5号館を出て

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赤い鳥 小鳥 なぜなぜ赤い 赤い実を食べた

 今朝もpodcastingを聞きながら自転車に乗っていました。Earthwatch Radio を聞いていたところ、黄色いしっぽのトリが最近はオレンジ色になったというような話をしていたので、思わず何回か聞き直してしまいました。

 英語では They Are What They Eat (「食べたものがその人のからだになる」)ということわざがあるらしく、日本語でいうとまさにタイトルで書いた「赤い鳥小鳥」の歌詞そのものと同じ考えに基づく話だと感じました。
北原白秋作詞・成田為三作曲

赤い鳥 小鳥
なぜなぜ赤い
赤い実を食べた

白い鳥 小鳥
なぜなぜ白い
白い実を食べた

青い鳥 小鳥
なぜなぜ青い
青い実を食べた

 小学校の時に習ったのだと思いますが、懐かしく思い出すとともに、私がこの歌詞は「科学的には正しくない」とずっと思っていたことも思い出しました。

 いくらなんでも、食べたもので身体の色が変わるはずがないと思っていたのです。しかし、Earthwatch Radioを聞いていると、cedar waxwings というトリ(日本名はヒメレンジャクらしく、確かに見たことのあるキレンジャクによく似ています)は、この絵を見ても尾の先が黄色いのが特徴のようなのですが、(アメリカの)北東部のトリでは、この黄色い色が1960年代頃からオレンジ色に変わってきたということです。

 そしてその理由というのが、その鳥が観賞植物としてアメリカに持ち込まれたハニーサックル(スイカズラ)オレンジ色の実を食べ始めたことが原因らしいと言う話です。

 実はこの話は論文としては10年以上前に発表されていたことらしいのですが、最近出たSecret Lives of Common Birdsという本に採録されていたというのが、今回、Earthwatch Radioのニュースに出た理由のようでした。

 原著論文はこれです。
Behavioral Ecology Vol. 10 No. 1: 80-90
Red coloration of male northern cardinals correlates with mate quality and territory quality

 本の著者によると、食べ物によって羽の色が変わる鳥というのはそんなに珍しくないのだそうで、cardinals(カーディナル;ショウジョウコウカンチョウ)やnorthern cardinalsというトリでは、赤い羽根の色のバリエーションは大きく、それが実は食べる餌が原因であることは良く知られているのだそうです。

 トリの羽毛が黄色から赤いものは、餌の中のカロチノイドによって色がついているのだそうで、特にオスでは色の色の変異が顕著な例が多いと言います。

 まだ証明されたことではありませんが、良く熟して赤い餌をたくさん食べたオスのトリは赤色が濃くなると考えられます。もしも、メスが赤色の濃いオスを選ぶとすれば、それか結果的に良好な餌場を確保しているオスを選んだことになり、性淘汰理論ではオスの赤い色はどんどん濃い方に進化しそうです。

 生態学・進化学の教科書に載りそうな話だと思いました。

【追記】
 [ EP: end-point 科学に佇む心と身体Pt.2]さんのところでも掲載されています。
Commented by 花見月 at 2006-03-03 23:52 x
先日、デンバーの自然科学博物館に行って、発見がありました。北米に生息するブラウンベアーと呼ばれる熊ですが、住んでいる場所や食べ物の違いによって、同じ種なのに、ほとんど黒に近い色から、ほとんど白に近い色まで体毛や体格が違うブラウンベアーがいるそうです。
デンバーの博物館には、その様々な剥製が展示されていました。また、今日の道新に、飼い主が病死したストレスから、真っ黒だったゴールデンレトリーバーが、一年たたないうちに真っ白になったという記事が写真つきで出ていました。
Commented by hal at 2006-03-04 13:12 x
そういえば、小学生の頃に飼っていたカナリアは、専用のエサを与えないとオレンジ色が褪せてクリーム色へと白っぽくなっていました。カロチノイドが含まれていたのでしょうね。
Commented by stochinai at 2006-03-04 13:55
 そうなんですよね。カナリヤや金魚などは、餌によって色を濃くする「色揚げ」ということを普通にやっていますね。記事を書いてから後で思い出しました。アカハライモリのお腹の赤い色も、甲殻類を食べないと出ないという話です。

 一方、花見月さんのおっしゃる哺乳類の毛色はメラニンという物質で、こちらは動物の皮膚の細胞が合成するものですので、食べ物との関係は薄い気がします。メラニンには黒から茶色のユーメラニンと黄色から赤のフェオメラニンというものがありますので、哺乳類は金髪から赤毛から黒毛から白髪までかなりの色の毛を作れるというわけです。

 ただ、ヒトでもカボチャやミカンを食べ過ぎると、肌の色が黄色くなるっていいますから、食べ物のいろが体色(?)に反映されることもあるのかもしれません。
Commented by ハニーm at 2006-03-05 12:48 x
朝の凛とした空気、モノトーンが美しい木立、最新の機器を耳に構内を自転車で
駆け抜ける…。  素敵な光景ですね。
 幼い頃、一室を小鳥専用にしていた父が、カナリアに卵の黄身を与えていたことを
懐かしく思い出しました。20年前、再びカナリアを飼い、高齢のせいか余り囀らなくて、
話しかけたり、音楽を聴かせたことがありました。歌劇「ランメルムーアのルチア」の
アリア(コロラトゥーラ)に首を傾け、反応、啼いてくれた様子はとても愛らしかったです。
 Earthwatch Radioを初めて知りました。「つぶやき」ではなく、ブログによる講義と
いう気が致します。いつにも増して木の実が沢山の森を、眼を*△?させながら、 
少しずつ啄ばませて頂いております。ありがとうございます。
by stochinai | 2006-03-03 22:56 | 生物学 | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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