5号館を出て

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私大の定員割れ

 各紙がいっせいの報じているようですが、今春の入学者数が定員を割った私立の4年生大学が、去年よりも10ポイント以上増えて40%を越える222校になったということです。

 数字だけを見てもピンと来ませんが、産経新聞のこのグラフを見ると、状況の深刻さがひしひしと伝わってきます。平成13年からなんとか持ちこたえて来た定員割れがここへきて支えきれずに一気に増加したのでしょうか。来年に向かって、かなり不安という気がします。

 記事には書いてありませんが、グラフの中には定員50%未満の学校数も出ており、平成12年ころから20校前後あるようです。学生が半分以下しかいない大学というものを想像することもできませんが、そこまで減ってしまったのならば早々に閉鎖するべきではないのでしょうか。

 おかしなことも書いてあります。「4年制大の入学定員は440335人で、2.1%増となる一方、志願者は294万8621人で2.2%減った。18歳人口の減少で受験生が減っているのに、大学や学部の数は増加。受け皿が大きくなっている」というのは、どういうことなのでしょう。少子化が進んでいることは明らかで、数字的にも出ているのにそれに逆行するような定員増あるいは大学や学部の新設などを認可している文科省としては、自由に競争させてつぶれるところは勝手につぶれるにまかせる自由競争をさせているということでしょうか。

 しかし、そのように崩壊していく大学に実際に在学している学生にとっては、非常に迷惑な話です。卒業するまではなんらかの方法で勉強を続けられるように補償するのは、大学を認可した文科省の責任でもあるでしょう。

 そもそも大学といえども私企業である限り、儲かるから開校したり学生定員を増やしたりするのだと思います。そのからくりの陰には、文科省が出している補助金があるのではないかと疑うのは数字に明るくない私の誤解でしょうか。

 同じく産経のこの記事には、「大学の収入において、学生の納付金は7割以上を占めており」と書いてありますので、残りの3割のうちのかなりの額が補助金によってまかなわれているのではないでしょうか。

 補助金の分配を決めている日本私立学校振興・共済事業団が昨年度に交付した補助金の総額は3239億円だそうです。

 同じ記事の中に「学部ごとの在籍学生数や財務状況の情報をインターネットなどで一般公開している学校に対して補助金を増額させる方針を決めた」と書いてありますが、この記事をそのまま素直に読むと、補助金を出している事業団は今までそれらのデータを把握していなかったということでしょうか。

 私としては、その放漫な補助金の出し方のほうにあきれております。

 国立大学の運営交付金は毎年減らされているのですが、こうした補助金はどうなっているのでしょう。私立大学には文教族と呼ばれる国会議員が付いているという噂も聞いたことがあります。情報公開をするだけで補助金が増額されるというのは、何か変じゃないでしょうか。
補助金増額の条件は(1)財産目録、貸借対照表、収支計算書、事業報告書などの財務状況(2)学部別在籍学生数(短大や高等専門学校は学科別)-の2項目について、インターネットや誰でも入手可能な印刷物で情報を積極的に公表していること。10月ごろに調査を実施する予定。
 甘すぎませんか。
Commented by 私学教員 at 2006-07-26 02:57 x
国立大学法人89に出されている運営交付金1兆2千億円超、一方で私立大学・短大約900に出されている私学助成金約3千億円を比較しても私学優遇に見えるでしょうか。

ちなみに新設学部・研究科は完成年度まで私学助成は交付されません。
Commented by stochinai at 2006-07-26 10:24
 私学教員さん、コメントありがとうございます。
 私は、私学が国立に比べて特に優遇されていると思っているわけではありません。しかし、札幌市の浅井学園という私学で校舎の補強のために受けた補助金が理事長の自宅改修に使われたという事件に代表されるように、出した補助金の使われ方の監視が、国立大学と比べて信じがたいほど甘いのではないかと感じたのです。土木工事と同じようなシステムになっているのではないかと思ったのですが、的はずれの感想でしょうか?
Commented by inoue0 at 2006-07-28 15:07
 すでに6年制薬学部では、定員割れが出てるのですが、来年からも続々と新設が予定されています。2001年から2006年までの5年間で、薬学部定員は6割り増しになりました。
 倒産する新設薬学部が多発して、文科省は転学の斡旋をするため、転入生を受け入れてくれる薬科大学に、多額の補助をせざるをえなくなると思います。しかし、そこまでして卒業しても、就職先はないかもしれないのです。
 こんなお先真っ暗の状況を、17歳の高校生にわかれという方が無理でしょう。なにしろ、大学側は「ウチの大学に入れば未来はバラ色」という広告しかしないし、マイナスの情報を出すと嫌われるから、業界の人は知っていても何も言わないし。
Commented by stochinai at 2006-07-28 22:42
 大学や大学院がバラ色の夢を振りまきながら勧誘するのに引っかかる高校生や大学生も「自己責任」というのが今の世の中なのでしょうか。あげくの果てに失礼にも「ワーキングプア」などと呼んでいます。国が音頭を取っているのだとしたら、国に責任者の処罰を望んでも無理ですね。かといって、民主党政権になったら変わるのかと言ったら、彼らにもその件に対する展望があるとも思われず、、、。残るは革命だけだと思うのですが、、、、。
Commented by ヨシダヒロコ at 2006-07-29 18:29 x
安保のころの闘争が失敗に終わっちゃった歴史があると、暴れても(革命起こしても)しょうがないか、と思えてしょうがないですが。

この間、学校の不満を言う中学生に「昔こういうことがあって、失敗した」という事実を話したことがあります。

とか書いてると、共謀罪に引っかかるのかな(苦笑。
Commented by LISA at 2006-08-20 21:44 x
地方の国立大学には,子供を生かせたくない.
私大の先生方の窮状が本当によく伝わってきます.
しかし,地方の国立大学は,もっと大変かもしれません.
そんななかで,なぜ,学生は来るんだろうか.理解できない現状です.

Commented by LISA at 2006-08-20 21:45 x
教員の年間の校費(現在は,このような言い方はしません)は20万円ほどです.その反面,競争的経費として,研究費が 多いところには 多いところに まわされます.

確かに授業料は,私大ほど 安くて済みますが,その授業料は,どこに使われているのか?

授業のプリントもろくに配布されない.

学生が実感できる便益についてみると,研究費が回されている研究室と,そうでない研究室との格差がありすぎる.
Commented by LISA at 2006-08-20 21:46 x
研究費がほとんどないなかで,研究室に入った学生は ただ同然で使われるだけ,論文を書かないと大変ですからね.ただ,学生本人としては,もっとチャンスのあるほかの旧帝大系の大学院へ進学したいんでしょうけど,そうわさせじと,学生を鍛えはしない.ただ,使うだけ.
これでは,理系離れもすすむのも無理がない.

教育に力を注ごうと,学生を鍛えようとすると,アンケートの評価が落ちる.すると,”学部の教育センター”は,難しすぎるんですよ.もっと簡単にしないと学生はわかりませんよ.と,まあ,専門とは名ばかりの,ただの知識の切り売り,しかも,わかったような気になってもらうだけの.

Commented by LISA at 2006-08-20 21:46 x
そんな地方の国立大学には,けっして子供を入れたくない.
都会の私立大学で,ときどき,国立大学の授業にもぐりこみ,あわよくば,旧帝大の先生とうまくできて,院にいれてもらったら,本当に 人生が開いてきますよね.
なにしろ,旧帝大系の大学院も定員充足がかかっているので,いらっしゃい,いらっしゃいともろ手を挙げて迎えてくれます.

こうしたことを授業のはじめに話して学生を鼓舞すると,ときどき,そうしたことに答えてくれる学生がいる.
ま,これが4年生国立大学のいいところですかね.
と,自分をなぐさめながら,なんとか,しっかりとした授業づくりにいそしんでいます.

でも,学部は都会の私立に,やる気がまだあったら,旧帝大の修士にがおすすめです.

Commented by stochinai at 2006-08-21 00:10
 LISAさん、「内部」からの情報(笑)をありがとうございます。

 「学部は都会の私立に,やる気がまだあったら,旧帝大の修士にがおすすめ」というのは、なかなか含蓄のある深いお言葉だと思いますが、学部と違って修士では研究室ごとに「あたり、はずれ」がありますので、十分な事前調査をすることを強くお勧めしておきます。
by stochinai | 2006-07-25 22:11 | 大学・高等教育 | Comments(10)

ふと咲けば山茶花の散りはじめかな        平井照敏


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