5号館を出て

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件名のないメール

 FPNに、「『件名なし』のメールを『常識』とする若者たち」という記事がありました。私は携帯メールは使っていないのですが、普通のコンピューターを使ったe-メールで携帯から発信されるメールとやりとりしていると、携帯から送られてくるメールには件名のないものが多いことは気になっていました。件名がないと、ウイルスやスパムメールとしてはじかれてしまったりもします。

 記事では、10代の若者が友達同士でやり取りする時には、「件名なし」がフツーの世界になっていると書いてありますが、私のところに10代の若者からメールが来ることはほぼ皆無であるにもかかわらず、携帯からくるものには件名のないメールは多いと感じられます。件名がついてくるものもあるので、機能としてできないわけではないことはわかるのですが、携帯だと抵抗なく件名なしメールを送れるということなのでしょうか。私がコンピューター上で使っている秀丸メールなどは、件名なしでメールを送ろうとすると、「件名がありませんが、それでも送りますか?」というメッセージが出て、件名のないメールの存在は例外的なものであることを指摘してくれます。携帯メールではそのようなマナーを促す機能あるいは「文化」はないのでしょうか。

 考えてみると、メールに件名をつけるということはいかにもビジネス・マナーではあると思います。昔、研究を始めた頃にアメリカ人と手紙でやり取りすると、たいていメールの最初に「RE: your request」などという件名が付いていて、中味を全部読まなくても何について書かれている手紙かわかるようになっていて、「これは合理的なやり方だ」と感心した記憶があります。また、そういう「ビジネス・レター」には多くの場合、「CC: Prof. Edward Skipbird」などと、同じメールのコピーが他の人にも送られていることが明示されているものでした。

 今、我々が使っているe-メールはこのアメリカを中心とするビジネス・メールの様式が受け継がれているので、私にはなじみやすかったのですが、もともとビジネス・メールなどというものになじんでいる人が少なく、しかも携帯「電話」から拡張していった携帯メールの世界が、西欧のビジネスメールではなく、いかにも日本的なそこはかとない「文(ふみ)」の世界がデジタル化されたものであると考えると、件名がないことや、あったとしてもそれがそのまま本文へと受け継がれていく文の頭だったりすることも、特に驚くべきことや嘆かわしいことでもないのかもしれません。

 携帯から送られてくるメールでは、件名がないだけではなく署名がないものも多いと感じられます。署名がなくとも、送信者のところにアドレスの他に「送信者名」が記載されていればわかるのですが、それすら

 tomato_314_suttokodokkoi_dayo@docomo.ne.jp (架空)

  などと、送信者を推定することすらまったく困難なほど楽しいものだと、お手上げです。

 この状態で、記事にあるように本文が「昨日、休んだのですが講義の資料をください」などとしか書いていない場合には、どうしたものかと一瞬悩みます。もっとも、こういうメールが来た場合には、私は巨大な講義資料のファイルを添付して「あなたはどなたでしょうか。昨日の講義とは、どこで誰に対して行われた何という講義かわかりませんので、手許にある資料を数点お送りします」という数百キロバイトのメールを送り返して楽しむことにしていますので、特に困ったり腹が立ったりしているわけではありません。

 もちろん、これは意地悪だけでやっているわけではなく、「あなたの意図はこの方法では通じない」ということを教えるための、教育的措置としてやっているわけです。しかし、メールというものが様々な局面で使われるコミュニケーションツールである以上、最低限のルールは個々人のリテラシーに期待するだけではなく、ソフト・ハード・システムとしてサポートされることが望まれます。

 要するに、携帯のメールでもデフォルトで、発信者の名前と件名くらいは挿入されて叱るべきではないでしょうか。できれば、最初の「***の**です。」と最後の「署名」も入れて欲しいところです。何も考えないで送った場合には、様式に則った丁寧なメールが送られてしまって困る人はそんなに多くはないと思うので、携帯を作っている会社には是非とも検討をお願いしたいと思います。いつも、そういうメールをやり取りしていると、だんだんとマナーも身に付くものだと思います。

 「今時の若者は」とだけ言っていても、何も解決しませんです。
Commented by Sola at 2007-08-27 23:59 x
携帯はメール送信時に件名がないことを警告しないですね…。そのまま送信できてしまいます。
署名を付ける機能はありますが、以前の「パケット従量制」の余波と「画面が小さいため署名を付けると却って見づらくなる」せいか、付けないようです。
また、アドレス帳に登録されていれば、送信者欄にアドレスしか入っていなくても自動的に発信者が分かるようになっていますから、送信者欄に送信者の氏名を付ける機能も「オプション」です。

うちの社内でも「○○さんへ」というタイトルのメールや「○○担当者各位」というタイトルのメールが氾濫しています。
先日、社員からの意見を募る書類の提出を求められたので「タイトルは内容が分かりやすいように付けるよう全体に徹底すべきだ」と書いたのですが、果たしてどう扱われたのやら…。
Commented by inoue0 at 2007-08-28 05:52
 かつて、予備校で小論文の指導を受けたときに、タイトルは「~について」ではなく、「~すべき」「~を支持する」のように、結論を簡潔に書けと言われました。結論を最初に持ってくることで、腰が据わって、論理的文章を書きやすくなるのです。
 メールのタイトルも同様で、用件を伝えたいなら、まず、それを凝縮したタイトルを考えるべきなのです。なぜそういうことを言いたいかを説明するために本文がある。
Commented by piyo その1 at 2007-08-28 20:20 x
pcのメールよりも先に携帯メールに出会った世代(26歳)です。

どちらもフォーマットとしては同じ「電子メール」ですが、その使われ方は相当異なるのではないでしょうか?
携帯メールでは、
・見ず知らずの相手を想定して送ることはまずない
・アドレス帳の機能により、誰からのメールであるのかがメールを開く前にわかることが多い
・pcメールよりも返信までのスパンが短く、文語というより口語でのやりとりになりやすい(チャットに近い)
などの特徴があり、pcメールとは違った独自の文化が築かれるのだと思われます。件名を付けないことに頓着しないということも、特徴の1つであるかもしれません。(現役若者世代としてそういう実感はあります)

私の場合は、研究室に配属され、pcメールによる研究室内外の連絡や、共同研究先の企業の方とのやりとりを通じ、pcメールの文化といいますか書式のようなものを学びました。
Commented by piyo その2 at 2007-08-28 20:24 x
話題になっているような若者の話では、携帯メールには慣れ親しんでいるものの、pcメールを使う経験が乏しいことが原因であると思います。メール作法がなっていない若者が増えているというのは、携帯メールの普及が関連しているのは明らかでしょう。しかし彼等の経験の乏しさを責めても仕方ないことですし、なってないものは教育するしかないだろうと思います。

私が疑問なのは「最近のメール作法がなってない若者」以前の世代の若者はきちんとメールが書けていたのだろうか?ということです。携帯メールもやったことがない、pcメールもやったことがないという状況なので、まずメールの送り方を教育される機会があり、その時に件名云々の作法も同時に教わるので、今のような状況にならなかったということでしょうかね?そうだとすれば、今問題になっている世代は、メールというフォーマット自体は使えるので、作法の教育を受けることなくメールをじゃんじゃん送ってしまっているという説明ができるかもしれません。

乱文失礼致しました。
Commented by Sola at 2007-08-30 00:39 x
piyoさん>
わたくし、日本での「ケータイ」黎明期の世代のものです。
なにしろ「ケータイ・PHSを持って自宅には有線電話を引かずネットは大学でやる」か、「家に有線電話を引いて自宅のパソコンでネットをする」かが大学生の電話にかんする選択肢だった世代ですから…。
うちの大学では「情報処理」が必修で、メールの送り方も1から指導されました。大学に入ってから初めて<コンピューターにさわる(ネットの各種サービスを利用する以前に)>という人がざらにいたくらいです。
メールに関しては、「タイトルには本文の内容を簡潔に」から始まって、当時はまだ日本語をまともに扱えるメールソフトがあまりなかったので「タイトルは日本語で書いてはいけない」「メールの本文やウェブサイトの内容に半角カナを用いてはいけない」というところまで指導されていました。
最近は「高校で習ってるでしょ」ということで大学ではあまりちゃんとやらないようです。高校でちゃんとやってるかどうかが怪しいところですが。
Commented by phallusia at 2007-08-30 22:37 x
この記事を読んでふと思い出したのですが,初期の携帯メールはEメールとは別物の,同じキャリアの携帯へしか送れず,数十文字しか入力できない&件名も入れられないサービスでした。現在の携帯メール文化がその延長線上にあるのだとすると,件名なしのメールが多いのもやむを得ないような気もします(良い悪いは別として)。
確かに私も同一の友人にメールを送る際,携帯からとPCからとでは書式が全く異なってしまいます。。。
Commented by 海外PD at 2007-08-31 00:07 x
大学に入ってからメールが使われ始め、
メールの授業などはない世代ですが、
当時は携帯メールのようなものはなく、
電子メールはその名の通り、手紙の代わりでした。
なので、「拝啓」から始まって、「敬具」で終わるような
メールを普通に書く人もいましたよ。
お手軽さが認識されるにつれ、そういった手紙の礼儀作法は
徐々にフェードアウトしていったような気がします。
逆に、それ以後の世代の方々は、はじめから手紙と
電子メールは完全に別物という考え方だったということなんでしょうね。
by stochinai | 2007-08-27 22:28 | コンピューター・ネット | Comments(7)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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