IE9ピン留め

ポスドク1万人計画の次は早期退職教員1万人計画

 ポスドク1万人計画が始まって10年以上経ったと思います。そろそろ、本気で対策を考えなければならないはずです。

 というわけで、提案があります。国立大学の教員1万人に早期退職優遇措置を行って、そのあとに1万人のポスドクを大学に就職してもらってはどうでしょう。

 今や、大学教員への風当たりもとても強くなってきており、中年哲学徒さんの情報によると、指導力不足の大学教員をたたき直すために教員研修(FD=ファカルティ・ディベロップメント)を義務づけることになったのだそうです。

 つまり、文科省としては今の大学教員のほとんどが満足できる教育能力を持っていないと判断しているということでしょう。まあ、そもそも大学教員には教員免許もなく、採用される際に教育能力の判定をされるということもほとんどないのが大学教員採用の実態ですから、そうなっても不思議はないのですが、それがいわゆる研修程度でなんとかなるものでしょうか。中年哲学徒さんは極めて懐疑的です。
 現時点でまともな教育ができない教授にどうやって講義を改善せよというのか。できるものなら、とっくにやっているだろう。
 はははは、まったくですね。

 新聞記事を良く読んでみると、なんとこれは改正教育基本法を実現するための施策のひとつだとまで書いてあります。こんなところから始まるとは気がつきませんでした。
 昨月22日から公布・施行した改正教育基本法では、第9条で教員の「養成と研修の充実」を新たに明記。中央教育審議会でも大学設置基準の改正を了承した。教員全員が研修を受けた場合は、大学が約16万2000人、短大が約1万2000人(平成17年5月時点)の規模となる。
 これだけの数の教員全員に研修を義務づけるとなれば、それを教えるプロの教育者が必要になるわけですが、そもそも大学教育のプロというものがいないのが、今の大学だという気がしますから、どうするんでしょうね。今までのように、各大学に命令だけしても、ちょっと実行不可能だと思います。予備校にでも頼むのでしょうか。

 また、例によって大学がお金をよこせと言っているようでもあります。

 大学側が設置する同様のセンター(5号館注:北海道大など7大学にあるというFDに関する「大学教育センター」)のうち、専任の教職員を置いているのは半数程度にとどまり、専門スタッフの不足が懸念されている。中教審の委員からも「FDのリーダーとなる人材がいない」「個々の大学での努力では限界がある」と財政支援を求める声がある。
 このため、文科省では国立大学を中心に設置されている同様のセンターをFDの拠点として積極的に支援していくことを今後、検討する考えだ。
 というわけで、お金もかかりそうだし実効性も極めて疑わしい年寄りに対するFDよりも、若いポスドクの方々に就職の際の前提として教育訓練をしっかりと受けてもらって、大学に戻って来てもらってはどうでしょう。

 今さら教育されるのはまっぴらゴメンだという大御所の先生方も、優遇措置があるのならば1万人くらいすぐに手があがりそうだと思います。長い目で見たら、そちらの方がベターではないでしょうか。

 えっ、私ですか? もちろん、条件によっては喜んで引退させていただきます!
by stochinai | 2007-01-05 22:36 | 大学・高等教育 | Trackback(2) | Comments(11)
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Tracked from muse-A-muse .. at 2007-03-22 18:49
タイトル : 大学教育について(上下分離の必要性など)
ちょっと前からこちらのblogをちょくちょく見させてもらっている。 福耳コラム http://d.hatena.ne.jp/fuku33 経営学系の人らしい。んで、同年代、と。そういうこともあってかなんか読んでて楽というか分かりやすい(って、ぼくは経営学プロパーではないが)。特にこの.....more
Tracked from 大学教員の日常・非日常 at 2007-03-31 23:17
タイトル : FDやってどうなるか?
トラックバックから、5号館のつぶやき経由で知った大学教員の研修義務化の話題(http://d.hatena.ne.jp/haecceitas/20070105/p1)。 文部科学省もけったいなことを言ってくれますね。 このブログを読んでる方々には周知の話でしょうが、大学の教員には、高校、中学、小学校......more
Commented by Wisdom96 at 2007-01-05 23:57 x
驚きました。どうやって運用するのか非常に楽しみですね。
それにしてもこの教育界バッシング、彼らの中に最終的な展望やその過程が全く見えないのですが・・・この研修にしたって・・・
Commented by ue at 2007-01-06 05:55 x
FDについての是非は色々あると思いますが、早期退職1万人計画は目からうろこの大変素晴らしい提案だと思います。どのような手続きを踏めば文科省が施行するのか詳しいことは知りませんが、正式に提案してみてはいかがでしょうか。今まで聞いたことのない素晴らしいアイデアなので、賛同者も大勢いると思います。
Commented by haecceitas at 2007-01-06 22:39 x
TBありがとうございます。haecceitasです。

早期退職1万人計画を導入すると、人文系では大学に残って欲しい人から退職してしまうかもしれませんね。単著を出版できる優秀な研究者なら、成果発表の場に困らないでしょう。そういう人であれば、私塾みたいなものを開設すればいろんな大学から学生も集まると思われます。大都市に限った話ですが、人文系では大学に籍がなくても研究はできますので。


それに関連して、FDについても、エントリで書いたのとはちょっと違った考え方もできるかと。たとえば、専業で非常勤講師をかけもちしている方の教育能力は目を見張るものがあります。学生の評判もいいようです。そういった方々の教育業績を正当に評価できるようになるなら、FD重視も逆手にとって使えるかもしれません。
Commented by stochinai at 2007-01-07 01:08
 Wisdom96さん、いつもありがとうございます。

 だいたい教育重点内閣といいながら、政府主導で教育界バッシングをやっているのですから、あきれてしまいます。彼らの頭の中では、教育者の総入れ替えが理想だというような妄想が渦巻いているのだと思うのですが、できるものならやってくださいと言いたいところです。ところが、日本の未来がどうなるかについての想像力が欠けた連中ですから、ホントにやってしまいそうなところが笑えないところです。
Commented by stochinai at 2007-01-07 01:13
 ueさん、このアイディアは別に私が思いついたものではなく、民間ではずっと前からやっているものなのに、なぜ公務員に関して出てこないのかずっと不思議に思っていました。

 それにしても、我々から文科省に正式に提案するルートというものがないことが大問題ですね(苦笑)。なにせ、大学で学長に正式に提案するルートすらない世界なのですから。

 ところで、時々公募されるパブリックコメントって、タウンミーティング以上の意味があったりするものでしょうか。実際に実現されたパブリックコメントについての情報などご存じですか。
Commented by stochinai at 2007-01-07 01:25
 haecceitasさん、毎日読ませていただいて、私の貴重な情報源にさせて^いただいております。ありがとうございます。

 実は、某G大学で60~65歳の間で退職年齢を選べる(満期退職と見なしてくれる)制度を始めたという話を聞いたことがあるのですが、優秀な方ほど早期退職してしまって、大学がガタガタになり始めているということです。

 また、おっしゃるとおり、ものすごく教育能力の高い方は学外にたくさんいらっしゃるので、どんどん大学に取り込んでいけば良いと思うのですが、法人化した大学では、それと逆に非常勤講師をどんどん削減しているのが実情です。たとえ質が悪くても、タダで使える内部の人間にやらせようということなのですが、学生に言わせるとそんな講義ならやらないでくれた方がマシだということです。

 現実に目をつぶって、良い研究者は良い教育者であるという伝説にすがるのはもうやめて、本当に教育をする気があるのなら、その能力の高い人を使えるシステムを導入すべきだと思います。現状を改善するためにFDをすることを否定はしませんが、すべてがFDで解決できると考えているなら、それはやはり妄想と言わざるを得ません。
Commented by さてと at 2007-01-07 07:16 x
興味深い会話ですね。大学の教育と研究の両方を改善したいなら、私の考えでは、大学を合併して規模を大きくすることで、それぞれの専門分野に大勢(複数)の専門家がいるような状況がいいのではと思います。一人の教授が、広く浅く教えようとすると退屈なモノになりがちではないかと思います。例えば生化学という分野なら、一人の教授の本当の専門はその中のごく一部分であって、他の生化学分野はただ厚めの教科書を読んで学生よりは知っているという程度である状況があると思います。いわゆる現場の人の話を聞くのは面白いという状況を作るには、色んな現場の人がいた方がいいと思うのです。
Commented by alchemist at 2007-01-07 13:52 x
色んな専門家が協力して講義をやるのは、一面正しいのですが、学部レベルでそういう講義をやると、断片の情報が多くて講義に統一性がないというクレームが学生サンから必ず来ます。そんなもの、自分で生化学なら生化学の教科書を読んで抜けたところを補うようにすれば済むのですが(大体、今の講義時間で生化学の全体を薄く広くやるのは無理なので)、自分で調べる習慣のない学生さんがかなりいます。要するに深くやった場合に文句をいってくる学生もいるし、広く浅くやったら退屈と文句をいってくる学生もいる・・・ということです。まあ、広く浅くを要求する学生さんには、自分で本を読んでから出直して来い、ということにしてますけど。
Commented by stochinai at 2007-01-07 21:18
 「さてと」さんとalchemistさんのやりとりを見ておわかりのように、今の大学では昔ながらの研究者としての教員と、ある学問分野の基礎を広く教えるオールマイティの教員が両方とも必要になってきております。前者は確かにある数以上の研究者を用意できる大きな大学ならできることですが、alchemistさんがおっしゃるように実はそのオムニバスを取り仕切る狂言回しのような人がいないとひとつのまとまった学問体系へとまとめ上げられないという大きな欠点が生まれます。
 こんな状況の中では、大学らしい新しい教育カリキュラムを作り上げる必要があるのですが、大学の中で評価されることの少ないその仕事を誰がやるのかというところで、みんな黙ってしまっているというのが現状ではないでしょうか。
Commented by alchemist at 2007-01-08 17:13 x
狂言回しをやるには、相当な研究能力だけでなく幅広い視野での教養としての科学が必要ですから、まず候補になりうるヒトがそんなにいないんじゃないでしょうか?米国のように良い教科書を書けば研究業績と同等に評価されるという社会であるならば、そういうヒトも出て来るでしょうけれど・・・。現状では、教科書の編者なんて頼まれたから断わり切れなくてよんどころなく引き受けるモノで、引き受けた以上は全体に目を通しますがなるべく時間をとられないように・・・ってのが実態のヒトが多いのではないでしょうか?だから、多少評判が良くても、改訂版など作る気にもなれないし、従って、次の教科書はまたゼロから別の誰かが始めることになって・・・(少なくとも私はそうです)。
科研費の制度にしても、教科書作りにしても、この国では継続して事業を進める、内容を充実させることよりも、思いつきで新しいことを始めることにばかり目が行ってしまっているような気がします。まあ、コンクリートの建物は100年以上使うのが当たり前の社会と、安普請がバレないうちに40年くらいで取り壊して立て直すのが当たり前の社会の文化の差なんでしょうか。
Commented by stochinai at 2007-01-08 23:45
 高級官僚が3年で異動するので、それ以上長いスパンの計画は受け入れら得ることがないという話を聞いたことがあります。

 なんでも困ったら「お上に要求する」という、我々の心に染みついた官僚国家根性からたたき直さないとダメですね。

 まず、自分から始めてみようかな、と思います。
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