5号館を出て

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本当の構造改革:矢祭町

 今朝の朝日新聞に、「矢祭町が町長の交際費を廃止」という記事が載っていました。

 「同町の今年度の町長交際費は約180万円」とのことです。我々貧乏人にとっては180万円の交際費というと大変な額ではありますが、ちょっとした民間会社なら係長クラスの小さな額だと思います。小さな町にとっては、結構大きな額なのかもしれないと思ったのですが、矢祭町の年間予算はそんなに小さな額ではありません。平成15年度の決算が公開されていますが、きわめて健全に黒字決算になっています。地方自治体が黒字決算なんて、なんだか感動してしまいます。
 平成15年度一般会計の決算は歳入総額34億7,245万1千円、歳出総額34億1,125万2千円、歳入歳出差引額6,119万9千円です。
 前年度と比較すると歳入は9億1万1千円減の20.6%減です。歳出は9億1,647万6千円減の21.2%減です。

 私は不明にも、この町のことをつい最近まで知らなかったのですが、そう言えば「合併しない宣言」をした町であるとか、住基ネットにつなぐことを拒否した福島県の小さな町とかいうニュースで聞いていたような気はします。

 それがつい一ヶ月くらい前でしたでしょうか、朝のワイドショーで町長さんが登場していろいろと話しているのを聞いてすっかりファンになってしまいました。黒いガムテープで補修した応接室のソファーにすわる町長さんの写真です。(IEだとうまく表示されないかもしれません。)



 ワイドショーに出ていた時には、徹底的に町の予算を削減した町長さんということで、公用車も持たず徒歩で通勤する様子が流されていたのですが、こんな町長にしてはちょっと遅い出勤です。取材する記者に、朝あまり早く出てこない理由を尋ねられると、予算削減のためにトイレを含めて庁舎の掃除を町の職員が朝にやってくれているのですが、彼らが掃除をしているところに町長が出てくると監視しているみたいで、彼らにプレッシャーを与えてはいけないという理由だというのです。

 この話を聞くだけでも、いい町長さんだということがわかります。

 記憶ははっきりしませんが、町の職員の数は減ってきましたが給料はできるだけ削減しないようにしているとのことです。職員が進んで便所掃除をやったりする志気はそういうところからも出てくるのだと思いました。

 そして、この町長は去年だか数年前だか定かではありませんが、もう引退を決意して選挙には出ないと決めていたところ、住民が押しかけてきて頼むから町長を続けてくれと談判されたとい映像もワイドショーで流れていました。私利私欲のなさそうな方ですから、あまり長く同じ人間が町長をやっているのはいけないとの理由からの引退決意だそうで、しごく真っ当な理由です。

 それにもかかわらず、住民は町にはこの町長が必要だと思っているのです。住民が「町長やめろ」と押しかけてニュースになるという話はしばしば聞いたような記憶がありますが、辞めないでくれと町民が押し寄せて来たなどという話は初めて聞きました。

 毎年だんだんと減ってくる町の税収や国からの補助金に対して、国からは市町村合併が提案されているのですが、それは拒否して入ってくるものが少なくなるのなら、それ以上に節約をしようと立ち上がり、実際に黒字の決算をしているという事実は、口先だけは改革・改革と叫びながら全然支出の抑制ができていないどこかの国や地方公共団体とはエライ違いだと思います。

 小さな政府とか財政改革とか言うのであれば、この町のように住民の圧倒的な支持を持つ首長が率先して節約をリードすると、うまく行くという好例だと思います。

 ただし、町民が町長の引退を阻止したというところを見ると、町長が代わったらダメになってしまうのかもしれないという不安はあります。

 なんとか後継者が育って欲しいものです。
Commented by Salsa at 2006-02-08 00:33 x
ワタシもそのワイドショーの記憶があります。小さな町でここまでやれるんだと思ったのと同時に、小さいからできるのかなって思いました。
とにかく町長さんの姿勢に感動しました。
町民サービスの細やかさでも印象に残っていて、土日でも役場に2人ほどいて窓口業務をやっていたり、畑仕事しているおばちゃんから届出用紙を近所の職員の人が預かって持っていってくれてたり。
町民の人のインタビューコメントで「役場の人はよく働くよ」ってあって、Face to faceで丁寧にやっているんだなって感心しました。
Commented by habichan at 2006-02-08 10:53 x
相互TBありがとうございました。
Commented by stochinai at 2006-02-08 23:55
 Salsaさんのおっしゃる通りだと思います。小さなコミュニティというのが成功の秘訣なのでしょう。町民も役場の人もみんな知り合い、仲間です。構成メンバーに相互のコミュニケーションが成立していれば、公共サービスを行う方も受ける方もお互いに譲り合い、理解し合えて家族のような町が成立するのだと思いました。
 同じことを180万都市の札幌をひとくくりにして可能かというと絶対に不可能だと思います。とりあえず小さな単位でたくさんのコミュニケーション単位=コミュニティを作ることから始めると良いのかもしれません。
Commented by mk@wisdom at 2006-02-09 05:38 x
職種にもよりますが、交際費が係長で180万円/年という会社はあまりないと思います。国税庁のデータでは、会社の売り上げ1000円に対して3円ぐらいが会社全体で使われる交際費の平均額です。
Commented by stochinai at 2006-02-09 19:47
 そうですよね。私の知っている交際費は、医者とつきあいの多いある特殊な職種の例でした。今はどうかしりませんが、現金で動く交際費というのも見たことがあります。
>会社の売り上げ1000円に対して3円ぐらい
 というと、1億円の売り上げがあっても、30万円ですか。国税庁の調査だとすると、「使途不明金」だったら交際費とはされていないですよね。そっちは、どのくらいあるものなんでしょう。
Commented by mk@wisdom at 2006-02-10 02:08 x
そのあたりは私も深くは追っかけていないのですが、寄付金という形のお金もずいぶんあるようです。
それから、金融保険関係の会社も交際費はかなり高いようです。
Commented by stochinai at 2006-02-10 11:05
 確かに寄付金は交際費の一種と言えそうですね。我々関係だと、奨学寄付金という名前の研究費の補助もあります。アメリカの大学などは建物に寄付した人の名前がついたものがたくさんあることからわかるように、額も桁違いに大きいです。日本も企業がどんどん大学などに寄付してくれると、ありがたいんですけどね。
 金融保険医療関係の交際費というと、どうしてもダーティなことを想像してしまいます。
Commented by alchemist at 2006-02-10 12:23 x
米国だと大学主催のダンスパーテイに一人2千ドルくらいの会費(二人で来るから4千ドル)を払ってくれるヒトがいますけど、日本でそんな高い会費のパーテイで客が来るのは政治家先生くらいですね。しかも、前者は大学のキャンパスに作った仮設テントが会場で、出てくるのは大学カフェテリアの料理、接待するのはノーベル賞とかぶら下げたおじさん達、後者は高給ホテルが会場で、出てくるのはホテルのシェフが指導したお料理、接待するのはコンパニオンガールということになるのでしょうか?
お金持ちの民度の差なのでしょうか・・・こんな社会で今以上に収入格差ができると、もっともっと非文化国家に進化してゆきそうです。
by stochinai | 2006-02-07 21:32 | つぶやき | Comments(8)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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