5号館を出て

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若者の**離れ 

 我々の業界で、子どもや若者の「理科離れ」ということが朝晩のあいさつのように語られた時期がありました。今でも言っている人がいるかもしれません。遊んでいる子どもたちが昔と同じようにあらゆる自然に対して興味をもっているところを見たり、テレビなどで科学番組がたくさん作られているのを見ていると、私は実感として理科離れを感じることができませんでした。今でも、少なくとも怪しげな「教育」を受けるまで、子どもたちは間違いなく自然が大好きなことを確信できます。

 ただし、現実問題として理系の大学に進む若者が減っていたり、技術職を目指す若者が減っているということがあるのだと言われると、それはそうなのかもしれないと思います。しかし、それは理科離れというよりは、理系の職業選択をする若者が減っただけだと思っています。なぜ、理系の職業を選ばないかというと、単純に損だと感じるからではないでしょうか。

 同じようなロジックで、「若者のクルマ離れ」という言葉を聞いた時には、とても驚きました。自動車などの乗り物を好きな子どもや若者(特に男の子)は昔と同じようにたくさんいます。コンピューターゲームが多くなってきたということはあるのかもしれませんが、男の子のおもちゃの中で自動車はいまだに不動の地位を保っているはずです。

 この時に言われている「クルマ離れ」というのは、要するにクルマが売れなくなって自動車産業が困っているという泣き言にしか聞こえませんでした。なぜ、クルマが売れないのかって、調べるまでもないことだと思います。若者の多くが、ワーキングプアと呼ばれる低所得層に追いやられている現実の中で、クルマを買うなどという選択は誰が考えても、あり得ないことです。

 そして、ゴールデンウィークの前後には「若者の海外旅行離れ」などという言葉まで飛び出してきました。お金と暇さえあれば、海外旅行をする若者の数など簡単に跳ね上がります。

 若者に十分な所得を売る得るチャンスを与えずに、ただものが売れないと嘆く企業人達はいったいどこに目をつけているのでしょうか。

 同じように、今大学院では「若者の博士離れ」という言葉が生まれようとしています。

 この「**の**離れ」という言葉を聞くたびに、その発信源となっている人々の傲慢さと鈍感さをいつも感じてしまいます。若者はあなた達を儲けさせるために存在しているのでもないし、その人達が売ろうとしているものが、たとえ相対的だとしてもその時点における彼らにとって価値がないものだと判断されているだけのことを、あたかも若者達が変化したことに問題があるかのごとくに言っている限り、問題は解決しないような気がします。

 嫌いな言葉です。
by stochinai | 2008-05-11 23:59 | つぶやき | Comments(0)

日の暮の背中淋しき紅葉哉            小林一茶


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