5号館を出て

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オーロラを見た恐竜たち (科学って何?)

 今日は久しぶりに平成遠友夜学校で、生徒として聴講させていただいてきました。講義のタイトルは「オーロラをみた恐竜」です。講師は博物館の小林さんです。COEの教科書作りで、メールのやりとりをしたことはあったのですが、お会いするのは初めてでした。

 まだお若いの方なのですが、恐竜学者としてはかなりの「大物」のようで、今週末から幕張で始まる「世界の巨大恐竜博2006」でも、シンポジウムのパネリストになっています。

 北大の総合博物館でも22日から約1ヶ月間、企画展示「モンゴルの恐竜展」が開かれます。30日には、小林さんのセミナーも予定されています。

 今や引っ張りだこの大忙しで、某国営教育テレビのサ*エ*ス*E*Oで、眞*か*り嬢と共演予定ともおっしゃっておられました。まさに旬の恐竜学者といったところです。

 小林さんは実際にも若いのですが、年齢よりもさらに10歳は若く見られるとご自分でもおっしゃっていました。ラフな格好をしていたこともあり、講義の前に一番前の生徒さん(おばさま)に「学生さん?」とか訊かれていて、始まる前から笑えました。

 さて、このオーロラをみた恐竜を調べようと「オーロラ 恐竜」でネット検索してみると、「オーロラをみた恐竜たち」という福井県立恐竜博物館の特別展に行きあたります。そこを中心に少し歩き回ってみると、博物館セミナー「ベーリング海峡をわたった恐竜」講師:当館職員 小林快次という広告が見つかり、小林さんは北大に来る前に福井の博物館にいたということがわかりました。今回の話しのタイトル、および最初に見せていただいた素晴らしい絵は、その時に使われたものだったようです。

 私も、専門外のそのまた外にいるようなものなのですが、たまに講義で恐竜の話しをしたりすることがあり、その度に恐竜がアイドルであることと強く感じます。アイドルをテーマに研究をしていれば、その話に注目が集まらないはずはありません。今日のお客さんの中には、アイドルである恐竜にもっとも惹きつけられるはずの小学生達はいませんでしたが、お歳を召した方の中にもかなりの恐竜マニアがいらっしゃることが、質問からもわかりました。

 しかし、ちょっと残念なこともありました。こんなに人気のある恐竜の研究者が、日本には意外なほど少ないようなのです。小林さんが研究を始めた頃には、日本には片手の指で数えられるくらいの数しか恐竜学者はいなかったということです。

 また、小林さんは以前に、「税金で研究しているのなら、恐竜などという役にもたたないものの研究ではなく、もっと人々の役に立つ研究をしてはどうか」と言われたこともあるそうです。

 恐竜くらいの大アイドルの研究に対してさえ、そのような意見が投げつけられるという状況は、この国では学問というものに対して間違った価値観を持っている人がいる(多い?)ことを意味していると感じました。ひょっとすると、政府の学術政策を担当している人の中にもそのような意見があるのかもしれません。

 税金を使ってやる学問なのだから、お金儲けに直結するようなことをやるべきであるという思想があるのだとしたら、この国の学問は間違いなく衰退すると思います。

 私は必ずしもそう思っていなかったのですが、日本の財政が困窮化しているにもかかわらず科学技術振興に大きなお金をつぎこもうという政策の根本に、お金を投資することによって短期的にそれを回収し、さらにはより大きなお金を稼ぐという目的があるのだとしたら、それは私を含む学術研究をしている側から拒否すべき政策なのかもしれません。

 必要以上にお金がいるわけではないのです。それなのに、研究に対してバブルと言われるような「投資」がされていて、あちこちで不正の例が吹き出すように発覚しています。出す方ともらう方に大きな考え方のミスマッチがあることもこうしたことの原因のひとつなのかもしれません。

 せっかくの楽しい恐竜の話しを聞きながら、ちょっとブルーなことも考えてしまいました。

【追記】関連記事がこちらにあります。こちらにもありました。
Commented at 2006-07-12 18:58 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by stochinai | 2006-07-11 22:02 | つぶやき | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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