5号館を出て

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英語を標準語とする国内学会

 去年から、推奨されていたのですが、今年の学会では発表用のポスターと、口頭発表のスライドはすべて英語で書くことが求められるようになりました。ポスターに関しては、外国の方がいらしたら英語で説明することを求められています。もちろん、口頭発表もシンポジウムはすべてが英語で発表及び質疑応答することになっていましたし、ワークショップにも聴衆の中に外国の方がいらしたら、基本的に英語で発表・質疑応答をすることになっていました。

 ポスターとスライドを英語化する件に関しては、比較的抵抗も少なく受け入れられているようにおもいました。

 問題は、英語による発表と質疑応答です。前にも書いたかもしれませんが、日本人の研究者にも外国人と区別がつかないくらいの発音だけではなく、ウィットや口語表現を苦もなく駆使する人が出てきており、それは一昔前とは比べものならないくらいです。また、老練な研究者の方々の中には、発音などはかなり怪しいとしても、その度胸と発表内容で完璧にコミュニケーションができる方も、いらっしゃいます。そういう方々にとっては、おそらく日本語であろうが英語であろうが、自分の言いたいことはすべて言えているように思われますし、何の問題も感じておられないのかもしれません。

 しかし、まだまだ大多数の日本人研究者にとって、英語で発表することの壁は高いと感じられるものでした。特に気になったのは、ほぼ完璧に言いたいことが伝わってくる発表をやられた方が、質疑応答になったとたんにコミュニケーションブレークダウン状態になって、質問されていることすら把握できず、持ち時間がなくなるまで I don't know を繰り返すだけということがかなり見受けられたことでした。

 外国の方に、流暢な native English でまくしたてられてそのような状態になる場合には仕方がないとも思えるのですが、日本人同士でお互いに通じない英語でがんばりあっている状況は、後で聞くと笑い話になるかもしればせんが、その場に居合わせた場合には頭を抱えてしまう以外にありません。しかも、その場にたったひとりの外国人すらいないこともあったようです。

 もともと英語が標準言語である科学の世界で、国内学会をも含めて国際化を標榜すること自体は、決して悪いことだとは思いません。しかし、我々の語学力を冷静に考えるならば、あまり無理をせず、学会発表の質疑応答(時には口頭発表)に日本語を混ぜることをタブーにまでしてしまうことは、せっかくの学会という学問の交流の場の実質を殺いでしまうことになることもあると思います。

 基本的に、英語に収束させていくという方針を持ちつつも、その場その場で日本語がボロボロと出てきてしまうことが許される包容力のある学会運営をやっても良いのではないかと思いました。

 もちろん、緊急避難として日本語を使ってしまう場合には、どうしても伝えたい研究の中味があることを期待するのですが、、、、。
Commented by inoue0 at 2007-05-31 03:41
英語論文の書き方、読み方は研究室でレクチャーされますし、発表も、原稿を読み上げるだけなので、事前準備が可能です。
 でも、質疑応答は難しい。系統的な訓練がなければ、オーラルコミュニケーションは至難の業です。
 大学内の普段のゼミナールで、英語でディスカッションしていくべきだと思います。それが結局、大学院生のためになるんですから。
Commented by higashi at 2007-05-31 04:30 x
学会の英語化は賛成です。質疑応答もできないような人は質疑応答くらいできるようになってから参加するようにしてはどうでしょうか。その程度できないと国際的にはどうしようもないし。
Commented by takuroshinano at 2007-05-31 05:43
プレゼンのスライドが英語なのは良いと思います。作る時に再度考えてから作ることになるので、良いスライドになると思います。ポスターもしかり。しかしながら質疑応答は?です。頭の中で英語で物事が考えられるようになればいいのでしょうが、そうはいきません。ただ英語ができる学生よりもよく物を考えている学生の方が(教官もそうですが)研究者としての魅力がありますし、伝えたいことや知りたいことがあれば、そこで英語が必要であればそれまでのこと。
by stochinai | 2007-05-30 23:59 | 科学一般 | Comments(3)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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