5号館を出て

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我々の民度では住民公開は無理だ

RE:奈良県の幼女誘拐殺害事件をどう考えるか

 12月30日と1月6日に、この「つぶやき」でも取り上げていて気にはなっていたのですが、どうやら(また?)自民党が暴走を始たようです。性犯罪者情報、住民公開視野に小委設置へ 自民法務部会というニュースによれば、「自民党法務部会は18日、性犯罪の前歴者の住居情報などを地域住民に公開する制度をつくることを視野に小委員会を設置することを決めた」そうです。

 私も、再犯が予想される性犯罪者に関しては警察が情報を管理した上で、「監視」あるいは見守ることで再犯を防ぐのが、新たな被害者を出さないと言う意味においても、また犯人に犯罪を起こさせないという意味でも良いのではないかという意見を持っております。

 しかし、あくまでもその情報は法務省や警察庁、そして場合によっては地方自治体の保護観察官などの司法・行政当局に限って提示されるべきものであり、メーガン法(ミーガン法)のように地域住民に開示するなどという乱暴なやり方には、とても賛成できません。そういう意味では、私は現在の法務省・警察庁の見解を指示いたします。

 どうする性犯罪対策 ミーガン法(3) 諸澤 英道 常磐大理事長によれば、「これまでも警察は、犯罪者の情報をある程度持ってはいた。再犯の可能性がある性犯罪前歴者の重大事犯についても内部資料を作成して、各県警に配布しており、そこには奈良の小一女児殺害事件の小林薫容疑者の名前もあった」ということですので、ある意味では今回の事件を起こさせたのは警察の怠慢だとも言えると思います。(警察はそんなに暇じゃないんだ、という声も充分わかるつもりです。日夜忙しく働いておられる警察のみなさん、すみません。)

 今後は、そうした情報を生かすべく警察や保護観察官の配備を充実させるなどの方策をとるべきが筋であって、それを警察では守りきれないので住民にも警察行為をさせようというのが、ミーガン法ではないのでしょうか。

 ただでさえ、さまざまの事件に伴って「お上に逆らった」などというバッシングがたちまちにして起こる今の日本で、警察情報などが公開されてしまったらどうなるのでしょう。私には「リンチの勧め」としか思えません。我々、現代の日本国民は私刑をしないなどという高い倫理観を持ち合わせているとはとうてい思えないのです。

 本来は隠されているはずの個人情報が、毎日のように垂れ流されているこの国で、しかも現在のようにインターネットが発達してしまっている状況の下で、「匿名の悪意者には情報が漏れない策を講じつつ『地域限定』で伝える」などということが可能だとはとても信じられません。

 自民党の先生方が、日本の子どもや若者が倫理を失っているのを嘆いておられるのは知っておりますが、皆さんの道徳教育の努力にもかかわらず、まだまだ日本の子どもや若者はしっかりとした道徳を身につけておりません。さらに、戦後教育が失敗したとおっしゃる皆さんが良くご存じのように、中高年の皆さんも戦後の「民主教育」の結果、道徳観を失っているのです。

 そんな教育を受けた我々のような民度の人間で成り立っている社会の中に、「こいつは性犯罪の前科者だよ」などという情報を投げ込むということは、血に飢えたオオカミの群れに血の滴る肉を投げ込むようなものです。前科者に再犯をさせないようにするつもりが、前科のない人間に殺人を犯させるようなことになってしまいます。

 被害者の関係者の方々の悲しみはリンチによってあがなわれるものではないと思います。我々を犯罪者にしないでください。
by stochinai | 2005-01-18 22:01 | つぶやき | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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