5号館を出て

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サイエンスウォーカー

 実物も読まずに否定的なことを書いたエントリーにご批判をいただきましたが、もっともだと思います。読んでコメントしなければならないとは思っていたのですが、探しに出るのもおっくうでした。

 札幌で販売されているHokkaidoWalkerに挟み込まれているかどうかは知りませんが、そんな私の姿勢を見透かすようにTokyoWalkerに挟み込まれたというScienceWalkerの全ページをスキャンして送ってくださった方がいらっしゃいまして(本当に、ありがとうございましたm(_._)m)、読んでみました。

 こちらにほとんどすべてのページの写真が出ています。文章は読んでも読まなくても、そんなに差はありませんので(笑)これで十分だと思います。

 確かにフリーペーパーの形にはなっていると思いましたが、映画の宣伝を除くとほとんどすべてがハイテク製品の紹介です。こういう内容ならコマーシャル料をかせげることは間違いないと思いますので、まさに無料で作れると感じました。逆にスポンサーが付きそうもないので、文科省がやるしかないと思わせることができるはずの「生物ネタ」がほとんど皆無なのも、(生物屋としては個人的に)気に入りませんでした(苦笑)。

 これでは、文科省が無料で製品のコマーシャルをするためにマガジンを作った、企業にとってのフリー(コマーシャル)ペーパーになっているのではないでしょうか。

 あまりお金のことばかり言いたくはありませんが、本来のフリーペーパーは企業が広告を載せてもらう代わりにお金を払ってくれるので、我々はただで手に入れることができるものです。このサイエンスウォーカーは税金という形で国民全員がお金を払ってくれたので、我々はただで手に入れることができるものです。原理は似ていますが、納税者は納得してくれるのでしょうか。

 ハイテク野菜工場や科学博物館、科学未来館や、オープンラボ、女子高校生夏の学校、理科大好きボランティア、科学オリンピックの記事などはどちらかというと地味にひっそりと載っているのですが、こちらを大々的に前面に押し出しておすすめデートコースの企画にしておけば、私は結構うれしかったのですが、、、。科学技術週間の広報ももっと詳しくても良かったのではないでしょうか。

 最後の2ページ(裏表紙)は、ちょっと異色なディスカバリーチャンネルDVDと新しいハイテク人工土壌の話なのですが、良く見るとこの2ページは広告でした。広告も出せるのなら、中の製品紹介をした会社からもがっぽりと広告料を取るべきだったとくやまれます。

 皮肉なことに私にはこの土壌改良材の宣伝がいちばん「へ~」な科学の話でした。

 ただで出版して欲しいとまでは言いませんが、お役所仕事と言われないためにも真剣に広告料収入を考えるべき企画だったと思います。同じことを民間にやらせたらタダでやるのではないでしょうか、そこに文科省主宰のイベントをどんどん乗せてもらって数百万円の広告料を支払うというのが、妥当な戦略だったと思います。

 実際にご覧になった方のご意見をお待ちします。

 すでに、いくつか感想が出ていますので、リンクしておきます。

話題の「サイエンスウォーカー」を入手!
サイエンスウォーカー
文部科学省さん、ごめんなさい。
デートは科学で攻略できるのか!?
Science Walker
脱力「Science Walker
06.03.28 晴れのち雨
むしろTechnology Walker?
「Science Walker」話題になってますねえ

【言わずもがなの追記】
 表紙に書いてある「デートで使える科学ネタ」を信じない方が良いと思います(笑)。信じて知ったかぶりに使ってしまったら、「致命傷」を受けること間違いありません。ここに書かれている最新のハイテク製品はおそらく企業秘密のかたまりでしょうから、それについてうんちくを傾けることができるようになったら「ホンモノ」です。これ1冊ではとてもムリ。
Commented by K_Tachibana at 2006-03-30 00:04 x
●ature誌に広告を載せても掲載料は40万円くらいですから,広告効果の見えない「サイエンスウォーカー」に載せる広告で,掲載料が倍としても取れる広告掲載料は全体の経費からすれば微々たるものでしょうね.電話帳のように分厚かったころのCQ誌のように,広告だらけにすれば,広告費だけでまかなえるかも知れません.
Commented by 花見月 at 2006-03-30 02:06 x
いえいえTachibanaさん、雑誌の1ページ経費10万円もかければ、けっこういいものが作れます。で、あの16ページ、ある編プロの方は「多く見積もっても300万」と言ってました。あれだけ広告だらけだったら、広告費でおそらく制作費はペイすると思います。そもそもカラーの商業誌って、広告で稼ぐものなんです。つまり、7000万は角川の儲けってことでしょうか。だって、あの綴じ込みが無くても、雑誌はもともと発行されるわけですから。
Commented by K_Tachibana at 2006-03-30 06:27 x
花見月様
7000万円を前提にして書いていたので,上記のような文章になりました.300万だったら,話は全然違いますよね.7000万円の内訳を知りたいところですが,おそらく多くの部分が角川のまる儲けになるのでしょうね.
Commented by kuma at 2006-03-30 07:24 x
かつて政見放送が各放送局でのスタジオ収録に限られていた時代、国民が負担する政見放送制作費はゼロ円でした。ところがある年から各政党が作ったビデオの持込が認められるようになりました。すると各政党ともがんばってビデオを作りはじめました。(といってもダサいものばかりであることは皆さんご存知のとおり)これらは、ほとんどD通やH報堂などに丸投げしてすごい金額を吹っかけられたものでした。財源は選挙費用や政党助成金です。つまり税金。その政党にすこしテレビ業界に詳しい人がいれば制作会社と交渉すればとても安く、もっといいものができるわけですが、どうせ自分の金じゃないし、丸投げが簡単だからと安易に選択されていると考えられます。このお話もその類のお話ですね。
Commented by stochinai at 2006-03-30 16:50
 そういうお金の使い方を「民間に活力を与える」と言う人もいれば、「税金の無駄遣い」という人もいます。危険なのは、必要以上の経費を投入しますから、そのお金の一部が公務員に還流されるような「汚職」を産み出す温床になるということです。もちろん、今回のケースがそうだとは考えておりませんが。
Commented by enoki at 2006-03-30 20:20 x
みなさん、やはり勘違いしている。

森山和道さんが指摘しているように
http://moriyama.com/diary/2006/diary.htm#diary.06.03.28

7000万円は制作費じゃない、製作したものを全国に届けるネットワークに対するお金だと思うのです。

もちろんそれに7000万円もかかるのか、という話は別にあると思うのですが(ところで、誰も文部科学省に問い合わせてすらいませんよね。)、作った媒体の流通という観点を考えないと、議論が空回りすると思います。
Commented by stochinai at 2006-03-30 20:59
 コンビニなどで****ウォーカーとは別に無料配布するというようなことも言われています。森山さんのお話も推測だと思うのですが、違うでしょうか。
 良いものができれば奪い合いになるでしょうし、版権を買い上げてネットでpdf配布すれば流通はいくらでも伸びると思います。
 結局のところ、今回の問題はコンテンツに魅力がないことにつきると思います。
Commented by stochinai at 2006-03-30 21:15
 森山さんの日記を、もう一度読み直してみました。
>なんせ110万部買い切りですからね。
 という記述がありますので、何か内部情報をお持ちかもしれません。しかし、もし「110万部買い切り」が本当だとすると、文科省は「金だけ出すから配布までよろしく」ということですか。そっちのほうがよほど問題ではないでしょうか。
Commented by K_Tachibana at 2006-03-30 21:33 x
今日,業界紙の人に「サイエンスウォーカー」について電話で聞く機会があったので,聞いてみました.7000万円は業者に丸投げの残予算消化だそうです.今日はK大で残予算消化の第3期計画シンポ無料懇親会がありましたが,私は出ずに帰ってきました.
Commented by kuma at 2006-03-31 09:46 x
やはり丸投げでしたか。とてもありそうな話です。相場を知らない金持ちの地方在住者が歌舞伎町でぼられる構造ですね。
最近では与えられた研究費のの何%かをアウトリーチや広報に使えという決まりを作ったほうがいいのではないか、という意見がありますが、実は、そういうことをすると、サイエンスウォーカーと同じパターンに日本の大学や研究機関が陥ることになると思います。
研究費が巨額になればなるほど、素人には使いきれない金額になります。
私が見る限り、大学の先生たちは、広報に使えといわれた金が100万円以下なら、年度末にシンポジウム、それ以上になると外国から人を呼んで国際シンポをやって、なるべく豪華にやる、くらいしか思いつかないようです。つづく

Commented by kuma at 2006-03-31 09:46 x
それもかなり無駄っぽいですが、さらに巨大プロジェクトになるとその数%も巨額になりますから、おそらくD通やH報堂に丸投げが続出すると見られます。K川書店もこんどでおいしさを知ったでしょうから参入してきそうですね。
私は、単に研究予算の数%を広報に使え、ではなく、必ず予算の何%か使って科学コミュニケーターを雇い、一年間通じてあれこれアウトリーチや広報を行え、と決めるのが最も良いと思います。そうすればコミュニケーターの就職先がたくさんできるし、研究成果のアウトリーチもうまくいくはずです。双方向コミュニケーションのプロなら、一般国民の反応を研究者にフィードバックもできますしね。
Commented by ぷう at 2006-04-01 00:10 x
何だかお金の話題ばかりでビックリしましたが。。。。
サイエンスウォーカーようやく読みました。そもそもこの雑誌は科学にお詳しい方が読まれるものではないのでは!?(笑)
私なんかはへぇ~~そうなんだ、と知らないことばかりで職場の人たちと楽しく読みましたけど。。。これぐらいの内容なら抵抗感なく勉強ができるのでいいかも。不思議な数列やプラネタリウムの話が面白かったです。

科学未来館!?の存在自体知らなかったのでお台場へ行った際には一度訪れてみようと思っています。 
Commented by 晩酌時 at 2006-04-04 10:02 x
サイエンス・ウォーカー、札幌のセイコーマートにて無料で配られていました。今日一部頂いてきました。
by stochinai | 2006-03-29 13:08 | 科学一般 | Comments(13)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai