5号館を出て

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やっぱり選挙

 アメリカ大統領選挙は、ギリギリになってまた前回のようにもつれ込むかと思われましたが、ケリー陣営の賢明な判断で泥沼状態は回避されたようです。ビン・ラデン(ちょっと前までは、ビン・ラディンと発音する人が多かったようですが、最近はビン・ラデンと発音する人が多くなっていますね)の応援演説や、選挙直前にオハイオやフロリダで大量の選挙人が投票者名簿から削除されたなどという開発途上国のようなニュースを振りまきながらも、no more Bushではなくfour more yearsが達成されたようです。

 まあ、私個人の感想ですがアホなブッシュがもう4年やろうが、力のないケリーがやろうが、アメリカという国の方向性はそれほど変わらないだろうと思いますので、正直なところそれほどの感慨はありません。

 選挙民の選択にしても、全体で51%対48%とか書いてありましたので、アメリカ国内にとっても、どちらになっても状況はそう変わらないのだと思います。

 それよりも、今回のアメリカ大統領選挙で感じたことは、こんなに拮抗状態が激しい中で、国全体の舵取りをどちらかの人間に任せるという結論でいいのだろうか、ということです。今のアメリカでは、民主党も共和党もそれぞれの政策にそんなに大きな差がないことから、このような結果になったのかもしれませんが、それでも例えば妊娠中絶などに関しては、賛成と反対に分かれているようです。

 国のほぼ半分が賛成し、残りの半分が反対している事柄を、選挙で決まったからといって、どちらかの政策を実行するということは、約半分の国民の意思を完全に無視することになってしまいます。これで良いのでしょうか。

 というわけで、接戦の大統領選挙を見ていて感じたことのひとつは、もはや代表制の民主主義というものが政治を運用していく上で機能しなくなってきているのではないかということです。

 日本の場合だともっとそうですが、例えば30数パーセントの人しか投票しない選挙で、さらに30数パーセントの得票で国政を運営する政府を運用する権利が与えられます。絶対数では、わずかに国民の1割くらいの支持で政権が取れることになります。たとえ、投票しなかった人も投票した人と同じような意見分布を持っていると仮定しても、国民の過半数の支持を得ない政党や政治家が国政運営に強大な権力を持ってしまうのが、代表制民主主義だと思います。

 現在は、価値観が多様化している時代です。たったひとつの政党が、権力総取りで政府を形成するという制度自体が問題とされなければならないのではないでしょうか。

 私は昔から、直接民主主義だけが本当の民主主義だと思っていますので、少しでも理想の民主主義に近づけようと思ったら、やはり小さな政府、地方分権政治が良いと思います。

 確かに、小さくわけてしまうと大きな軍隊や大規模な交通網整備などは難しくなるかもしれませんが、そんなものが本当に人を幸せにしてくれてきたという証拠があるのでしょうか。

 大きなアメリカで、1億2千万人もの人が投票して、たったひとりの人をほんの少しの差で選び出した大統領選挙に対して、バベルの塔を作った愚かな人間の所業を思い出したのは、私ひとりではないと思いたいところです。
by stochinai | 2004-11-04 17:54 | つぶやき | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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