5号館を出て

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生物の合目性

 ばかぼん父さんのエントリー「生物」の原則で、「生物」についての感想を述べておられます。

 「生物分野は、なじみの少ないモノの名前が多く出てくるので、暗記モノと思われがちだが、実は一貫した大原則が存在している」という視点は、生物学をやっているものとしては、とてもありがたいものです。

 暗記物などと言われていたのは、生物学をきちんと理解していない受験生と、生物学を理解していない出題者がたくさんいた過去の物語だと思っています。

 もちろん今でも、そうした過去を引きずっている例はたくさんあるのだと思いますが、少なくとも生物学の学問の現場では、進化の原則はかなり普遍的なものとして理解されるようになってきています。

 「生物の身体は環境に適応するように長い時間をかけて進化してきているから、合目的にできている」という感想は、そんなに間違っているとは思わないのですが、合目的にできているはずの生物のからだがいろいろな不都合を持っていることもまた事実です。

 たとえば、直立して2足歩行するようになったヒトが、そのために腰痛や難産を抱えるようになったのは、どうみても良いことばかりの「合目性」だけでは説明できません。同様に言葉を話すようになったヒトが、喉の奥で気道と食道を共有しているために、お年寄りが餅を喉につまらせてしまう事故が起こるようになっていることも困ったことです。(言葉を話せないチンパンジーや赤ちゃんはものを食べながら息をすることができます。)

 「その仕組みがいつ頃出来たのかによって違うので、ややこしいことになる。そのややこしさが『面白い』」という指摘はまさに生物学のおもしろさを言い当てているのだと思いますが、そのおもしろさを楽しむことと、試験で正しく答えることが同義ではないことが悲しいことです。

 技術的には「素直にありのままを見て、どうしてだろうと考えれば、正解になるようにできている」という現実の試験問題に対する対策もそこそ事実でしょうから、まずは試験をクリアしてもらってから、その先で生物学を楽しんでもらえれば文句はありません。

 でも、やっぱり試験が学問をゆがめていることは否定できませんね。困ったもんだ。
Commented by bakabon_chichi at 2005-03-03 18:09
TBありがとうございました。
進化について全てが「合目的」とは限らないというのは、私も思っています。
これについては、改めて書きたいと思います。
試験対策についての最後のコメントも、そのように読んで欲しかったので、
大変うれしい記事でした。
加筆して、こちらからもTBさせていただきました。
Commented by stochinai at 2005-03-03 20:17
 丁寧なTBをありがとうございました。

 bakabon_chichiさんも生物系なんですね。私もそうなので、これからはいろいろと議論をお願いできれば、と思います。

 よろしくお願いします。
by stochinai | 2005-03-02 22:35 | 教育 | Comments(2)

風わたり泥も乾きて春の草             嵐雪


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