5号館を出て

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2006年 01月 20日 ( 1 )

【追記】
 時事を考えるブログで、ブルーバックス4科目分まとめて書評が出ております。是非ともご参照ください。

【本文】
 1月20日の予定でしたが、昨日19日に更新された講談社BOOKS倶楽部のブルーバックス・ページにはすでに新刊として載っています。一部には21日発売という情報もありましたが、私のところへも昨日19日に実物が届きました。そろそろ店頭に並び始めていると思います。

 講談社ブルーバックス「新しい高校生物の教科書」が「新しい高校化学の教科書」と同時発売になりました。

 出版に参加させてもらって良くわかりました。やはり、講談社ブルーバックスは並みの本ではありませんでした。私は今までにも、一般の方を対象にした生物学関係の日本語の文章は何度か書いていますが、複数の著者で書く本の編者になったのは初めてでそれはそれで大変でしたけれども、それに加えてこれほどまでに読者を意識させられて何度も何度も書き直した(直させられた)ことも初めてでした。

 私が単行本や定期刊行物に書いたことのある生物学関連の日本語の文章が、特に金銭的契約を伴わないボランティア的なものである場合には、これこれこういう対象に対して、こんなような内容に関連したものをお書きくださいと依頼されることが多く、その場合にはこちらが書いたものはなんのチェックも受けずにそのまま印刷に回されることが多かったと思います。ゲラのチェックすらないこともあり、いわば書き捨てのような状態と言えます。

 専門の研究について書く場合もほぼこのパターンです。こちらは必ずゲラが伴いますが、ゲラのチェックは著者に任されます。複数の著者で書く場合には編者がいることもありますが、多くの場合は著者を選定することくらいしかせず、原稿のチェックがあることの方が例外的です。

 原稿依頼という形で原稿料が発生するものでも、専門の研究に関連した内容のものを頼まれる場合には、ほとんど原稿のチェックは受けません。原稿を依頼される時に、高校生が読んでもわかる程度の言葉と言葉遣いをお願いします、というような程度の「規制」をかけられることはありますが、それとて厳密に守ることが要求されるわけではなく、かなり自由が保証されます。

 実は、私が今まで書いてきた日本語の文章はほとんどすべてがこうしたものであり、原稿を細かくチェックされるというような経験をしたことは事実上ありませんでしたが、2年ほど前に複数の著者で書いた「ヒトの遺伝の100不思議」の時には、著者同士でかなり厳しく査読と批評をし合った記憶があります。思い返せば、出版社の編集の方からも日本語としておかしいところや、想定する読者のレベルでは理解されないあるいは誤解を招くような表現を指摘されいろいろと勉強になった記憶はありますが、それとて今回ほど厳しく指導された記憶は残っていません。

 「新しい科学の教科書」の中学校版の大成功を受けて、左巻さんが高校の教科書と小学校の教科書も検定外で作ることを提案して、高校はブルーバックスで物理・化学・生物・地学の4冊を出そうということになったのが、もう3年も前のことになります。当時、高校の学習指導要領も変わり、その3年後には新しい学習指導要領で教育を受けた高校理科の基礎ができていない学生が大学に入ってくる「2006年問題」への対応ということもあり、学習指導要領に基づいた検定を受けない「教科書」の存在意義は大きいと思っていました。名前は「高校教科書」ですが、私としては大学にはいってから、あるいは社会に出てからでも学び直しをするために使えるものを作りたかったのです。

 左巻さんのプロジェクトですから、例によって著者は公募ということになりました。私は、中学校教科書の時には検討委員として生物系分野の原稿査読に強力させていただいていたのですが、高校の教科書ならば書けそうだと思い応募しました。著者に応募する条件として、教科書全体の構想を求められていた記憶があり、私は今でも念仏のように唱えている「進化を縦糸に、多様性を横糸に」体系化した生物の教科書を作りたいと提案したところ、左巻さんからお前は編者もやれと言われて今日に至ったというわけです。それから3年経ってようやくの出版です。

 話をもとに戻しますが、ブルーバックス高校生物の編集を担当してくださったのが、講談社のTさんと今は社外嘱託で元講談社社員のNさんのコンビでした。お二人とも分野によっては我々著者よりも生物学に造詣が深く、もちろん中学生程度のリテラシーで読み解ける文章を書くという点においては文字通り我々を指導する立場になる方です。このお二人に担当していただいたことは、生物班にとって幸運だったと思います。

 お二人は、あくまでも著者である我々の立場を(必要以上に?)尊重しながらも、毅然としてしかしとても根気強くダメ出しを続けてくれました。これが、この本が今日店頭に並ぶようなしっかりとした形にでき上がった原動力だったと今でも確信しています。本を作るに当たって「これが本当の編集だ」というものを見せていただき、感動するとともにとても勉強になりました。

 不思議なご縁があったのか、私の文章作法の先生でもあったNさんは今CoSTEPの特任教員として私の同僚になり、私をしごいてくれたライティングを中心に受講生を指導、活躍しておられます。考えてみると、確かにブルーバックスは昔からサイエンス・コミュニケーションを実践しているメディアですから、ブルーバックスの編集をやっておられた方がCoSTEPに加わるということはきわめて自然なことでもありました。そうした縁もあって、CoSTEP第一期終了を記念して行われるシンポジウムにはブルーバックス編集部の部長さんにも来ていただける予定になっています。

 あとはこの本を一人でもたくさんの方に読んでいただけると、とてもハッピーです(^^;)。もちろん、ご批判・ご意見を歓迎いたします。

#実は、このようなことを「まえがき」か「あとがき」に書いておきたいと思っていたのですが、4教科の統一性を持たせるということで、その機会を逸してしまいましたので、ここに記して関係者へのお礼としたいと思います。著者の皆さまをはじめ、たくさんの方にお世話になりました。本当にありがとうございました。心からお礼を申し上げます。
by stochinai | 2006-01-20 22:26 | 教育 | Comments(6)

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