5号館を出て

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癒しのノイズ

 今日は自宅の各部屋の使い方の見直しということで、大規模な模様替えをしました。その結果、どこにこんなにあったのかと思うくらいのゴミが出ただけではなく、しばらく隅に追いやられていた昔のオーディオ装置を表舞台に出すことができました。

 思い返せば、2年ぶりくらいになるのかもしれません。レコードに針を落としてみました。最初は、一番右側に立っていたという理由だけでCannonball Adderleyを聞いたのですが、最近はデジタル音源をiPodのヘッドフォンやコンピューターにつながった貧弱なスピーカーで聞くことが多かったので、パワーのあるアンプとでかいスピーカーでガンガン鳴らしてみて、レコードってこういう音だったのだと、改めて感動してしまいました。

 こりゃヤバイということで、他のものも聞こうと少し探してみると、偶然に先日取り上げたSomethin' Elseが出てきたので、じっくりと聞いてみました。

 音が出る前に予告のように聞こえ始めるテープのヒスノイズの合間に、ほんとうに久しぶりに聞いたスクラッチノイズ、ヒスやスクラッチの音ってこんなに感情に訴えかけてくるものだとは思いませんでした。というか、昔ちょっとオーディオをかじっていた頃は、どうやってこのヒスやスクラッチを低減させるかということに一所懸命で、こういう音が聞こえるということ自体が否定されるべき「敵」だったような気がします。

 当然、敵の音に愛情を感じるはずなどなかったと思うのですが、今日聞いてみて思わず涙が出そうになりました。雑音が心をかき乱すなんて。

 もうこれはいけません。はまりますね。

 というわけで、今は Miles Davis がロックに行く前にしばらくさまよっていたビッグバンドとの競演の時代に録音した、ロドリーゴのアランフェス協奏曲がはいっているマイルス・デイビスのスケッチズ・オブ・スペインを聞いています。
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 大学生から大学院生の頃に、Jazzを中心にたくさんのLPレコードを買いあさりました。その頃、将来は研究者になれるとも思っておらず、集めたレコードを流しながらの居酒屋か喫茶店をやりたいと漠然と思っていたような記憶があります。

 その夢はまだ叶ってはいませんが、そうした商売をするのでもなければこれだけのレコードをすべて聞くことのできるだけの暇な時間を死ぬまでに持つことができるかどうかという心配がよみがえってきました。

 幸いなことに、昔の几帳面さのせいか久々に取り出したレコードはどれも非常に状態が良く保存されていましたので、これからは少しずつでも頻繁に聞こうと思います。

 CDやメモリー上の音源は確かに簡便ですが、今味わっているようなレコードを聴くという儀式がない上に、懐かしのテープヒス・スクラッチノイズが無い分、情緒もまた少ないことも再確認しました。

 さらに、久しぶりに最内周で空回りするレコードの音にすら感動してしまいました。こういう気持ちって、若い人にはわからないでしょうね~。それで、いいんです。
by stochinai | 2008-09-23 23:49 | 趣味 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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