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カテゴリ:生物学

  • 神戸初日
    [ 2012-05-28 23:57 ]
  • エンサイクロペディア・オブ・ライフが100万種登録達成
    [ 2012-05-13 22:49 ]
  • シロクマとヒグマの分岐は考えられていたよりずっと古かった
    [ 2012-04-20 20:44 ]
  • ナナホシテントウはアブラムシが好む植物を見分ける
    [ 2012-04-09 19:27 ]
  • 甘みを捨てた肉食獣たち
    [ 2012-03-15 19:54 ]
  • 孫を育てるおばあさんの進化
    [ 2012-03-08 19:03 ]
  • 両生類上陸の証拠となる化石が続々
    [ 2012-03-07 18:58 ]
  • カンブリア紀のピカイアは間違いなく脊索動物だった
    [ 2012-03-06 19:09 ]
  • 精子は花の香に引かれない: 「谷間のゆり」現象の終焉
    [ 2012-02-29 21:24 ]
  • エヴォ-デヴォの反革命的歴史?
    [ 2012-02-22 19:46 ]

神戸初日

 朝、札幌を立ち神戸に着きましあ。これは、8時ころに新千歳空港行きバスを待つ時に写したものです。
 千歳空港でお借りしたトイレでの掲示。
 英語が修正されています。

 見えにくいので、修正されたところを拡大してみます。
 英語の掲示がこんな風に修正されているのは良く見ますが、おそらくネイティブ・スピーカーがいたたまれなくて直すのでしょうね(笑)。

 昼間は忙しく写真を撮る暇もなかったのですが、夜に呼び出されて出てきた三宮のガード周辺には、三日月がでていました。
 そういえば、こんな名物もまだ食べていませんでした。
 今夜の宿舎はこちらです。
 明日からは、国内で行う英語が公用語の学会です。

 おやすみなさい。




by stochinai | 2012-05-28 23:57 | 生物学 | Trackback | Comments(0)

エンサイクロペディア・オブ・ライフが100万種登録達成

 数日前のNATURE NEWS BLOGに掲載されていたニュースです。
 Encyclopedia of Life (EOL)を知っていますか?スミソニアン研究所の国立自然史博物館が運営しているオンラインの生物大図鑑で、その目標が顕在「種」として登録されているあらゆる生物をここに登録することです。2008年にこの活動が始まった時にはわずか3万種しか登録されていなかったのですが、それからたった4年で100万種を越えたというのは快挙ではないでしょうか。

 スミソニアンのプレス・リリースはこちらにありますが、やっぱりNature News Blogを読みたくなるのは、コミュニケーションする気の違いというものでしょうか(笑)。

 そのスミソニアンがやっているということで、ちょっと心配にはなりますがそのホームページはきれいです。
 現在登録されている種は、106万2100種となっていますね。

 登録は、ウェブサイトで種名の説明を行なっている協力者によって行われているということで、Wikipediaなどと同じくボランティアによる図鑑作成ムーブメントと言って良いと思います。(実際に、Wikipediaとデータの共有もしているらしいです。)

 せっかくですから、われわれのところで飼育中の動物たちを調べてみましょう。

 まずは、もっとも歴史も数も多く使ってきたアフリカツメガエル(Xenopus laevis)です。検索窓に種名を入れるだけです。さすがに、たくさんの情報が登録されています。
 次は、現在たくさん個体数がいるメダカ(Japanese Medaka, Oryzias latipes)を調べます。ありますね。
 メインの写真が死んだか麻酔されて水の外に取り出されたメダカというのはちょっといただけませんが、まあ日本の誇るモデル動物が登録されているのはホッとしました。

 次は、ちょっと難しいリュウキュウナミウズムシ(Dugesia ryukyuensis)はどうでしょう。沖縄に住むプラナリアです。
 種としては認識されていますが、おおーっと、写真も解説もありません。では、日本中に最も普通にいるナミウズムシ(Dugesia japonica)ならどうでしょう。
 かろうじて写真が1枚だけ登録されていますが、解説はありません。かなり寂しい状況です。

 では、最後に世界中に広く分布しているミジンコ(Daphnia pulex)を調べてみます。
 ネット上には山ほど美しいミジンコの写真がありますが、残念ながらここにはあまり鮮明ではない写真が1枚しか登録されていません。

 というわけで、100万種を越えて登録されたというEOLですが、意外と研究現場でよく使われている動物が登録されていないか、登録が手薄になっていると感じました。

 こういうボランティア・ベースの目録作りなどを実行するのは難しいことだとは思いますが、スミソニアン程の名声を持ってしてもなかなかうまくいかないということを考えると、何か新しい「企画」を提案して世界に訴える必要もあると感じました。

 それにしても、4年間で100万種が登録されたということはすごいことだと思います。今後は分類学者以外への働きかけにも力を入れて、残りの約100万種を2017年までに完成させるという偉業の達成を願いたいところです。
by stochinai | 2012-05-13 22:49 | 生物学 | Trackback | Comments(0)

シロクマとヒグマの分岐は考えられていたよりずっと古かった

 今日のサイエンスの表紙は水面に映る自分を眺めるナルシス・シロクマです。
 というわけで、今日発行されたScienceには、シロクマ(ホッキョクグマ polar bear)の進化についての論文が載っています。

Science 20 April 2012:
Vol. 336 no. 6079 pp. 344-347
DOI: 10.1126/science.1216424
REPORT
Nuclear Genomic Sequences Reveal that Polar Bears Are an Old and Distinct Bear Lineage
Frank Hailer, Verena E. Kutschera, Björn M. Hallström, Denise Klassert, Steven R. Fain, Jennifer A. Leonard, Ulfur Arnason, Axel Janke


 中身は意外とわかりやすいもので、ミトコンドリアの遺伝子で調べた結果から、これまではシロクマとブラウン・ベア brown bear(ヒグマ)は11万年から17万年前に種として分化したと考えられていただけではなく、系統樹でみるとシロクマはブラウン・ベアの枝の中にはいってしまうとされてきました。
 ミトコンドリアの遺伝子は卵を通じて遺伝しますので、母系の系統しか知ることができません。そこで、今回の論文ではミトコンドリアではなく核の中にある遺伝子を比較してみたところ、シロクマとブラウン・ベアの分岐は34万年から93万年(約60万年)前に起こったという結果が得られたということです。
 Scienceの論文も随分とフレンドリーな図を使うようになったものだというのはさておき、この系統図を見るとシロクマはブラウン・ベアの一系統などではなく、もともと別の系統として種分化していたことが示されています。

 だったらミトコンドリアの遺伝子で得られていた結果はどういうことなのかという疑問が生じますが、それについてはシロクマとブラウン・ベアの「交雑」が起こったことと、交雑が起こった前後にもともとのシロクマ集団が絶滅したことが原因だったのではないかと考察しています。
 現在、絶滅が危惧されているシロクマの遺伝的多様性があまり高くないことも、このもともとの集団の絶滅と、交雑した個体だけが生き残ったというシナリオを考えると説明できるとしているようです。

 こういう論文には一般ジャーナズムも食いつきが良いもので、BBCNews(科学・環境)でも取り上げられていました。

DNA reveals polar bear's ancient origins
By Helen Briggs
BBC News


 さすがに、こちらの記事にはかわいい写真も添えられています。
 60万年前から生きてきたのだとすると、シロクマは今よりも暖かい地球環境を何回か乗り越えてきたということが推測されます。今くらいの温暖化には負けないで生き延びて欲しいものです。



by stochinai | 2012-04-20 20:44 | 生物学 | Trackback | Comments(0)

ナナホシテントウはアブラムシが好む植物を見分ける

 ナナホシテントウは植物の害虫であるアブラムシを食べてくれるので、農家や園芸家の強い味方です。
photo credit: JKonig via photopin 

 アブラムシがいると、いつのまにかテントウムシががやってくるのは、当然のことながらアブラムシを見つけてテントウムシがやってくるのだと思っていました。生物学者の間でも当然そうだろうと思っている人が多かったようですが、その常識を覆す論文が出ました。
 動物行動学という学術雑誌に出た論文のタイトルは「捕食者は被食者が見分ける餌の良し悪しを見分けることができるのか?」というものです。

 NewScientistに出ていたニュース「Ladybirds think like an aphid to catch a meal テントウムシはアブラムシがやっているのと同じ思考方法で餌のおいしさを見分けている」で論文を知ることができました。

 エンドウにつくエンドウヒゲナガアブラムシは、エンドウが病気になったり、まさしくアブラムシに襲われたりした時にエンドウが作る防御物質を出すなどして防御態勢にはいっているエンドウより、健康で防御態勢に入っていないエンドウを好んで食べることが知られています。

 またエンドウの防御態勢は実験的に根からベータアミノ酪酸(BABA)という物質を吸わせることで誘導することができます。このBABA自体はアブラムシにもテントウムシにも無害であり、両者ともにそれを忌避するということがないことは予め確かめられています。

 で、このBABAを根から吸収させて防御態勢に入ったエンドウを用意して、その葉っぱの上にアブラムシあるいはテントウムシを放してどの葉っぱを選ぶかということを実験してみました。
 これがその実験のセットで、2種類の濃度のBABAで処理した葉っぱと処理していない葉っぱを置いた装置の中に動物を放します。

 その結果、葉っぱの液を吸うアブラムシがBABA処理されていない葉っぱを好むのはわかりますが、アブラムシを食べる肉食性のテントウムシまでもが、防御態勢に入っていない葉っぱを好むという結果が得られました。
 左がテントウムシ、右がアブラムシで、ほとんど同じ傾向が出ています。

 テントウムシはアブラムシにひかれるので、同時に放してどちらの葉っぱに集まるかという実験をしても、当然のことながら同じ結果が得られました。
 アブラムシが自分の餌の質を見分けるのは当然としても、テントウムシがどうやってアブラムシの好む餌を見分けるのかというのは謎として残っています。いずれにしても、テントウムシにとってはアブラムシの好みを見分けることで、場合によっては「待ちぶせ」することもできるので、非常に合理的な能力だと思います。

 著者らによると、こうした捕食者が被食者の好みを見分けるという機構が見つかったのは世界初だそうですが、これをきっかけに今後、同じような論文が続々と出てくるような気がします。



by stochinai | 2012-04-09 19:27 | 生物学 | Trackback | Comments(0)

甘みを捨てた肉食獣たち

 ネコがどうも甘いものに引かれないということは1970年代の行動学的研究から知られていたことなのだそうですが、我が家にいる一匹のネコはハチミツのかかったヨーグルトとか、アイスクリームとか甘いものが好きみたいに思えます。
 そういうものを食べた後で、満足して眠る武蔵丸です。

 もう一匹のネコはまったく甘いものには興味を示さないのですが、海苔には狂ったように襲いかかってきます。
 まあ、ヒトにも甘党や辛党があるよう、ネコもそんなものなのではないかと思っていたら、いやいや「ネコは甘さを感じることができないのだ」という記事が出ていました。 (「甘党よ。サヨウナラ」)
 実はすでに2005年頃に出た論文に、ネコでは甘みを感じるレセプタータンパク質遺伝子が壊れてしまっているため、そもそも甘みを感じることができないはずだということがわかったと書かれています。

Pseudogenization of a Sweet-Receptor Gene Accounts for Cats' Indifference toward Sugar (PLoS Genet, 1(e3):0027-35, 2005)

 同じ研究者たちが、この度いろいろな肉食の哺乳類(イヌ・ネコ科)の動物を調べたところ、なんとそのうちの7種の動物がネコと同じように甘みを感じるレセプタータンパク質遺伝子が壊れてしまっていることが示されました。
 いろいろな動物の遺伝子を調べただけなので、中身はとてもわかりやすい論文です。

Published online before print March 12, 2012, doi: 10.1073/pnas.1118360109
PNAS March 12, 2012


 これで赤い星で示されているところに遺伝子変異がはいって機能を失っているようです。

 一番最初のイヌ(甘いものが好きです)ではまったく正常ですが、その下のアシカ、オットセイ、アザラシ、右側にいるアジアカワウソ、ブチハイエナ、フォッサ、ジャコウネコの仲間ではすべて、遺伝子が壊れています。

 調べたものの中で、正常な甘み遺伝子をもっているものと、壊れているものを系統樹の上で示すとこのようになります。
 上側の枝にネコ科、下側の枝にイヌ科がいますが、基本的に肉食獣あるいはかつて肉食獣だったもの(パンダなど)です、その中で一番上のネコをはじめダイヤマーク(灰色が昔の論文の結果、赤が今回の論文の結果)のついているものが、甘みレセプターがダメになっている動物です。

 これらの動物の多くは肉食であるだけではなく、獲物をまるのみにしてしまうという共通点があり、味わうことなく獲物を飲み込んでしまうという捕食パターンが味わう遺伝子の変異を起こす原因(あるいは変異が起こっても起こらなくても関係無いので変異を持った個体もそうでない個体と同様に生き続ける)になっていると考えられ、オットセイでは甘みだけではなく同じ遺伝子グループの旨み遺伝子までもが壊れてしまっているとのことです。

 この図にはありませんが、まったく別のグループの哺乳類であるハンドウイルカでもオットセイと同じように甘み・旨みレセプター遺伝子が全部ダメになっており、肉食丸呑み系の動物では他にも食べ物を味わうためのレセプター遺伝子がダメになっているものがありそうです。

 どっちが原因か結果かはわかりませんが、口の中に食べ物を入れた時に味がしなかったら丸呑みしたくなる気持ちはわかるような気がします。

 動物園や水族館でイルカやオットセイがサカナを丸呑みにしている理由がわかったような気がします。また、うちのネコたちが食べ物をよく噛まずに丸呑みにしてしまっていることもよくわかりました。

 味わうことを忘れると、味わうための遺伝子があってもなくても関係ないということですね。いいのか、悪いのか・・・。


by stochinai | 2012-03-15 19:54 | 生物学 | Trackback | Comments(0)

孫を育てるおばあさんの進化

 もはや今は有名になった「おばあさん仮説」ですが、生殖能力を失った個体の大多数がが例外としてではなく、長く生きるという例はあまりありません。「おばあさん仮説」では、ヒトのおばあさんが娘または息子のお嫁さんが子どもを生み育てるのを助けるという重要な働きを持っていて、息子または娘を通じておばあさんの遺伝子を4分の1受け継いでいる孫の生存を助けることで、自分の遺伝子が存続していくことに貢献することで、十分生物学的(進化学的)に説明可能な現象とされています。

 ところがここにちょっとした謎がかくされています。自分の遺伝子を残すためなら、孫を育てるより自分で子どもを生んだほうが一人につき自分の半分の遺伝子を残すことができますので、孫を育てるのを助けるか、もちろん孫育てを助けるよりは大変なのですが自分で子どもを生んで育てるかの間に葛藤が予想されます。

 そのあたりがどうなっているのかを実際のフィールドで調査した論文が出て、それをNatureで解説した記事が出ていました。

Social science: Human reproductive assistance

Kim Hill & A. Magdalena Hurtado

Nature 483, 160–161 (08 March 2012) doi:10.1038/483160a
Published online 07 March 2012

 この女性たちが住むガンビアの村を調査した論文がこちらです。
 もしも、若い娘とおばあさんが同時に子どもを産んで子育て競争をすることになると、一つの村や一つの家族にとっては共倒れになる危険が生まれるかもしれず、これを平和的に解決するための生物学的方法が、老化個体の排卵を停止させてしまう「閉経」という現象だという考察がされているようです。

 証拠があるわけではないのですが、どうも若い女性が妊娠をすると、近くにいるより年をとった女性(早い話がおばあさん)が生殖能力を失う、つまり閉経するという現象がありそうで、ひょっとすると昆虫などでよく知られた「フェロモン」のようなものがおばあさんを閉経させてしまうということがあるのではないかという「仮説」が提出されています。

 閉経してしまえば、生物学的にもはや子どもを生み育てることはできませんので、娘の子どもあるいは息子のお嫁さんの子どもを育てることで自分の遺伝子の存続を図るというのは生物学的に理にかなったことです。

 おまけに、ヒトは二足歩行を進化させて、そもそも妊娠・出産・子育てが大変な動物になってしまっているわけですから、そこにまだまだ元気でしかも自分では生殖することのなくなった子育ての経験のある肉親であるおばあさんがいるのですから、これは家族や集落全員にとっての福音です。というわけで、ヒトでは早々と自分の生殖を終わったおばあさんを子育ての実働部隊として組み込んだ家族が進化してきたというのは、きわめて理解しやすいストーリーだと思います。(ヒトの雄の多くは死ぬまで生殖能力を持ち続ける個体が多いので「おじいさん仮説」は難しいのかもしれません・・・。)

 生命の誕生から、細胞の進化、植物・動物の進化からヒトの社会への進化と壮大なストーリーが、一続きの壮大な物語で語れるようになった今の生物学は、ほんとうにおもしろくなってきたと思います。

 今日は「国際女性の日」だったようで、ちょっとはそれにふさわしい話題になったかもしれません。


by stochinai | 2012-03-08 19:03 | 生物学 | Trackback | Comments(2)

両生類上陸の証拠となる化石が続々

 脊椎動物はサカナが両生類になって上陸したということになっていますが、実はこのあたりの証拠となる化石が決定的に不足していました。最近になって、手を持つサカナであるティクターリクの化石がカナダの北極圏から出てきたりしているものの、まだまだ上陸したばかりの両生類の化石は足りません。

 この時代(デボン紀から石炭紀)に、海中から両生類が上陸したことは間違いないのですが、上陸したはずの両生類やその餌になったはずの節足動物(ムカデやサソリなど)の化石の発見が全然進んでおらず、古生物学上の謎の一つとして魚類から両生類への脊椎動物進化を示す化石が「抜けている」こと、つまりミッシング・リンクとなっているを、有名な脊椎動物の進化解剖学者であるローマーの名前をかぶせて、「ローマーのギャップ」とも言われてきました。

 その有名な「ローマーのギャップ(Romer's Gap)」が埋められるような化石がスコットランドから続々と出てきているというのです。PNASのオンライン早版に出ていました。
 よく見ると、あのティクターリクを発見したシュービン(「ヒトの中の魚 魚の中のヒト」の著者)がエディターとしてこの論文を紹介しています。

 論文自体はなかなか地味なもので、あまり派手な図なども載っていないのですが、この頭骨はなかなか愛すべき味があります。
 この頭を持つ両生類を再現したものが下の絵ではないかと思われるのですが、これが有名になってくるとイクチオステガの出る幕はなくなるかもしれません。(この絵の主は、愛称がリボー(肋骨ribの化石で有名だからRibboらしい)と呼ばれて、すでに現地ではアイドル化しているとのこと、ブレーク間近の予感がします。)
 この図はスコットランドの国立博物館のホームページにもありますが、こちらの解説記事で見つけました。

Physorg.com
Fossil finds help fill in Romer's Gap (ローマーのギャップを埋める化石が見つかった)
March 6, 2012 by Bob Yirka


 どうやらイギリスではBBCが大々的にこの化石発掘のフォロー番組を作っているらしく、このさき続々とニュースになりそうな「大発見」が出てきそうな予感がします。

 まだまだ情報量は少ないですが、スコットランドでは、上陸両生類のものだけではなく、当時の動物や植物オン化石もたくさん出ているようですので、数年もすれば両生類が上陸した頃のダイナミックな想像図が出てくることは間違いないでしょう。

 楽しみです。


by stochinai | 2012-03-07 18:58 | 生物学 | Trackback | Comments(0)

カンブリア紀のピカイアは間違いなく脊索動物だった

 我々、背骨をもつ脊椎動物の先祖はまだ骨化していない脊索という軸構造を持ったものだと考えられています。我々ヒトも発生途上に背骨ができる前に脊索を持っている時期がありますが、ナメクジウオやヤツメウナギでは成体でも背骨を持たずに脊索のままです。

 というわけで、進化の過程で我々脊椎動物が出てくる前に、脊索しかないナメクジウオのような先祖がいたに違いないと考えられており、カンブリア紀の化石の中にでてくるナメクジウオによく似たピカイアという動物が、ひょっとするとそれに当たるのではないかと考えられてきました。

 ピカイア化石の発見は1911年にさかのぼるのですが、最初はミミズやゴカイの仲間ではないかと考えられていたピカイアが脊索動物なのではないかと思われるようになったのですが、実はそれほどしっかりとした研究に支えられていたわけでもなかったようです。

 それが、今回114ものたくさんの化石標本を解析して、詳細な論文として報告が出ました。著者の一人は、あのコンウェイ・モリスです。
 結果は我々の期待通り、やはり脊索を持っていたことが確認されました。
 100以上の筋肉でできた節を持ったピカイアは、この生態想像図に見られるように体を左右にくねらせて、カンブリアの海の中を泳いでいたと思われます。(大きさは、わずかに4センチくらいです。)

 この論文の最大の売りは、精密な「解剖図」だと思います。
 頭には2本の触手(触角)があり、目はありません。エラのような9対の突起物は、その後エラに進化することになったのかもしれません。

 頭部を大きくしてみます。
 肌色に見えるのは消化管です。口から短い「食道」を経て、太い「胃」のようなふくらみが見えます。腹側には赤く描かれた「血管」もあるようです。背中側に見える大きな青い部分は昔は「脊索」ではないかと思われていた構造ですが、どうやら何かをためる袋状の構造のようで、浮力を生み出していたのかもしれません。「背部器官(dorsal organ)」と名付けられました・

 そして、胴体の真中部分です。
 背中側の青い背部器官の下に、細い黄色の脊髄があり、さらにその下に太い脊索があります。胴の真ん中を貫いているのは、消化管で、お腹側の赤いのが血管です。

 それらがおしりの末端部で一箇所に集中します。
 真ん中にある消化管だけが体外に開いて「肛門」になっています。

 お腹側のヒレは広く発達していますが、背中側のヒレはごくごく狭いのが特徴で、これらの構造からどんな泳ぎ方をしていたかが想像できそうなので、泳ぐアニメーションが出てくるのも時間の問題だと思います。

 ここまでリアルに再現されると楽しいですね。

 個人的にはどうやって生殖(子どもが増えるか)していたのかが極めて興味あります。


by stochinai | 2012-03-06 19:09 | 生物学 | Trackback | Comments(0)

精子は花の香に引かれない: 「谷間のゆり」現象の終焉

 10年ほど前に、ヒトの精子が嗅覚レセプタータンパク質を持っていて、その働きで匂いをかぐことができるばかりではなく、花の匂いによく似たブルゲオナール(bourgeonal)という分子に誘引されることから、ヒトの卵は花のような香りを出して精子をひきつけているのではないかという論文がScience誌に出て、大ニュースになったことを覚えていらっしゃいますでしょうか(Science 299, 2054, 2003)。
 欧米ではこの実験結果をバルザックの小説をもじって「『谷間のゆり』現象」とまで呼んで大騒ぎしたようです。

 確かに卵が「谷間のゆり(翻訳の時に「スズラン」を誤訳したようです)」つまりスズランのような香りを出していて精子をひきつけているのだとしたら、これは限りなくロマンチックな現象に思われるということなのでしょう。

 ところがいくら調べても、卵やそれをとりまく濾胞細胞から「スズラン」のような香り物質は発見されずに今日に至っています。また、もし精子が「匂いをかぐ」ことができるのだとしたら、ヒトの嗅覚を担当する細胞のように、細胞膜上に嗅覚レセプタータンパクだけではなく、ATPをcAMPという物質に変えるアデニル酸シクラーゼがあって、匂いをかいだらcAMPが増加して、そののちに細胞内カルシウム・イオンが増加して、匂いのもとの方に精子が泳いでいくというしくみがあってもよさそうなものです(東大の別件のプレスリリースから図をお借りしました)。
 ところが、ここでも「匂いをかいだ」精子の細胞内にカルシウム・イオンは増えるものの、cAMPの増加が見られないという不思議なこともわかっていました。

 そんなこんなで、「谷間のゆり現象」に陰りが見えてきた昨年、精子をひきつけることが前から知られていた女性ホルモンであるプロジェステロン(こちらは卵の周りにあることもわかっていた)が精子の動きをコントロールするしくみが明らかにされました。
 なんとここでは、精子の細胞内カルシウム・イオンを上昇させる働きをするイオンチャンネルであるCatSperというタンパク質がプロジェステロンと直接反応することが明らかにされたのです(図はマックスプランク研究所のプレスリリースから)。

 そして今回発表されたEMBO Journalの論文では、なんとあの「谷間のゆり」の主役だったブルゲオナール(bourgeonal)という分子もこのCatSperに直接働きかけることで精子を卵の方にひきつけることが明らかにされました。

 つまり、精子は「花の香」に引かれて卵に寄っていったのではなく、精子に降りかけるものはプロジェステロンでも、ブルゲオナールでも、さらには「谷間のゆり」論文でブルゲオナールの働きを阻害するとされていた別の匂い物質であるアンデカナール(undecanal)でさえも単独で働くと精子を引き寄せることさえ明らかになりました。

The EMBO Journal advance online publication 21 February 2012; doi:10.1038/emboj.2012.30
Published online: 21 February 2012

The CatSper channel: a polymodal chemosensor in human sperm


 つまり、精子は匂いをかげるわけでもなんでもなく、精子の持っているカルシウム・イオンチャンネルが、いろんな化学物質に反応して細胞内カルシウム・イオンを上昇させる結果、精子はそういった物質のある方へむやみと突進するという性質があるということがわかったというわけです。

 卵の出す花の香に引き寄せられて受精へと突き進むという精子のファンタジーは否定されてしまいましたが、新しい発見はそれはそれでどうして受精が保証されるのかを明らかにする重要な研究結果であることは間違いありません。

 ただ、例によっていくら正しくても「おもしろくない」この研究結果を、日本のマスコミが報道するのかしないのか、あるいは報道するにしてもどのようにするのかは、日本の報道の科学リテラシーを判断する良い試金石になることは間違いないと思います。

 数日間から数週間、楽しみにしています。


by stochinai | 2012-02-29 21:24 | 生物学 | Trackback(1) | Comments(0)

エヴォ-デヴォの反革命的歴史?

 進化発生学はEvo-Devoと呼ばれることが多いのですが、進化学と発生学が劇的に結びついてまさに「革命」と呼ばれるような新しい学問分野を開花させました。
 これは、そのEvo-Devoの研究者であるポール・ザカリー・マイヤーズのブログPharyngula(咽頭胚と呼ばれる脊椎動物胚の発生ステージのこと)に引用されていた、Evo-Devo研究の第一人者であるショーン・キャロルの言葉です。動物の発生の際に使われる重要な遺伝子が、さまざまな動物で比較的普遍的に使われているということがわかったことが、Evo-Devo研究の革命を成功させた要因だということを言っています。

 このブログ記事(The problem with evo devo:進化発生学の問題点)は、著者がある大学で行った「evo-devoの反革命的歴史物語」という講義の要約のようなもののようです。evo-devoの信奉者であるはずの著者が、それをこき下ろすような歴史を語るというのですから、どんなことになるのかと興味をそそられます。
 内容を読んでみると、それほどセンセーショナルなものではなく、evo-devoのもとになった進化学と発生学とは水と油のような関係にあった学問だという、あたりまえの話から始まっていました。

 中にあったRaffという人の作った表(この著者によって、ちょっと改変されている)がその水と油加減を良く表しています。
 進化生物学者と発生生物学者のものの見方の違いを示しているもので、生物現象を見てその原因を前者は「自然選択」に求め、後者は「胚の中にあるメカニズム」に求めますし、遺伝子とは何かというと前者にとっては「多様性を生む原因」であり、後者にとっては「機能の支配者」であると考えます。同じように、大事な遺伝子は前者にとってはタンパク質の設計遺伝子であり、後者にとっては調節遺伝子で、多様性を重視する前者に対して一様性を重視する後者がいます。さらには、生物の時間推移を考える時、進化生物学者は進化(系統発生)を考え、発生生物学者は細胞系譜(個体発生)を考えるのです。当然、扱う時間の単位は、10年から10億年の範囲を扱う新科学者と秒単位からせいぜい1ヶ月くらいに起こる生物現象しか扱わない後者の研究が融合するなんて、誰も考えていなかったのです。

 それが発生に関わる遺伝子の超保守性が発見されることであっさりと革命的結婚をしてしまったのですから、学問分野の違いなんてわからないものだということです。

 そして、今はevo-devoは環境がいかにして発生遺伝子をコントロールして進化させたのかというところを射程に入れた研究をしているのです。
 しかし、先見の明があった人はずっと前からいたのは、この名言が1973年に発せられていることからもわかります。

 というわけで、「反革命」から始まったはずのevo-devoの歴史はやはり「革命」だったという讃歌になってしまうのは、著者が現役のevo-devo研究者ですから、仕方ありません。

 このブログの最後に出てくる宗教アイコンを模したevo-devoの未来像つまり生態学をも巻き込んだ、心の意味での進化学の完成を意味する図を見て、ちょっとびっくりしました。
 というのは、はるかに素朴なものではありますが、私が15年くらい前に何となく書いた図(私の目指す研究)にそっくりだったからです。
 この図は今でも私の研究室の紹介ページで見ることができます。

 なんとなく「いい気分」です(笑)。


by stochinai | 2012-02-22 19:46 | 生物学 | Trackback | Comments(0)


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