5号館を出て

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アジサイによる食中毒と遺伝子組み換え根粒菌

 アジサイには青酸系の毒があるということは、知識としては知っていたのですが、アジサイの上をはうカタツムリが時期としては定番の図ですし、どのくらい毒なのかということについて実感したことはありませんでした。アジサイの剪定をしたりすることはしょっちゅうありますし、そんな時に特に注意をしたことなどありませんでしが、やはり食べると中毒になるのですね。驚きました。

 茨城・つくば市の料理店で出されたアジサイの葉を食べた客8人が食中毒
 「食事の直後に嘔吐(おうと)、吐き気、めまいなどの症状を呈されました」と話した。客8人が突然、めまいなどを訴え、2人が病院へ搬送されたが、いずれも快方に向かっているという。
 食中毒を引き起こしたのは、店舗の裏庭に生えているアジサイの葉だった。料理に彩りを添えるため、アジサイの葉を飾っていたという。8人はこのアジサイの葉を食べ、食中毒になっていた。

 東京聖栄大学食品学科の眞木俊夫准教授は「(青酸は)量が少なければ、吐き気、嘔吐、下痢くらいですむのですが、あまり濃度が高いと、死に至るということもございます」と説明した。
青酸配糖体を含むアジサイの葉は、胃液などと反応すると、毒性のある青酸が生成される。
 料理店では食べることを想定していたわけではないかもしれませんが、おそらくアジサイに毒があることは知らなかったのでしょう。営業禁止は妥当な処分だと思いますが、最近流行の創作料理店などでは、見た目の美しさや奇抜さを競うあまり、ついついこうした定番では使わない食材や、器としての葉を使うことにがあるのではないでしょうか。山菜やキノコで中毒になるのは自己責任ですが、料理店で出したもので中毒になったら傷害罪になってしまいます。

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 この事件とはまったく関係がないのですが、「デーヴィッド・アイク(David Icke)の情報」という「デーヴィッド・アイク(デービッド・アイク)のサイトのヘッドラインの一部を紹介」してくれるという便利なブログで、ちょっと気になるニュースを見かけました。

 農業用GMバクテリア 遺伝子操作の細菌が北アメリカに侵入

 元記事はこちらにある、GM Microbes Invade North Americaです。

 我々の研究室でさえ行わている普通の遺伝子実験では、バクテリア(細菌)にいろいろな動物からとった遺伝子を導入して研究するのが普通なのですが、この遺伝子を導入したバクテリアは実験室の外には決して出さないというのが実験の鉄則です。それがルーズになっている大学などが処分を受けたりというニュースは時々出ますが、それでも遺伝子組み換えをしたバクテリアを「外に逃がさない」ということはあまりにも当然のことだと思っていました。

 ところが、この記事を読むと遺伝子を組み換えた根粒細菌などが、1997年から実際に農業生産の場で使われているということです。空中の窒素を固定して植物に渡してくれる根粒細菌の優秀なものがあれば作物生産に多大な貢献をすることは疑いないことなのでしょうが、遺伝子組み換えをした根粒細菌が開放された農地の土壌中にあるということは、もう人間のコントロールが不可能であることを意味すると思います。

 他にも、植物の病気をコントロールする働きのある遺伝子組み換え細菌とか、害虫を殺す遺伝子組み換え細菌なども開発されているようですが、細菌の生産物を使用するために細菌を殺してから畑にまいたりする場合には、特に遺伝子組み換え細菌だからという危険性はないと思います。

 しかし、根粒細菌は生きたまま土壌中に散布されなければ意味がありません。さらには、これらの細菌には遺伝子組み換えの過程で利用されたストレプトマイシンやスペクチノマイシンという抗生物質に耐性になる遺伝子まで導入されているということの危険性も指摘されています。こうした抗生物質耐性遺伝子が、なんらかの方法で人畜に有害な細菌に取り込まれると抗生物質の効かない細菌ができてしまう可能性があるからです。

 北アメリカの土壌中に遺伝子組み換え細菌がいるということは、遅かれ早かれ世界中に拡散することになると思われます。目に見える大きさの大豆や小麦やトウモロコシなどだと遺伝子組み換え作物を発見・除去することも不可能ではありませんが、まき散らされた遺伝子組み換え細菌は発見することはできても、撲滅することはできないでしょう。

 私は、農業などの有益細菌の遺伝子組み換えのことはほとんど無知だったのですが、このことはちょっと気にしておかなくてはならないと思わせられる記事でした。

 どこかに錯誤などがありましたら、指摘していただけると幸いです。
by stochinai | 2008-06-23 22:10 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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