5号館を出て

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2005年 02月 07日 ( 2 )

 一週間ほど前に、環境省が「特定外来生物」として、規制する第一陣に37種指定というニュースがありました。輸入と移動が禁止されるということのようで、すでに国内にいるものを殺戮せよ、という法律を作るということではないようです。しかも、まだ決定したというわけではなく「同省が国民の意見を聞いた後、閣議で決定され、6月までに予定される同法施行時から適用される」とのことですので、国民ならば意見を述べるチャンスがあるようです。

 特定外来生物に指定が見込まれる生物として、挙げられている哺乳類としては既に駆除が始められているタイワンザルやアライグマがいます。特に駆除されているという話は聞きませんが、戦時中に政府が輸入・飼育が奨励されて「ブタのように大きなネズミ」として時々騒ぎになるヌートリアもいます。キョンなどは、八丈島の名物になっているので保護されていると思っていました。

 ガビチョウ、ソウシチョウなどは、どれもペットの小鳥とでもいうべきもので、もう野外で増えているのなら、まあ仕方がないかと思えてしまいそうなものです。

 カミツキガメ、グリーンアノール、ブラウンアノール、ミナミオオガシラ、タイワンスジオ、タイワンハブなどの爬虫類。トカゲ・ヘビは野生にいたらあまり歓迎されないでしょうね。

 オオヒキガエルは、戦後アメリカの進駐軍が持ち込んだと言われているもので、沖縄など南の島で繁殖しています。英語ではマリントード(海ヒキガエル)と呼ばれるように、海岸などの開けたところに住んでいるようですが、もちろん海水の中を泳げるわけではありません。そんな両生類はいません。(このことからも、サカナが両生類になって上陸したのは、海ではなく淡水だったと考えられています。)
 
 大きな問題になっているオオクチバス、コクチバス、ブルーギル、チャネルキャットフィッシュについては、在来の淡水魚を圧迫しているので、輸入・移動だけではなく駆除という方向に動いている自治体も多いようです。タイミング良く、今日のニュースで、琵琶湖・外来魚の再放流訴訟:原告の訴え却下「リリース禁止」と出いうのがありました。清水國明さんは負けてしまったようです。滋賀県の制定した、琵琶湖ではブラックバスやブルーギルなどの外来魚を釣り上げた場合にリリースを禁止するという条例は適法であるという判決です。まあ、このサカナはどれもどう猛で肉食であり、積極的に日本在来のサカナを食べていることもわかっているので仕方がないとは思います。

 こうして見てみると、輸入や移動を禁止したところで、すでに国内で自然に繁殖しているものが多いようなので、積極的に減らすためにはまた別の条例や、政策が必要です。特に大反対という意見を持っているわけではないのですが、私は動物や植物の分布を人為的にコントロールしようという思想には、諸手を挙げて賛成とは言えない立場です。もちろん、専門的に生態学などの研究をしている方々が、在来の生態系を保護すべきであると主張する意見も理解できます。

 しかし、その「在来の自然」と言ったところで、せいぜいが数十年から数百年前のものではないでしょうか。人類が誕生してからは、この地球上の生物分布は人類の営みによって変化させ続けられてきたと思います。食糧として捕獲・採取・減少させたものはもちろん、家畜やペット・農作物として移動・増殖させたり、あるいは意図せずして運んでしまったものなど、人間による生態系の「攪乱」は何万年も続いてきたのだと思います。

 もちろん、ごく最近になって明らかに人がかかわって分布域を変えただけではなく、在来種の存在が脅かされていることが明らかな場合に、その「失敗」を補うための政策を取ることには反対しません。根絶と旧生態系の回復はとても無理かな、と思っても止めろとは言いません。ただちょっと気になるのは、人間の浅知恵で「こういう生態系が理想的なのだ」などと短絡的な結論を出して、突っ走ることをやってしまわないかということです。

 たとえ、人間が介在していたとしても、地球生態系というものは「なるようにしかならない」部分が大きいのではないかと思います。それを、管理しきれるという思想があるとしたら、それこそが人間の傲慢かもしれないと思います。たとえ外来生物がはいっていたとしても、まずは研究すること、そしてどのくらいまで人間が手を出していいのかをみんなで検討しながら、少しずつ手を入れていくというのが、「自然」とのつきあい方ではないかと思っています。

 ご意見をお聞かせ下さい。
by stochinai | 2005-02-07 20:40 | 生物学 | Comments(7)

教師の拡大再生産

 昨日は、月遅れの新年会に参加してきました。

 主催は、札幌を含む北海道石狩管内の小中学校の先生を中心にした小さな理科サークル」(理科教育の自主学習グループ)です。しかし、いざ集まってみると、理科関係者ばかりではなく、社会科の先生や先生未満の人や、高校の先生や大学関係者など、理科サークルという名前ではくくりきれない人々の集まりです。(ここや、ここが、関連サイトです。ここもそうでした。)

 初等中等教育の理科(おそらく理科だけではなく、社会や体育などでもそうなのだと思いますが)を突きつめていくと、理科だけでは完結せず、様々な教科とクロスオーバーしてくるというのが自然な流れであるということが、このサークルの活動の中から出てきた一つの大きな成果だと思います。この「理科サークル」に様々な人(教育関係者以外も参加するようになってきています)が参加しているということが、「理科教育」の進むべき方向の一つであることが、実践を通じて明らかになってきているという確信もあります。(そういう意味で、生活科とか総合的学習というものの方向は間違ってはいなかったと思うのですが、文科省が早々に撤退しそうな雰囲気になっていることにはまったく失望します。)

 私がこのサークルと知り合ったきっかけは、検定教科書では体系的な教育ができなくなったことを受けて、2年くらい前に左巻健男さんが中学校の新しい理科の教科書を作ろうとウェブで呼びかけをしていたことに始まります。

 その頃、私もしばらく大学で教えていて、入学してくる学生が年を追うごとに、科学全体(つまり理科)を体系的に理解していないことに危機感を感じていたところでしたので、教科書作りのお手伝いをしたいと思い検討委員として参加させていただきました。その結果作られた「新しい科学の教科書」は完全なものとは言えませんが、絵本のようになってしまった中学校理科の教科書に比べると、はるかにまともなものだと思います。(#その後、高校生物の教科書も作り直さなければならないということで、そちらのお手伝いもさせてもらっていますが、こちらも春には出版されます。)

 メーリングリストを通じて教科書作りをしていた時には、あまり意識していなかったのですが、北海道の理科の先生方がその教科書作りで中心的役割を担っていました。同じ北海道に住む人間としてとても嬉しいことだったので、左巻さんが札幌に来た時に行われた懇親会で、活動の中心となっている理科サークルWidsom96のメンバーを紹介していただき、さらにメーリングリストにも入れてもらいました。

 Widsom96は主要な活動として毎月の例会と不定期の会を開いていますが、私はそちらには出ず、メーリングリストと懇親会(飲み会)だけに参加する不良会員です。

 今年始めての飲み会ということで、参加させていただいた昨日の新年会ではいろいろな話を楽しく聞かせていただいたのですが、もっとも興味深かったのは教育大学4年生で教員志望のWさんを巡る話題でした。昨日の会には、Wさんが中学生の時にその学校の先生だった方が二人もいらっしゃいました。Wさんが中学校の修学旅行の時などに経験したつらい思い出や、荒れる中学校の様子などについて、生徒側と教諭側の目から見ての話を聞かせてもらい、とてもおもしろかったです。

 それよりなにより、中学校の時の先生と生徒が今まさに同僚になろうとしつつある瞬間に立ち会わせてもらっている気がして、感慨深いものがありました。さんざんつらい思い出のある学校に戻って先生になろうということは、Wさんが子ども心に見た先生の姿を受け入れ、自分もそうなりたいと思ったということだと思います。もちろん、今日の結果を意図してそうなったのではないと思いますが、教え子が教師を目指すということは、自分のやっていたことが肯定的に評価された最高の栄誉であると思います。

 教師というものはこうやって再生産されていくのだと思いました。文科省あたりも貧困なアイディアを集めて、優秀な教師をどうやって集めようかと考えているのかもしれませんが、なにも難しいことはないという気がしました。優秀な教師の元からは、教師志望の子どもがたくさん育ってくるのです。私の偏見かもしれませんが、そうやって小さいときから教師を志望している人の多くは優秀な教師になると確信します。他の職業もそうかも知れません。小さいときから抱いた夢を、できるだけたくさんの子どもたちに実現させてやれる社会というのは、素敵だと思いませんか。

 残念なことにWさんは今年度、志望していた小学校の教員採用試験に合格することができなかったそうですが、春からは元の先生と同じ学校で臨時教員として働けることになりました。考えようによっては、願ってもない実践的研修期間をもらったようなものです。なんとか頑張って来年こそは試験を突破して欲しいものです。
by stochinai | 2005-02-07 01:26 | 教育 | Comments(2)

日の暮の背中淋しき紅葉哉            小林一茶


by stochinai