5号館を出て

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指の数が減る進化を示すオビラプトル類の新種化石論文

 今朝はまぶしく明けました。

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 今日は久しぶりに恐竜のお話をしましょう。

 ネットで可愛らしい羽毛恐竜の再現画を見つけました。

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 前肢には指が2本しかなく、くちばしがありますが歯はありません。オウムのような顔をして大きさはヒトの大人の半分くらいだそうです。

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 エディンバラ大学の研究者らがモンゴルのゴビ砂漠で若い個体の完全な骨格化石を複数発見して再現することに成功し論文を出しました。

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 オープンアクセスジャーナルに掲載されているのでどなたでも全文を読むことができます。

 https://doi.org/10.1098/rsos.201184

 著者の一人にはわが北海道大学の小林快次先生の名前も見えます。

 化石の発掘現場ではなんと複数の個体の骨格が完全な形で保存されており、どうやらこの動物はかたまって寝るというかわいらしい性質を持っていたことが推測されます。

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 ここでは3個体がかたまって化石になっていました。

 化石は完全な形で発掘されて再現されています。

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 論文ではここまでの再現ですが、最近はすぐにリアルな復元図も描かれることが多く、この化石をもとに描かれたのが上の3頭(3羽?)が遊んでいる図です。

 この図の中でもっとも大事なところが前肢(前羽)に指が2本しかないというところです。

 この種はオビラプトル類という卵を生んで保温し、育児をする恐竜の仲間なのですが、オビラプトルの前肢には指が3本あります。それが、この種では中指が退化してほぼ2本になっているところが特徴です。

 歴史的にはこの種はオビラプトルよりも後に出現してきているので、オビラプトル類がこの種へと進化する時に指の数が減ったということがわかり、とても興味深い過程が明らかになりました。

 こちらがその2本指の前肢の骨です。

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 中指(III)の骨はまだ残っていますが、ほとんど爪楊枝のように細くなって消える寸前の状態です。

 こちらがオビラプトル類の系統樹です。

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 右端にあるのが今回発見された新種でオビラプトル類としてはかなり後期に出現したことがわかります。オクソコ・アヴァルサンと名付けられたこの種だけが2本指の前肢を持っており、他のほとんどの種は3本指です。有名なオビラプトルは真ん中辺に位置しており指の骨格の図は右から5番目に描かれています。1億3千万年前ころに出現したオビラプトル類の祖先種(1種)は放散進化を繰り返して恐竜の大絶滅が起こる6600万年前にはかなりたくさんの種に分岐して繁栄していたことがわかります。

 とはいえ、これらすべてが6600-6500万年前に大隕石の衝突とともに滅びてしまったのですから、この世は一寸先もわからない諸行無常ですね。

 恐竜が滅びる少し前から栄え始めたのがきれいな花を咲かせる植物です。今日、我々が愛でている花の咲く植物は恐竜時代の末期に出現し、大多数の恐竜の大絶滅を尻目に生き延びて繁栄し現代に至っていると考えられています。

 例えば今日咲いているミニバラ

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 彼女らは恐竜がいようといまいと、受粉をしてくれる昆虫さえいればこの地球で生き延びてこられたということなのでしょう。

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 大雑把に、生き延びてきた顕花植物と滅びて化石になってしまった恐竜たちと言う表現がよくされますが、恐竜の一部はトリとなって生き延びて、毎朝我が家の庭にエサを食べに来るスズメに進化したものもあることを考えると、地球上での生物の進化物語はちょっと考えるだけでワクワクするものがあります。










by STOCHINAI | 2020-10-09 22:49 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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