5号館を出て

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やられ損

「盗撮」司法修習生、無実

 こういうニュースを聞く度に腹が立ちます。

 最初に逮捕と容疑事実を発表したのは東京地裁で、その時は建造物侵入容疑で警視庁丸の内署が逮捕しています。東京地方裁判所内の女性用のトイレ個室内でビデオカメラが発見されて、東京高裁と東京地裁が建造物侵入の被害届を出し、捜査をした丸の内署が「修習中に席を離れがちで不審がられていた」という理由で司法修習生のひとりを逮捕し、自白させたということのようですが、発表の時点ではなにひとつ物証(カメラに付いた指紋)がなかったことが後でわかります。

 たとえ本人の自白(容疑を認める上申書)があったとしても、物証もなしに限りなく犯人に近い存在としての「容疑者」として、身元を発表するなどということが、どうして許されるのでしょう。

 東京地検は、偉そうに「処分保留」のまま釈放したと言っていますけれども、それは誤認逮捕ということを意味していないでしょうか。共同通信によれば、修習生は「逮捕前、容疑を認める上申書を出していたが、間もなく否認に転じ『自分はビデオを置いていない』と主張」しているということなので、地検に多少は情状酌量の余地はあるとも言えますが、物証がないまま発表するという勇み足については猛省すべきでしょう。あるいは処罰されてもおかしくない人権侵害だと思います。

 だいたい誤認逮捕された「元」容疑者はすでに実名を報道されてしまっていますので、地検が誤認逮捕を処分保留と言い張り続けることで、世間には「証拠がないだけで、あいつは犯人だ」と思わせ続けることになります。

 こういう場合、被害者となった「元」容疑者が原状を回復するためには裁判に訴えるしかないのですが、大変な努力をして勝訴したところで「裁判には勝ったけど、やっぱりあいつが犯人なのさ」という風評を消すことはできないと思います。つまり、原状回復は不可能なのです。

 逮捕の発表の時点で懲罰まで済んでしまうというこの状況は、法治国家としては失格でないでしょうか。

 独裁国家であるイラクに民主主義を与えるための「十字軍」の一員となっている国としては、やっぱり恥ずかしすぎると思います。
by stochinai | 2005-02-02 18:36 | つぶやき | Comments(4)
 びっくりするような事件は毎日のように起こるものです。

 私が良くニュースを探させていただく、はなゆーさんという方の低気温のエクスタシーに、「青森市営バス運転士3人が『学歴過少申告』で懲戒免職」という記事がありました。

 学歴詐称疑惑というと、行ってもいない外国の大学を卒業したというケースが多く、学歴偏重社会の日本では、お約束通りにワイドショーを始めとして、大々的なバッシングを受けることになっています。国会議員を辞めさせられてしまった人もいます。この場合は、人もうらやむ高学歴を詐称しているので、高学歴の存在を快く思っていない人に叩かれるのは無理もないかと思っていました。

 しかし、今回は逆なのです。短大や4年生大学を出た人が、高卒と学歴を偽っていたということなのです。大学や短大を出ているということは、当然高校は卒業しているわけで、高卒に嘘はないのでしょうが、青森のバスは高卒を越える学歴を持っている人は採用しないというルールがあるようです。

 実はこのニュースはそんなに新しいものではないらしく、共同通信が21日付けで学歴を低く偽り2人免職 青森市営バスで3人目という記事を配信しています。それによると昨年の10月に1人が処分され、21日にさらに2名が処分されたということのようです。はなゆーさんが引用しているのは、31日の河北新報で懲戒免職大卒差別か 青森・バス運転士学歴“過少申告”には、詳しい解説が載っています。

 「市は1995年度、バス運転士など技能労務職員採用に当たり、それまで年齢制限だけだった資格に加えて、学歴制限を設けた。中・高卒者の就職状況が全国最悪レベルの青森県にあって、制限は『中・高卒者の採用枠を増やす』(市交通部)狙いがあった」ので、「『学歴を隠して合格したため、本来合格すべき中高卒者が落ちた』(中川覚人事課長)との根拠で『懲戒免職は当然』」と言っています。それは、それで道理ある説明になっています。

 しかし、12月2日に私が書いた記事(ブログではエントリーというのでしょうか。すみません、初心者で)、大学院進学はまちがいなく自殺行為であるにあるように、学歴社会であるはずの日本において、学歴が上がれば上がるほど就職しにくくなるという状況も間違いなく存在するのです。そういうわけで、大学院を出た学生が学歴を過少に報告して大学卒や、(博士課程に進学しているのに)修士卒と申告して就職活動するケースがかなりあると聞いています。

 あるいは理系の大学を出ているのに文系卒として扱ってもらい就職する「文系就職」という言葉もあるようです。つまり、高学歴は低学歴を兼ねないという現実もあり、そんな中で(高卒としては)比較的給料も高く、安定した職業であるバスの運転手になりたいと思う短大卒や大卒の人間が出るのは無理もないのだと思います。そういう場合は、低学歴者として処遇されるという不利益を甘んじて受けるだけで、まさか学歴詐称で免職になることなどないと、誰もが思っていたと思います。

 そういう逆差別をつけておかないで、試験などだけで採用を決めるシステムだと、高学歴の人間はペーパーテストが得意な傾向がありますので、世の中が不況になって高学歴者の職場が狭まってくると、どんどん玉突き状態になって、高卒や中卒の職場が奪われてしまうということは避けられないのではないかと思います。現実にそれが起こっていることを憂えた青森県が、バスの運転手は高卒までとした優しい親心も良くわかります。

 しかし、大学を出てしまった、大学院を出てしまったという取り返しのつかない歴史を、「過ち」のように扱って就職差別するというのも、優しくないと思えてしまいます。

 どうしたらよいのかは私にも良くわからないのですが、就職試験のやり方に問題があったのではないだろうかとも思っています。年齢はごまかせないでしょうから、年齢とそれに見合ったバスの運転手としての能力をきちんと比べることができるならば、ことさら学歴だけで差別することなく、中卒高卒を優遇採用する方向も探れるのではないでしょうか。

 詐称が起こるのは、学歴に対して社会がきちんと対応できていないことの証拠のような気もします。
by stochinai | 2005-02-01 21:18 | 教育 | Comments(11)

日の暮の背中淋しき紅葉哉            小林一茶


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