5号館を出て

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「科学的判断」の危うさ

 数日前のニュースで、どこからか流れて来た「脱北者」の顔写真を、顔の判断においては「専門の鑑定人」であるとされている、某大学の先生が、北朝鮮に拉致されたとされている日本人の方に間違いないようだという報道がなされ、支援団体が北朝鮮に申し入れをするとか、圧力をかけて欲しいというようなことを政府に要請したと聞いたような気がしていました。

 ところが、昨日か一昨日だったと思いますが、なんと韓国にいるその写真の本人が出てきて、私たちは拉致された日本人ではなく、単に北朝鮮から亡命してきた朝鮮人であると名乗り出たというニュースがありました。

 これは、単なる間違いとすませることのできない深い問題を残したと思います。

 一つは写真などによる「本人判定」の危うさです。大学の先生がやっているので、科学的という雰囲気が漂う手法なのかも知れませんが、このような過ちを犯してしまうと、その手法そのものに対する信頼性が大きく損なわれることになります。つまり、今後はそれを証拠に声高に何かを主張することはできなくなったと思います。自殺行為というやつですね。

 もう一つは、支援団体の軽さです。どこの誰ともはっきりしない人間から金で買い上げた「秘密写真」をもとに、一国の政治体制を批判するということ、さらにはそれを日本政府にも依頼するということをやっていては、会そのものの存立基盤も危うくなるでしょう。

 さらには、北朝鮮政府も認めている何の罪もない拉致被害者の家族の方々にまで迷惑を及ぼすことになりかねません。

 あまり大きな騒ぎになっていないのかもしれませんが、このことに対して北朝鮮関係者が本気で騒ぎ始めたら、国際関係上日本の立場はかなり悪くなり、日朝交渉もやりにくくなる可能性があります。

 NHKの問題もそうですが、最近の日本人は(右も左も)はっきりとした根拠や証拠がないのに、いろいろと声高に叫びあうということが多くなってきているのではないかと不安になります。

 しかも、声高になる理由に似非科学(血液型とか今回の顔相(?)診断とか)の支援を受けていると言うところも、かなり気になります。

 やっぱり基本的な教養(リテラシー)が欠落している人が多くなってきているのかもしれないと不安になります。

 今、日本の教育を立て直そうとするのなら、学力うんぬんよりもまず先に、読み書きそろばんと、物事を落ち着いて冷静に判断する力の養成を第一にすべきではないかと思います。大前提は、わからないことはわからないと判断できるという力ではないかと思います。多くの問題は、はっきりしないはずのことを「わかった!」と騒ぎ出すところから始まっているように思われます。

 まずは、落ち着いてもう一度検討しようよ、からですね。
by stochinai | 2005-01-22 01:22 | 科学一般 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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