5号館を出て

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2010年 06月 14日 ( 2 )

 今回の「はやぶさ」帰還のニュースはもたとえ日本人が中心になって打ち上げたものではありますが、今までに人類が重ねてきた宇宙科学技術の成果のひとつであることは間違いありません。すごい時代になったものです。

 途中で何回も故障に見舞われ、岩石採取のミッションもほぼ失敗したといえるとは思いますが、「いとかわ」への着陸には見事に成功しました。その後、地球へ帰還する際に見舞われた「致命的」なトラブルにより、一時は絶望的とも言われた帰還を無事に果たしたことは、冷静であるはずの「科学的ミッション」が達成される過程に人々の心に滑り込む、なんとも形容のしようもない「興奮」が、理屈を簡単に越えてしまうことを実感させられました。

 私も自然科学者の端くれとして「はやぶさ」のミッションの進行状況を時折見聞きする度に、「はやぶさ」の完成度の高さに加え、柔軟な設計メカニズムと、それを最大限に利用して地上からコントロールしているクルーの技術力・科学力の高さに何度も舌を巻いたものです。

 ニュースなどでは、「奇跡的幸運」などという言葉が何度も使われていたと思いますが、どのくらいの性能を発揮できるかということは、最初の設計・製造の時にほとんどの部分が決まっており、そこで予測できない事態が起こった時には地上からの人的コントロールで収拾を試みるというのが、宇宙開発の現場で繰り返されていることで、どちらが欠けてもうまくいくものではありません。そして、それが成功したもっとも有名な例が「アポロ13号」事件だと思います。

 今回の「はやぶさ」の帰還は、予定よりも3年も遅れた上に、本体を消滅させつつカプセルを回収するという、いわば自爆的帰還という乱暴な手段にならざるを得なかったという、かなりぎりぎりの「成功」だったと言えます。それだけに、大気圏に突入してカプセルを切り離し、バラバラになりながら燃え尽きる、ある意味で美しいとも言える光景を見ていると、帰還の際の大気圏突入と共に空中分解して燃え尽きたスペースシャトル「コロンビア」の映像がよみがえり、正直言ってちょっとしたフラッシュバック的胸騒ぎを感じてしまいました。

 そしてその後に、カプセルを切り離してから数分後、大気圏に突入する前に撮影した「はやぶさ」が撮した地球の写真を見て、なんとも言えぬ感情におそわれました。こちらがJAXAが発表した「『はやぶさ』が最後に見た地球」の画像です
c0025115_2003090.jpg
 (C) JAXA

 はやぶさは生き物ではないのですから、もちろん「見る」などという行為はあり得ず、JAXAが書いているようにこれは「『はやぶさ』が最後に撮像した地球画像」に過ぎないのですが、この直後にバラバラに分解しながら燃え尽きた「はやぶさ」が撮した写真のあまりの芸術性に背筋が寒くなったことを白状しておきます。

 画像に縦横にはいった線は伝送電波の乱れによるものでしょうし、写真としても地球が中央にとらえられていないとか、鮮明さにかけるとかいろいろな科学技術的コメントはできるかもしれません。しかし、そうしたすべてが一枚の画像の中で、「宇宙にある地平線に浮かぶ地球」を感じさせられ、それは「はやぶさの心象風景」そのもののように見えてしまう非科学性が自分の心の中に生じるのを否定することがどうしてもできませんでした。

 おそらく、「はやぶさ」のコントロール・クルーの中にも、お守りを持っている人もたくさんいると思います。お正月には神社にお参りに行った人もいるでしょう。毎日、神や仏に祈っていた人さえいるかもしれません。「はやぶさ」のミッションの成功・失敗にそうしてものが影響するはずはないと理解している人でさえ、そういうことをするのを私は否定できません。

 同様に、燃え尽きた「はやぶさ」に単なる機械以上の愛着を感じることの中に、非科学的と言って笑うだけではすまない何かがあることもやはり認めざるを得ないのではないでしょうか。人の心の中に「ニセ科学」がすべりこむ瞬間というのはこういう時なのかもしれません。

 なんだか、うまく説明できませんが、やはり人の心は科学だけでコントロールすることはできないものだと感じさせられる、「はやぶさの帰郷」でした。
by stochinai | 2010-06-14 20:30 | 科学一般 | Comments(6)

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by stochinai | 2010-06-14 06:14 | コンピューター・ネット | Comments(0)

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