フィリピンでの臓器売買合法化と日本
「ごはんさん」という方から、一年近く前のエントリー「移植臓器の売買はどうしていけないのか」に連続コメントをいただきました。おそらく、最近ニュースになっているフィリピン政府(保健省)が「生体腎移植の事実上の臓器売買を公認する新制度導入を目指」していることと関係があるのだと思いますが、もう一度エントリーを立ててみます。
テレビなどでもいろいろと報道されているようですが、フィリピンでは事実上の臓器売買はかなり普通に行われているようで、今回の法整備でフィリピン政府は闇市場をなくすることと、臓器提供者への「報酬」の引き上げ、さらにほとんどが外国人へと流れている臓器移植を、自国民にも行えるようにすることを狙っているようです。
しかし、臓器売買移植を合法化することで問題は解決するのでしょうか。
フィリピンでも、現状では法的に「売買」が認められていないので、合法的に臓器を提供した場合には異常に安い「謝礼」程度しか支払われないという現実と、闇市場で提供した場合にはその数倍の「値段」がつくという実態があるようです。しかし、闇業者が患者から受け取る金額と、提供者に支払われている金額には10倍くらいの差があるようですし、フィリピン人で臓器移植を受けたいと思っている人にはとても払える額ではないということもあって、フィリピン国民にとっては臓器売買の実態は耐え難いものになっているのだと思います。
もちろん、闇ルートで行われる臓器移植は、ドナーの生命の危険や、ウイルス感染などを含めた臓器の状態チェックの不安、さらには移植手術そのものの技術の不安もあり、いろいろな状況で手術が失敗した場合には、ドナーもレシピエントも泣き寝入りを余儀なくされて、臓器ブローカーだけが濡れ手に粟の大もうけをしているという実情はなんとかしなければならないとは思いますが、それが実態の追認で解決するようにはとても思えません。
報道によると、フィリピンでの生体臓器移植はアラブ諸国などからの引き合いも多いということですが、もちろん日本からの需要もあるようです。物価や所得格差を考えなくても、臓器の売買が法的に禁止されている日本で移植を受けることができない患者さんが、フィリピンで移植を受けたいと思うのは無理のないことですし、その「値段」が数百万円で済むということならば、かなりの数の日本人にとっては検討に値する話になってくるのだと思います。
問題はお金の問題ではなく、国によっては禁止されている臓器売買が、他の国では合法化された場合にどうなるのかということだと思います。
日本では人間の尊厳や倫理的観点から臓器売買が法的に禁止されているのですから、たとえ臓器移植が合法化されている外国へ行ったとしてても、そこでの臓器売買は日本人としては禁止されているというのが法の解釈だそうです。しかし、こういった「解釈論」が出てくるということがそもそもそれをすり抜ける人の存在を認めているような気がしてなりません。
日本国内での臓器売買を禁止しているのであれば、日本人が外国へ行って臓器移植することも厳しく取り締まられなければならないと思います。逆に、外国での売買臓器移植を見逃すのであれば、国内においても臓器売買(あるいは、適正な謝礼の支払い)を禁止する正当な理由は見あたりません。
今、我々に必要なのは国境を越えたフェアなルールだと思います。
日本でダメなものは、フィリピンに行ってもだめ。フィリピンで良いものは、日本でも認めることができるようなインターナショナルなルールがないと、間違いなく国際紛争の種になるでしょう。
人々はやすやすと国境を越えることのできる現在、日本だけが美しくなろうとしても無理なのです。政府には、世界を美しくする政策をお願いします。
Tracked from レゾンデートルのサイドボード at 2007-02-13 06:41
Tracked from 専門家や海外ジャーナリス.. at 2008-03-15 17:49
Commented by Black at 2007-02-12 07:48 x
Commented by 花見月 at 2007-02-12 10:51 x
Commented by Black at 2007-02-13 06:43 x
Commented by Black at 2007-02-13 06:52 x
Commented by ろれ at 2007-02-13 16:38 x
Commented by 三余亭 at 2007-02-13 21:11 x
Commented by 三余亭 at 2007-02-13 21:12 x
Commented by Black at 2007-02-14 06:53 x
テレビなどでもいろいろと報道されているようですが、フィリピンでは事実上の臓器売買はかなり普通に行われているようで、今回の法整備でフィリピン政府は闇市場をなくすることと、臓器提供者への「報酬」の引き上げ、さらにほとんどが外国人へと流れている臓器移植を、自国民にも行えるようにすることを狙っているようです。
しかし、臓器売買移植を合法化することで問題は解決するのでしょうか。
フィリピンでも、現状では法的に「売買」が認められていないので、合法的に臓器を提供した場合には異常に安い「謝礼」程度しか支払われないという現実と、闇市場で提供した場合にはその数倍の「値段」がつくという実態があるようです。しかし、闇業者が患者から受け取る金額と、提供者に支払われている金額には10倍くらいの差があるようですし、フィリピン人で臓器移植を受けたいと思っている人にはとても払える額ではないということもあって、フィリピン国民にとっては臓器売買の実態は耐え難いものになっているのだと思います。
もちろん、闇ルートで行われる臓器移植は、ドナーの生命の危険や、ウイルス感染などを含めた臓器の状態チェックの不安、さらには移植手術そのものの技術の不安もあり、いろいろな状況で手術が失敗した場合には、ドナーもレシピエントも泣き寝入りを余儀なくされて、臓器ブローカーだけが濡れ手に粟の大もうけをしているという実情はなんとかしなければならないとは思いますが、それが実態の追認で解決するようにはとても思えません。
報道によると、フィリピンでの生体臓器移植はアラブ諸国などからの引き合いも多いということですが、もちろん日本からの需要もあるようです。物価や所得格差を考えなくても、臓器の売買が法的に禁止されている日本で移植を受けることができない患者さんが、フィリピンで移植を受けたいと思うのは無理のないことですし、その「値段」が数百万円で済むということならば、かなりの数の日本人にとっては検討に値する話になってくるのだと思います。
問題はお金の問題ではなく、国によっては禁止されている臓器売買が、他の国では合法化された場合にどうなるのかということだと思います。
日本では人間の尊厳や倫理的観点から臓器売買が法的に禁止されているのですから、たとえ臓器移植が合法化されている外国へ行ったとしてても、そこでの臓器売買は日本人としては禁止されているというのが法の解釈だそうです。しかし、こういった「解釈論」が出てくるということがそもそもそれをすり抜ける人の存在を認めているような気がしてなりません。
日本国内での臓器売買を禁止しているのであれば、日本人が外国へ行って臓器移植することも厳しく取り締まられなければならないと思います。逆に、外国での売買臓器移植を見逃すのであれば、国内においても臓器売買(あるいは、適正な謝礼の支払い)を禁止する正当な理由は見あたりません。
今、我々に必要なのは国境を越えたフェアなルールだと思います。
日本でダメなものは、フィリピンに行ってもだめ。フィリピンで良いものは、日本でも認めることができるようなインターナショナルなルールがないと、間違いなく国際紛争の種になるでしょう。
人々はやすやすと国境を越えることのできる現在、日本だけが美しくなろうとしても無理なのです。政府には、世界を美しくする政策をお願いします。
タイトル : 看護職福祉職とFTAの将来
いよいよエスニックホスピタルが出現しそうです。とは嘘です。日本とフィリピンとの間で自由貿易協定(FTA)が締結されました。このFTAには労働市場 の開放が含まれる日本としては初めてのものです。これで日本はフィリピン人看護師、介護福祉士を受け入れることに......more
いよいよエスニックホスピタルが出現しそうです。とは嘘です。日本とフィリピンとの間で自由貿易協定(FTA)が締結されました。このFTAには労働市場 の開放が含まれる日本としては初めてのものです。これで日本はフィリピン人看護師、介護福祉士を受け入れることに......more
この問題は深刻です。現地法が優先ですから、日本人が海外に行けば合法的に売買できます。新しい立法で日本人はすべからく海外でも売買を禁ずという法律も難しいでしょう。フィリピンは極端な国で、人材輸出をしますが、国内の人材が払底しても輸出しようとします。たとえば看護師です。臓器売買に一定の規制をするための合法化とは言え、これが新たな輸出産業になれば極めて非人道的で、危険だと思います。ところでコメントしてもトラックバックできない現象がずっと続いているのですが、これはトラックバックはご法度となっているのかな?
コメントでなくてリンクしてもでしたがリンクの仕方が悪いンだろうか。
コメントありがとうございます。トラックバックに関しては、記事内でこちらのページ(記事)を引用していない場合には、リンクできないようにしてあります。
フィリピン関係というと、こちらの記事でしょうか。こちらからトラックバックを送っておきます。すみません。
http://kkudo.livedoor.biz/archives/50039795.html
フィリピン関係というと、こちらの記事でしょうか。こちらからトラックバックを送っておきます。すみません。
http://kkudo.livedoor.biz/archives/50039795.html
はじめまして。
日本の臓器移植法では,海外での臓器売買も明示的に禁止されています(臓器移植法11条,20条,刑法3条)。ただ,取り締まられたという事例は知りませんが・・。
日本の臓器移植法では,海外での臓器売買も明示的に禁止されています(臓器移植法11条,20条,刑法3条)。ただ,取り締まられたという事例は知りませんが・・。
生殖補助医療の倫理的な問題も同じですね。精子や卵子、受精卵が売買されるということは、臓器どころではなく、結局1人の人間が売買されているように感じてしまいます。代理母に関しても、子宮の売買ではないですが、お金をはらって臓器をしばらくレンタルするように感じられます。日本はだめでも、アメリカではできる状態で、お金がある人は、アメリカに行って、自分の望みの赤ちゃんを作ってくることができる。日本には、まだルールがありません。
ノムラさん。情報提供ありがとうございます。日本では、このように法律では決まっているけれども見逃されているというケースがとても多いと思います。そして、政府あるいは警察がその気になった時に、いきなり取り締まりにはいるのです。たとえ今までは告発されなかったとしても、違法行為には違いないのでやられた方は、だいたい「泣き寝入り」です。非常に陰険な統治の仕方だと思いますが、とても有効なのでしょう。法治国家であるにもかかわらず行政が力を持っている理由のひとつだと感じています。
取り締まられないということは、実は自由も奪われているということなのですよね。
取り締まられないということは、実は自由も奪われているということなのですよね。
花見月さん。
国境を越える卵・精子・臓器の売買およびレンタルは、経済が国際化している以上、目をふさぐことはできない現実だと思います。日本は侵略戦争に負けて反省しているはずなのに、外国に行って臓器売買やレンタルのクライアントになってしまっている現状を向こう側からみると、今度は経済侵略戦争をやっているように見られてしまうかもしれません。
それと、今日のテレビでもやっていましたけれども、異常に報酬の安い介護士や、仕事が大変な看護士をフィリピンなどから大量に調達しようとしているみたいですけれども、これも同じ発想のような気がします。
アメリカの手下になって、アメリカと同じやり方をしていると、アジアの孤児になってしまいそうで、恥ずかしい気がします。
国境を越える卵・精子・臓器の売買およびレンタルは、経済が国際化している以上、目をふさぐことはできない現実だと思います。日本は侵略戦争に負けて反省しているはずなのに、外国に行って臓器売買やレンタルのクライアントになってしまっている現状を向こう側からみると、今度は経済侵略戦争をやっているように見られてしまうかもしれません。
それと、今日のテレビでもやっていましたけれども、異常に報酬の安い介護士や、仕事が大変な看護士をフィリピンなどから大量に調達しようとしているみたいですけれども、これも同じ発想のような気がします。
アメリカの手下になって、アメリカと同じやり方をしていると、アジアの孤児になってしまいそうで、恥ずかしい気がします。
恐れ入ります。トラックバックして見ました。
海外の売買が明示的に禁止されているようには読めませんが??条約でも結ばない限り、国内法の原則から裁くことはできないと思います。ちなみに条約は法律ですが。
臓器移植の話は難しいですね。
ただ、配偶子の話は献血や骨髄移植の延長上で考えることも可能な話のようにも思えます。また、フィリピンに限らず貧しいアジア諸国の「人材輸出」は、外貨を稼ぐ重要な「出稼ぎ」産業でもあります。日本ばかりか(というよりむしろ日本より)裕福な近隣国に安い住み込みのメイド等として「輸出」されていて、双方の経済を支えています。日本の若者が3K仕事をしない以上、安価な労働力を輸入するのは自由経済の当然の帰結です。これらと臓器移植の話を一緒に論じるのは無理があります。
本題の臓器移植ですが、もちろん国際ルールができるのが理想的ですが、当面は健康よりもお金が欲しい人たちの多い国から臓器が提供され続けるでしょう。しかし国際ルールづくりが困難なのは十分予想でき、場合によってはそれより先に、拒絶反応のないブタやマイES細胞からの臓器が実現するかもしれません。むしろその方が人道的なのは間違いないわけで、臓器移植に反対するのなら、日本で過度に抑制されているES研究を強く支持する必要があるのではないでしょうか。
ただ、配偶子の話は献血や骨髄移植の延長上で考えることも可能な話のようにも思えます。また、フィリピンに限らず貧しいアジア諸国の「人材輸出」は、外貨を稼ぐ重要な「出稼ぎ」産業でもあります。日本ばかりか(というよりむしろ日本より)裕福な近隣国に安い住み込みのメイド等として「輸出」されていて、双方の経済を支えています。日本の若者が3K仕事をしない以上、安価な労働力を輸入するのは自由経済の当然の帰結です。これらと臓器移植の話を一緒に論じるのは無理があります。
本題の臓器移植ですが、もちろん国際ルールができるのが理想的ですが、当面は健康よりもお金が欲しい人たちの多い国から臓器が提供され続けるでしょう。しかし国際ルールづくりが困難なのは十分予想でき、場合によってはそれより先に、拒絶反応のないブタやマイES細胞からの臓器が実現するかもしれません。むしろその方が人道的なのは間違いないわけで、臓器移植に反対するのなら、日本で過度に抑制されているES研究を強く支持する必要があるのではないでしょうか。
臓器提供のありかたについて、以下のpdfファイルが参考になるかと思います。
http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/bioethics/organ_procurement_survey.pdf
個人的にはこちらで紹介されている徴用型に傾きつつあります。
http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/bioethics/organ_procurement_survey.pdf
個人的にはこちらで紹介されている徴用型に傾きつつあります。
ごめんなさい、間違ってました。
http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/bioethics/organ_procurement_survey.pdf
でした。
http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/bioethics/organ_procurement_survey.pdf
でした。
うわー、ゴメンなさい。
http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/bioethics/
の後に、organ_procurement_survey.pdfです。
http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/bioethics/
の後に、organ_procurement_survey.pdfです。
すみません。三余亭さんは何も間違っておりません。上の二つとも改行なしで表示されているだけで、きちんと正しいアドレスが入力されております。試しに、ドラッグしながら次の行の頭までを選択すると、正しいアドレスすべてがコピーされます。悪いのはエキサイトブログの表示システムなのです。これでたくさんの人にご迷惑をおかけしております。すみませんでした。
>Blackさん
刑法3条の適用があるとされることで,国民については国外で行った場合でも処罰されることとなるのです。売買を行ったという立証が難しいという問題はあるでしょうが・・・。
刑法3条の適用があるとされることで,国民については国外で行った場合でも処罰されることとなるのです。売買を行ったという立証が難しいという問題はあるでしょうが・・・。
生体臓器移植における臓器売買を合法化することで、貧困層への略奪を防ごうというのは、日本でも岡山大の粟屋さんなんかが言っていることで、かなりの説得力がある話ではないかと思います。日本においてはともかく、そういう国で認めざるをえないものだし、今さら禁止というのは明らかに非現実的でしょう。
また、この手の問題についての法制度を国際的に統一するというのは非現実的なだけではなく、危険なことではないかと思います。
基本的には国内法で対処するべきで、たとえば、外国での違法な臓器移植の術後治療を禁止するとか、より穏健には保険を適用しないというような形が現実的ではないかと思います。どうしても国際ルールを作るとしたら、外国人に対する臓器移植についての照会制度というような形になるのでしょうが、実効性は疑問ではないかと思います。
また、この手の問題についての法制度を国際的に統一するというのは非現実的なだけではなく、危険なことではないかと思います。
基本的には国内法で対処するべきで、たとえば、外国での違法な臓器移植の術後治療を禁止するとか、より穏健には保険を適用しないというような形が現実的ではないかと思います。どうしても国際ルールを作るとしたら、外国人に対する臓器移植についての照会制度というような形になるのでしょうが、実効性は疑問ではないかと思います。
ノムラさん 刑法3条ですか!なるほど、でも立証はかなり難しいですね。
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