5号館を出て

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すぐに値段の上がる石油と値段の動きにくい農水産物

 一昨日、日本中で20万隻という漁船が一斉に休漁というストライキを行いました。漁船用の燃料の高騰とそれにもかかわらず漁獲物の値段がほとんど上がらないことで、生活ができないというギリギリのところでの行動だと理解できます。

 日本中で1日、水産物が獲れなかったら、水産物の値段は暴騰しても仕方がないと思いますが、意外なほどそういうニュースが聞かれません。追いつめられた漁民の行動にもかかわらず、製品の値段はあまり動かなかったということは、ストライキが有効に働かなかったことを意味します。

 なぜ、こういうことになるのでしょうか。石油製品であるガソリンや石油は、元売り価格が上がるとその日のうちに連動して末端価格も動きます。その被害をまともに受ける、燃料を使う船や自動車を使って仕事をしている人々の収入が連動して上がらないのは、そこにとても不公平な価格決定システムがあるからでしょう。経済のことなど、ほとんどわからない私でも、それはおかしいと直感的に感じることができます。

 グローバリゼーションの名の下に、農畜水産物が外国から大量に流入するようになり、さまざなまものの値段も下がりました。(同時に、食の危険も輸入してしまっているということはありますが、それは値段とのひき替えで当然のリスクとも言えます。)そのことは、一見われわれの生活には良いことのように思われましたが、農畜水産で生計を立てている人には非常に苦しい状況になったのだと思います。

 農畜水産物の自由化で、いきなり日本の農民・漁民が生産放棄するところまで追い込まれてはいけないということで、おそらく補助金でなんとかつなぎとめているところもあるのだと思いますが、昨今の燃料高騰はその補助金をもってしても支えきれないくらい農民や漁民を追いつめてしまったということだと思われます。

 原油が値上がりすると、石油製品の値段はすぐに上がるのに、農産物や畜産物や水産物の値段は上がらないのでしょうか。輸入している農産物・畜産物・水産物の値段はじわじわと上がっているのに、国産のものを値上げすることが難しいということなのだとしたら、日本における製品の値段の決定方式に問題があると思わざるを得ません。

 石油や電力は明らかに少数の大会社が、(政府の庇護のもとに)独占して価格を決定し、殿様商売をしています。一方、外国製品との競争にさらされている、農畜水産業者は小規模な組織で商売をしている人が多く、それを仲買する大手の販売組織に逆らうことは難しそうです。

 仲買業者は、我々消費者の意見をくみ取って、農畜水産物の値段をそんなに上げることはできないと言っているようですが、それはほんとうに我々消費者の意見なのでしょうか。消費者には、安全な食品を安定して供給してもらえるならば、多少の出費は覚悟しなければならないと思っている人が増えていると思います。

 そう考えると、この国でいろいろなものの価格を取り仕切っている、大手の独占的産業が諸悪の根元という気がしてきます。

 石油や電力なども、農畜水産物と同じように国際的自由化してはどうでしょう。それは、日本の安全保障上難しいというのならば、農畜水産物の理念なき自由化も安全保障上危険なことではないでしょうか。さらに、その値段を操る大手仲買業者の存在もうさんくさいものです。

 もはや、日本全体の物質の流通体制全体を見直す時ではないでしょうか。それを、実行するためには、今の政府では全然ダメで、ひょっとすると民主党でもダメなのかもしれません。一部の人間だけが特をする、都合の良い「構造改革」ではなく、日本全体の「構造改革」をしなければならないことだけは明らかだと思うのですが、ではどうやってということになると頭を抱えてしまいます。

 どうしたら良いものでしょう?
Commented by household at 2008-07-17 23:48 x
おっしゃるような価格の動きのかなりの部分は買い手の値段に反応する程度に応じて生じています。代替物が多くあるものについては値上がりしにくいでしょうし、代替物が少なければ値上がりしやすいです。独占的産業や政府の責任にするのは簡単なのですが、それでは解決しないことも多いと思います。
Commented by kuma at 2008-07-17 23:51 x
台風がくると何日も出漁できないということがよくあります。ですから一日くらい一斉休漁しても大丈夫なのだと思います。
Commented by 通りすがり at 2008-07-18 19:08 x
後段の構造改革が必要だ、との部分については全くその通りだと思います。

ただ、前段部分はどうなのでしょうか?ニュースには必ず表があり、裏があります。今回の取り上げ方にしても、庶民感情に訴える部分のみを切り取って、取り上げているように思われます。
例えば農業漁業関係には大規模資本企業というものが存在していません。そういう組織は効率経営という部分ではメリットもあるはずですが、存在しないのは何故なのでしょうか?逆に既得権益として「一部の人間だけが得をする」システムが存在しているとも言えるのではないでしょうか。
石油や電力業界の構造改革も必要であり、農漁業の構造改革も必要であり、またその他にもいっぱい変えるべき部分があるという点で日本全体の構造改革が必要なのだと感じます。
Commented by kuma at 2008-07-20 08:15 x
2つ上のコメントが言葉足らずだったかもしれません。
要するに,もともと天候に左右されやすい漁業の場合,1日2日の不漁,入荷ストップで価格が大幅に変動しないシステムがあるということです。ですからそのこと自体は別に驚くことではありません。

今回の一斉アピールは,石油代よこせ補助金よこせのストライキなのでしょうが,今回の事態を別の意味で受け止めて,魚の価格決定システムに関心をもつことは大切だとは思います。
by stochinai | 2008-07-17 21:50 | つぶやき | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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