクションはかかるわけですが)。何でも裏に黒幕がいる、というのは、思考の逃げですよね。
また、現実にはジャーナリストにカネがばら撒かれているということもないわけです。一部のジャーナリストからは、私にカネくれれば、もっとできる、見たいな声があがっているわけですし。
CoSTEPをはじめ、批判があるのはある意味注目を集めているということで、健全なことでもあります。確かに今横目で見ていると、無条件に「科学万歳」みたいな人材が出てくるのではないかと思わないではないですが、実践でぜひそうではない事を証明していただけたらと思います。
私たちのNPOにも、ぜひ人材を送ってください。
研究費というのは政府がらもらうわけですが、だからと言って政府が内容をすべてコントロールしているわけではないですし、できないわけです(もちろん申請のときの審査でセレクションはかかるわけですが)。何でも裏に黒幕がいる、というのは、思考の逃げですよね。
また、現実にはジャーナリストにカネがばら撒かれているということもないわけです。一部のジャーナリストからは、私にカネくれれば、もっとできる、見たいな声があがっているわけですし。
CoSTEPをはじめ、批判があるのはある意味注目を集めているということで、健全なことでもあります。確かに今横目で見ていると、無条件に「科学万歳」みたいな人材が出てくるのではないかと思わないではないですが、実践でぜひそうではない事を証明していただけたらと思います。
私たちのNPOにも、ぜひ人材を送ってください。
>私たちのNPOにも、ぜひ人材を送ってください。
ぜひ優秀な人材を雇用してやってください!
ぜひ優秀な人材を雇用してやってください!
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