5号館を出て

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2007年 04月 22日 ( 2 )

 大学や研究所で、独立した研究者として生きていくことをあきらめた一人のライフサイエンス系の大学院生が、就職活動を始め、就職を決めた後に、論文を書き、博士号も取得でき、そしてこの春から企業の研究所で働くことが決まったそうです。長いこと、お疲れさまでした。そしてひとまず、おめでとうございます。

 そして、この間のすべての事情がリアルタイムでブログに記録されております。「うすっぺら日記」という、多少自虐的なブログ名になっていますけれども、同じような境遇に置かれた何万人の大学院生にとってはかけがえのない貴重な生きた生き方のモデルになると思います。

 私は、改めて読み返して見たわけではないのですが、大学院生の方で、今現在進路に悩んでいる方は、是非とも通して読んでみていただきたいと思います。書いた本人としては、いろいろと状況が変化しているだけではなく、感情や意志が揺れ動いていた過去が記録されていますので、削除してしまいたいと思うようなこともあるに違いないとは思いますが、今実際に同じような境遇に置かれた人にとっては、著者であるlanzentraegerさんの経験が共有されるに違いないと確信しますので、できるだけ長くこのままにしておかれて、たくさんの後進の方々に読んでもらいたいと思います。

 さて、そのlanzentraegerさんが就職して配属先も決まり、落ち着いたこともあるのでしょうが、大学院の研究室のあり方について振り返って書かれてくれました。この時期、企業の中でもまれる前にちょっと立ち止まって書いてくれた内容は、記憶が生々しいだけに迫真的であり、また実際に中にいたのでは書けないことが書かれているという意味で重要な指摘になっていると思いますので、ここで紹介しておきたいと思います。

 うすっぺら日記「学生がその後どうなるのか

 内容は読んでいただければすぐに了解していただけることばかりだと思いますが、大学・大学院の教員である私から見ても、ここに書かれたことはほぼ100%同意できることばかりです。つまり、大学院の素顔の否定的側面がかなり的確に指摘されていると思います。自戒を込めて引用させていただきます。
根本的に、大学院の研究室というところは、進学してきた学生がその後どうなろうが知ったこっちゃないというところに非常に問題があるように思えます。
大学では、学生が途中で研究室を辞めて出て行っても、学位取得ができず留年することになっても、基本的に教官は別に何ら傷付かないのです。
偏っているかもしれないが悪い例を出せば、10に1つ当たるような研究課題を10人に与えて、9人がやめても、1つ大きく当たればほくそえむ研究指導者もたくさんいるだろうと感じます。
教官や指導者が、学生に真摯に教育・指導するという場合も根本の意図はどうでしょうか。 ・・・(略)・・・ つまり、学生の成果が、彼らの成果の一部となり、彼らの利益になるからです。
 大学の教員だけではなく、若手にも同じような魔の手が忍び寄っていることも指摘されています。
若手PIや研究員の間の競争も益々熾烈化してきているから、学生やポスドクを「うまく使って」キャリアアップを計るという場面が多くなってきていると思うからです。
 もちろん、一方的に大学教員を責めているだけではなく、なぜ教員がこうした「悪」に手を染めるのかについても考察されていますし、「悪」に手を染めていない教員の存在も認めてくれています。
また、教官らも一人の人間なのだから、学生が停滞すれば心は傷付いているかもしれない。誠意を尽くして、学生の指導にあたり、能力や経験に恵まれて素晴らしい学生が巣立っていくように教育する良心的な教官がいることも決して否定はしない。
研究競争の苛烈さが、そういった人的資源の使い捨てを加速している気がします。他人の将来など構ってる暇がなくなってきているんです。自分の将来に全てを注ぐために。
学生の将来は、ほとんど指導教官の『良心の呵責』に支えられていると言っても過言ではないのではないでしょうか。
 この指摘は、かなり当たっているのかも知れません。そうであるならば、学生はそういう良心的な教員を選ぶことができるかどうかで、その後の人生が変わる可能性もあり得ることになります。
個人によるキャリア設計を推し進めるなら、学生自身が研究室の卒業状況を確認するようになるのは自明の理であるように思えます。
 私は前から不思議なのですが、こうした研究室の先輩の進路状況や、研究室で上に書かれているような理不尽が行われているということが、ほとんど後輩に語りつがれていかないという現実があります。その結果、数年前に起こったアカハラ事件とほとんど同じことが数年後の同じ研究室で再現されているなどという信じられないことがいまだに続いているところもあるようです。

 というわけで、教員を糾弾して改善を迫ることも大切だと思いますが、学生側の情報流通をなんとかする策も講じる必要を強く感じているところです。

 一方。教育再生会議では、このあたりのことは問題として認識されてすらいないような気がしますが、文科省関係の方でお読みになった方は是非とも進言していただけると幸いです。
by stochinai | 2007-04-22 23:57 | 大学・高等教育 | Comments(6)
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by stochinai | 2007-04-22 01:02 | コンピューター・ネット | Comments(2)

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