5号館を出て

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 実は、私は新聞とかNHKとか、インターネットの時代になって消えゆく巨人として、その後進性を批判されたり、その未来が悲観視されているメディアにかなり依存しております。

 テレビはおそらく、個人的に見ている時間の半分以上はNHKですし、いくつかのすぐれた番組の対価として受信料を払う価値はあると思っており、割引制度もありますので、年間受信料一括払いを続けております。新聞もそろそろ止めても良いと思い始めておりますが、毎日1時間以上をかけてじっくりと読ませていただいております。

 テレビに関しては、この先インターネットとの調整を続けながら、どんどん変化していくのは必然的な流れだと思いますし、放っておいても生き残りのために次々と新しい企画が出てくるものと思いますが、そうした変化への対応が遅いように見える新聞の未来についてはとても心配になっていますので、2007年への期待第2弾として新聞の未来について考えてみようと思います。

 はっきり言ってしまえば、新聞社が統廃合したり新聞の宅配制度がなくなったりすること自体は特に心配していません。というよりは、それらのことはこの先に起こるべき想定内の事態だと思っています。

 残って欲しいのは、現在の新聞社が持っている取材能力です。それ以外の評論活動に関しては、もはや新聞社の独擅場ではありませんし、むしろ新聞紙上に出てくる社説を代表とした評論は、ネット上ではもはやネタとして使われる以上の評価を受けなくなっているという現実がありますので、特に新聞にやってもらわなくても良い分野になってしまったとも言えます。

 しかし、やはり新聞とテレビが持っている一次情報を取材するシステムは、一度壊れてしまうと回復が難しいものだと思いますので、新聞やテレビと一緒に失ってしまうことは避けたいと思います。ただ、もうすでに派遣記者とかフリーの記者という存在もあるようなので、彼ら(彼女ら)が食べていけるシステムがあれば良いというふうには思います。

 さて、その一次情報を取材する機能を維持するために、新聞(社)あるいは新聞のようなシステムをどうやって残したら良いのでしょうか。

 いきなり乱暴に宅配制度を廃止するというのは難しいというか、そういうことを提案すること自体が感情的反発を生んで話が前向きに進まなくなる気がしますので、できるだけ現実的な案を考えてみました。

 まずは無料とまではいいませんが、新聞購読料を大幅に値下げすることです。それによって、購読者を飛躍的に増やすことができるでしょう。全戸に配布する能力に関しては郵便や宅配便をはるかに上回っているはずです。無料化については、ネットではすでにGoogleがモデルを出している、薄く広い広告収入を取り入れることで可能だと思います。印刷媒体でもホットペッパーなどが成功しているのですから、できないことはないと思いますが、難しいのだとしたらホットペッパー(リクルート?)を買収するか、より現実的には買収される(笑)ことが近道でしょう。

 NHKもこの方法で無料化することができると思います、画面を分割してGoogleのように枠外にコマーシャルをおくことで、薄く広い広告収入を得ることができます。

 この薄く広い広告収入制度というのは、今のように大手のスポンサーに言論統制されている、新聞社や民放の番組をもう一度ジャーナリズムの側が取り戻すためにも、是非とも実現する必要があることだと思います。

 それが成功すると、新聞購読料やNHKの受信料などは限りなく無料に近づけることができるのではないでしょうか。そして、それで無料にしきれない記事や番組に関してのみ有料化するということは、現実的な提案になると思います。新聞の場合はネットとちがって pay per view ということは難しいのかもしれませんが、たとえば朝刊は無料で夕刊は有料にするとともに、「読ませる」記事は夕刊に集中させるということもいいのではないでしょうか。

 まあ、素人の戯言の部類ではありますが、某国の教育再生会議のように提案自体が現場の皆様に迷惑をかけるというものでもありませんので、気軽に読み流していただけると幸いです。

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 さて、今年も残すところ、あと1時間足らずです。このブログも、今年になって毎週1万くらいのPV(年間にすると50万超)を頂けるようになって、大変にありがたく大きな励みになっているとともに、緊張感や責任感をともなう複雑な感情になっていることも告白しておきます。

 大学に籍を置き、生物学に関しては多少の専門的知識を持ち合わせているにせよ、毎日書き綴っている「つぶやき」の多くは素人のたわごとにすぎません。しかし、「象牙の塔」の内側にいる人間の一人が、専門の領域を一歩出るとその外側にいる大多数の人とまったく変わらない存在であるということを知っていただくということが、このブログを書き続ける目的のひとつでもありますので、恥をかくのを顧みず、今後も青臭い居酒屋談義を続けていきたいと思います。

 今年は、本当にいろいろなことがあり、あっという間に過ぎたという感覚もあるのですが、あれも今年だったのか、これも今年のことだったのかと、思い出すととても長い1年でした。それだけ充実していたということでもあります。

 実生活にしてもブログにしても、ひとえに私を支えてくれる皆様の存在があれば送ることができた1年です。ほんとうに、ありがとうございました。

 来年が、これを読んでいただいているすべての皆様にとって幸多い年になることを心から祈りながら、今年最後の送信キーを押したいと思います。

 Have a very happy New Year.
by stochinai | 2006-12-31 23:11 | コンピューター・ネット | Comments(9)

忘年会

 雪の少ない暖冬の札幌ですが、今日はさすがに冷えこんだ一日でした。最高気温もプラスにはならなかったようです。

 私は今日、今年最後の忘年会でした。年に2-3回しか会うことのない似たような年代が中心のメンバーの集まりだったのですが、まったく気を遣わずに飲み、語り、歌い、特になんということもなく別れ、また半年か一年後に会って同じように飲み、語り、歌うことになるでしょう。こういう仲間の存在はとても貴重なものだと、会うたびに思います。

 逆に、日常生活では、どんなささいなことでもすべてがどこかで利害につながっていることを認識する瞬間でもあります。

 別に同じ学校を出ているわけでもないのにもかかわらず、時代を共有していたということが、こんなにも強い同時代意識をもたらすことは、驚きでもありまた当然という思いもあります。不思議なことに国籍が違っても似たような気持ちが共有されていることもしばしば経験するところです。

 団塊からちょっと後の我々の世代も、そろそろ現役から引退し始める時期に差しかかり始まっています。まだ、誰も飲み会の席でそれを話題にすることはないのですが、間違いなく誰もがそのことを深層に抱きながら、飲み騒いでいるはずです。何年かしたら、生活が激変することになるはずなのに、それは会話の表層に出てきません。でも、それで良いのだと思います。今は何も語らずに、年を越しましょう。

 同世代の飲み会が落ち着くのは、共有しているものの強さなのかもしれません。確認しあうまでもなく「我々」と感じることのできる安心感は、いかんともしがたい共同体意識として、抵抗することとができないことに対する無力感とともに、言い知れぬ安心感も与えてくれるものです。逆にいうと、この意識が世代間の断絶を生む原因にもなるのかもしれませんが、とりあえず運命に乾杯しておきましょう。

 そして、良いお年をおお迎え下さいということでお開きです。

 このブログを読んでくださっているすべても皆様にも良い年が訪れることを心から祈っております。

 最後に、一昨日収穫したフジの種と、それに群がる我が家のネコの集合写真を貼っておきます。
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 良いお年をお迎え下さい
by stochinai | 2006-12-30 23:59 | つぶやき | Comments(0)

クローン家畜の安全宣言

 FDA(米食品医薬品局)が、クローン技術を使ってつくった牛、豚、ヤギの肉やミルクは「食品として安全である」との見解を発表したそうです。たとえば日経ネットをごらん下さい。

 私も生物学者として、この見解には同意できます。クローンだからといって、基本的に普通の家畜と違うものができるわけではありませんので、ある牛が食物として安全なら、それから作ったクローン牛も安全だと思われます。もちろん、未知の危険性がないとは言えませんが、クローン技術に由来する危険性があるとは思われません。

 「発表を受け、消費者団体や宗教団体から安全性や倫理問題をめぐり早くも強い反発の声が出ている」と書いてありますが、倫理問題はさておき安全性をめぐって強い反発があるというのは、マスコミお得意のバランスを取るために書かれた文章だという気もするのですが、もし本当ならばコミュニケーション不足ですね。

 ただ、今日の昼頃どこかのチャンネルのTVニュースで言っていたのですが、販売される時にはクローンの表示はされないということに関しては、異議があります。

 私はクローン動物を食べてもまったくなんの問題もないと思いますが、知らされないということに大きな問題があると思います。消費者は販売される商品の中味を知る権利があります。クローン牛やクローン豚を売ってもかまいませんので、表示だけはしっかりして消費者の選択する権利だけは保障してください。

 そうでなければ、販売にも反対したいと思います。
by stochinai | 2006-12-29 20:25 | 生物学 | Comments(0)
 あちこちのブログで書き納めとともに、今年を回顧するエントリーが多くなっているようですが、私は今年を振り返る気分にもなれないので、来年への期待を書いて見たいと思います。勢いで(1)と書いてしまいましたが、(2)以降が書かれるかどうかはまったく不明です。

 タイトルだけを見て、すべてをお察しの方も多いでしょうが、ワープロソフトによって文書ファイルの互換性がないという状態から解放される展望が見えてきたので、ここで一気に進んで欲しいという期待です。

 現状は、コンピューター文書の互換性がまったくないため、フォーマットされた書式が文書ファイルとして配布されている場合でも、そのファイルを読み書きできるソフトウェアを所有していなければ使えません。我々に直接関係の深い科学研究費補助金(科研費)の場合は、申請書類ファイルは同一のものがpdfファイル、Windows版MS-Word 2002形式ファイル、Windows版一太郎Ver13(jtd)形式ファイル、Macintosh版MS-Word 2001形式ファイル、それにLaTeX形式ファイルで配布されています。

 pdfは文書を読むだけのものですが、読むためのリーダーが無償で配布されていますので、あらゆるOSの下で互換性のある文書として利用することができます。

 それに対して、他のファイルはOS、ソフトウェアおよびそれらのバージョンによってさえも互換性が保たれていないばかりでなく、MS-Wordや一太郎は購入しなければ使えません。一方で、オープンオフィスなど無料でダウンロードできるフリーのオフィスソフトウェアの完成度が上がってきましたので、それを使いたいと思う人も多くなってきているはずです。とりあえずは、文科省などがオープンオフィスのフォーマットで文書を用意してくれれば、誰もがフリーのソフトウェアを使えるようになるのですが、そもそもソフトウェア毎に形式の異なるファイルを用意するということ自体が、極めて後ろ向きの手法だと思います。無駄な仕事といっても良いでしょう。

 そこで、出てきたのがオープンドキュメントという形式です。つまり、どんなワープロソフトでも、共通の形式のファイルを読み書きできるようになっていれば、pdfファイルと同じようにたった一つのファイルを用意するだけで、ソフトの違いを意識せずにファイル交換ができるようになります。pdfファイルに関しては、アドビのアクロバットを使わなくてもpdfファイルを出力できるものもありますので、とりあえずはそんなものをイメージすれば良いのかもしれません。

 折しも、ウィンドウズがXPからVistaへとバージョンアップされ、オフィスも同時にバージョンアップされるようです。これを機会に、値段の高いウィンドウズから無料のLinuxへと乗り換えたいという人も増えているはずです。

 LinuxでもオープンオフィスやFirefoxが使えますので、ウィンドウズからの乗り換えもどんどん敷居が低くなってきていると思います。最後に残った文書ファイルの互換性が確保されたならば、ここで一気にユーザーが増えるような予感もします。オープンドキュメントはすでに実用化されており、オープンオフィス2.0で採用されているばかりではなく、Googleのネットで使える無料のワープロWritelyで対応しています。また、確認はできませんでしたが一太郎2006でもモジュールを追加することで読み書きできるようです。

 一方、Vistaと同時にバージョンアップされるWord2007も、オープンドキュメントに近い形式のファイルを読み書きできる機能がついているらしいのですが、さすがマイクロソフトですからオープンドキュメントファイルの読み書きは(直接には)できないようです。他のソフトのほうで、こちらのファイルを読み書きできるようにするのは容易かもしれませんが、マイクロソフトのことですから、わざと他のソフトには無い機能を入れたファイルを作るようになっているに違いありません(想像です^^;)。

 世界各国・各地の公的機関で文書ファイルとして、オープンドキュメントを正式採用する動きもあるようです。公的機関の公式ファイルが特定の私企業の製品ソフトで配布されるというのは、いかにもおかしなことだと思いますので、日本政府でも一刻も早くオフィスソフトは無料のオープンオフィス、文書はオープンドキュメントということにして欲しいものです。日本中の公的機関から、マイクロソフトのオフィスと一太郎がいらなくなるだけで節約できる税金の額は、何十億円ではきかないのではないでしょうか。

 オープンオフィスとオープンドキュメントに関しては、こちら「OOoで実現!次世代オフィススイート活用法」をご参照下さい。
by stochinai | 2006-12-29 18:11 | コンピューター・ネット | Comments(2)

手にメモを書く若者

 最初に見たのは、1990年代の後半だったような記憶があります。最初に学生がそうしているのを見た時にはショックを受けたのですが、最近はかなり多くの人がそれをやるようになっています。というか、一時期に比べると減っているのかもしれないと思うこともあります。

 今は30代前半くらいの人でもする人がいるような気がしますが、年齢が上がっていくとともに、やらなくなるものなのかもしれません。

 確かに、手をメモ代わりに使うという発想は革命的というか、ペン以外はなにも道具を必要としないので、メモ帳としては最高のものなのかもしれません。人によって場所に微妙なこだわりがあるのかもしれませんが、多くの人は目に付きやすい左手の親指の甲側根元あたりや手の甲の真ん中、あるいは人目が気になる人は親指の内側根元付近に書く人が多いようです。

 ボールペンやサインペンで書きますので、お風呂にはいったりあるいはよほど一所懸命手を洗わない限り消えないと思いますし、一日以内にしなければならないことのメモとしては素晴らしいものと言えます。

 少なくとも我々が学生の頃にはよほどの変人でもなければ、そんなことをする人はいなかったと思います。いつ頃から広まったのでしょうか。最近はタトゥーを入れることにも抵抗のない若者も多くなっているようですが、この肉体メモに抵抗がなくなってきたことと、タトゥーの広まりとは関係があるのでしょうか。

 いろいろと疑問はあるのですが、ともかく手にボールペンやサインペンで字を書くという作業を見ていると、インクの中に含まれているであろう有機溶媒などの悪影響のことが気になっている私なのでした。(何か、悪影響を経験された方はいらっしゃいませんか?)
by stochinai | 2006-12-28 23:03 | つぶやき | Comments(11)
 今日届いた村上龍のJMMメールマガジンによると、ネットによるビデオ配信の可能性を探るべくビデオレポート・マガジンRVR(Ryu's Video Report)が始まるそうです。

 特に新しい手法を使うわけではなく、メールマガジンで案内を出してビデオの閲覧はインターネットでしてもらうということのようです。

 JMMのメールマガジンは中味が濃いのですが、濃すぎて全部読むのはなかなかしんどいものがありました。同じくらいの濃さのものを映像で流しながら見聞きできるというのは、とてもありがたいことです。

 すでに、村上龍による案内のほかに、「ジーコジャパンとは一体何だったのか?村上龍と3人の指揮者が振り返る(全編)」「韓国映画イム・チャンサン監督」「中田英寿引退を語る」という3本のビデオがアップされています。

 こういうものが無料で配信されるようになると、テレビ局もうかうかしていられなくなると思います。

 2006年の年末あるいは2007年の年始を飾る、グッドニュースですね。
by stochinai | 2006-12-28 22:22 | コンピューター・ネット | Comments(1)

季節が変わるGoogleマップ

 つまらないことかもしれませんが、意外とおもしろい情報をひとつだけお教えします。

 札幌の奥座敷と言われることもある定山渓温泉のさらに奥に、豊平峡ダムがあります。別に、どこでも良いのですがたとえばGoogleMapで「豊平峡ダム」を検索してみてください。

 豊平峡ダム 航空写真表示にすると、ちょうど今の季節に合った雪景色のダムが見えます。

 ところが、この地図の倍率を下げていくと面白いことが起こります。私のブラウザの設定によるのかもしれませんが、初期画面よりも(-)を4回クリックすると、寒々とした冬の画面から、突然緑あふれる山の風景に切り替わります。

 どうして、このあたり(石狩湾から樽前山までの帯状の地帯)の大きめの倍率だけが冬になっているのか良くわかりませんが、今の季節にはぴったりです。

 一回だけは、楽しめると思います。
by stochinai | 2006-12-28 16:43 | 札幌・北海道 | Comments(6)

論文ねつ造は懲戒解雇

 先日の大阪大学の論文ねつ造の「主犯」教授の懲戒解雇に続いて、東京大学でも論文ねつ造の「主犯」として、教授と助手が懲戒解雇されたということです。

 大阪大学のケースは、9月に研究科教授会が懲戒解雇を大学に求めていたのですが、教授が大学に不服審査を申し立てていて、その結論が20日に出たというものでした。今日のニュースでは東大の工学系研究科が懲戒解雇したという結論が発表されたものですが、教授の弁護士は実験担当者ではない教授を懲戒解雇するのは妥当ではないとして法的措置を検討しているそうですし、助手は処分が重すぎるとして地位保全の裁判を起こすと言っているようです。

 しかし、今回の処分の決定が前例となって、今後は国から多額の研究費をもらっている研究者が、影響力の大きな学術雑誌にねつ造論文を投稿して掲載され、後にそれがねつ造だと発覚した場合には、今後は同じような処分がなされることになるだろうと思われます。特にお金をもらっていない研究者が、誰も読まないような論文をねつ造したとしても、誰にも気づかれないということもありますが、同じような処分がなされるかどうかはわかりません。しかし、影響力の大きなものが優先的に処分されるということは不公平ではないと思います。

 科学研究における不正は発見することが難しいだけではなく、そもそもinoue0さんがおっしゃるように歴史的に見ても、ねつ造されたデータを使って構築された科学理論が科学の進歩に貢献した例など、実にたくさんあるのです。つまり、論文のねつ造がそのまま反科学的結果になるかどうかははっきりしていない事柄だと思います。またねつ造ではありませんが、誤った情報や信念に基づいてなされた大発見も枚挙にいとまがありません。

 さらには、ねつ造と間違いは紙一重というか、判別することすら難しいケースが多いのです。特に、今回問題になっている両ケースともが生物科学の研究であったということは単なる偶然ではなく、生物が絡む現象は厳密に言うと、まったく同じことが起こるということは決してありませんから、ある結果が偶然なのかねつ造なのか間違いなのか正しいことなのかについて簡単に判断を下すことができないことが多いのです。

 逆にいうとそういう性格を持った生物学研究では、何回か同じような実験を繰り返すことや、ポジティブ及びネガティブな結果が期待される対照実験をきっちりと用意することが要求されているのです。そうした手続きをきちんと採っていなかったということが非難されるということならばそれは妥当であり、今回の両者のケースにおいても基本的にはそうした点がチェックされているのだと思います。この点は本来、投稿された論文が雑誌に掲載されるかどうかを判断するプロセスで行われるものなのですが、ねつ造があるとそのプロセスが正常に機能しなくなりますので、論文掲載までの過程で、そうした妨害行為があったかどうかという点が審査され、その結果処分されたということならば、今回の処分は科学者コミュニティのとった態度としては正しかったと思います。

 ただし今回の処分が対症療法としては正しかったとしても、根本的病根には手を付けられていないことも指摘しておかなければなりません。

 多額の研究費を取り、たくさんの大学院生・PD・教職員などを動員して行われるビッグプロジェクト研究では、途中で研究費が途切れることはリーダー一人ががっかりしてすむようなことではなく、たくさんの人々の現在と未来に大きな影響が及ぶ「事件」になります。そんな状況の中で、決して悪意からではなく、仕方がなくあるいはむしろ善意から研究費の継続を願ってついつい論文のねつ造に手を染めてしまう悪魔のささやきが聞こえてしまうという現在の研究体制(それは日本だけの問題ではないのかもしれませんが、少なくとも日本国内の研究費配分のしくみはそうなっています)を何とかしない限り、同じような事件が起こる芽はつみ取られていないということを覚悟しておかなければなりません。

 いくら処分というムチでしばってみても、必ずそれをすり抜ける悪賢い人間は出てくるものです。また、そのムチの存在によって、冒険をして新しい分野へと研究を展開していこうとする研究者を萎縮させてしまうということも否定的な効果も生まれるでしょう。

 時間がかかったとしても根本治療を始めるべき時だと思うのですが、やらないでしょうね。
by stochinai | 2006-12-27 23:56 | 科学一般 | Comments(7)

異様な暖かさの年末

 日本の中央部に雨を降らせている低気圧の影響なのでしょうか。今日の札幌は、1ヶ月以上も前に戻ったような気温だったようです。最高気温6.8℃。明日は、8℃まで気温が上がりそうだという予報が出ています。おまけに大雨もやってくるようなので、雪がすっかり融けてしまうかもしれません。

 完全に融けてくれれば良いのですが、融けきらないところで気温が下がり始めると最悪のツルツル状態になってしまいますので、この時期の雨はそれが心配です。

 このところ、札幌では小規模な交通事故が激増しているようで、私も毎日1~2件の事故場面に出くわします。不幸中の幸いは、路面が悪いのでスピードを出している車が少なく、事故は多いもののそのほとんどが小さな接触事故程度のものです。

 大学も冬休みになって学生の数は激減しましたが、研究室周辺は卒業を控えた4年生、修士・博士の大学院生が普段にもまして一所懸命に実験と論文書きに励んでいますので、冬休みの雰囲気はあまり感じられません。

 ここから、1月いっぱいが競馬で言えば第4コーナーを回って最後の直線というところですから、走っている当人達には年末・年始も今年はおあずけということだと思います。

 普段からしっかりやっておけば最後にあわてずにすむものを、というのはあくまでも外野席の観客の言葉にすぎません。普段からしっかりやってきた学生も、そうでない学生も、この時期には目の色が変わり、生活が不規則になり寝不足になるものなのです。

 当人達は間違いなく大変な思いをしているのですが、それを味わうことが、この後何十年も記憶に残る「青春の思い出」になるのですから、良い思い出になるように悔いのないフィナーレを飾って欲しいと思います。

 私ができることは、研究の仕上げのお化粧のところだけですので、自分の力で生み出したもの以上にしてあげることはできません。そのかわり、研究の成果はすべてが自分の力で勝ち取ったものだという満足感は得られると思います。

 得られるものは満足感だけかもしれませんが、満足感を得るためだけに自分のすべてを賭けられるのも学生の特権でしょう。もう一息、やれるところまでやってみましょう。途中で力尽きたとしても、失うものなど何もありません。

 たかがサイエンス、されどサイエンスです。
by stochinai | 2006-12-26 22:59 | 札幌・北海道 | Comments(2)
 今やプレゼンをするのに、100人のうち95人くらいはパワーポイントを使っているのではないかと思いますが、「キャズムを越えろ!」の和連和尚さんが、パワーポイントを使ったプレゼンを見ながらイライラしている様子が伝わってきて、思わずうなずいてしまうエントリーを書いておられます。

 私とて、それほどのパワーポイントの使い手というわけではないのですが、常日頃他の人のプレゼンを見ていて、イライラ・ジレジレ・オイオイという気分になることが多いので、このエントリー「たったの5つ! これだけは覚えておきたいCoolなプレゼンのためのショートカット・キー(MS PowerPoint用)」には大共感でした。

 ここに書かれているのは、まさに技と呼ぶに値することばかりなのですが、ここにも書かれていない初歩の初歩、スライドを送ったり戻したりが矢印キーでできるということを知らない人もたくさんいるので泣けてきます。

 一枚スライドを戻すのさえも、マウスでメニューを出して「よっこらしょ」とやっているのを見ると、どんなに素晴らしいプレゼンを聞かされている時でも、冷めてしまうものです。厳しいプレゼンの最前線では、ソフトの操作でもたついた時点で鐘が一つ鳴っておしまいです。

 そこで、紹介されているどれもがスゴイ技なのですが、取りあえずのお勧めは次のものです。

(編集中に)SHFT+F5
  ○意外に知らない人が多い。今編集中のページからスライドショーを開始することができる。質疑応答などで編集画面に戻った際、速やかにスライドショーに復帰できる。画面左下のちいさいアイコンを苦労してクリックする必要は、今日から無くなる。

 確かに、途中からスライドを始めようとして、ファイルメニューからスライドショーの実行をクリックして、一枚目に戻ってしまう人って多いですよね。画面の下にある、小さなアイコンをクリックし損なう人もいます。シフトF5で、選択したスライドから始まるのはスマートでオシャレです。ちなみに、ただのF5は1枚目からのスタートになります。
(スライドショー中に)B
 ○意外に知られてない。プレゼン中にスライドではなく講演者に視線を集中させたい際に使う。『さて皆さん、これらのデータを見て、どう感じましたか?』などと会場に問いかける時などに活用すると効果的だ。ちなみに適当なキーを押したりマウスクリックしたりすると解除される。同様にWキーだと真っ白の画面となる(White,Blackの略と覚えるとよい

 これを使った人はまだ見たことはありませんが、意外とカッコ良いものだと思います。画面を真っ黒にするのがBだとは知っていたのですが、元に戻すのがWだとばかり思っていました。元に戻すのは任意のキーだったのですね。Bが暗転、Wが明転、任意のキーでスライドに戻るです。とてもわかりやすいです。
(スライドショー中に)CTRL+P
 ○ペンモードに切り替えることができ、マウス操作でスライドに手書きすることができる。これさえあればレーザーポインターいらずである。『えーここです、この部分』といってペンで丸囲いすることができるのだ。

 これも、なかなかカッコいいです。ペンでうまく字や線は書けませんが、画面に汚い軌跡が残りますので、注目してもらうにはとても強い効果があります。

 このくらいを使いこなすだけで、パワーポイントの印象は30%~50%アップするのではないでしょうか。

 ちなみに、私は最近こんな小道具を手に入れて楽しんでいます。要するにレーザーポインター付きの無線マウスなのですが、パワーポイントの開始(F5)と終了(Esc)、ページ送りと戻し(矢印キー)、そしてあまり実用的ではありませんがマウスの移動のためのジョイスティックと右クリック、左クリックボタンのついた小物です。

 これを持っていると、いちいちコンピューターのところまでもどって、マウスでコチョコチョを繰り返しすことなく講義を進めることができます。今のところは物珍しさもあって、学生の気を惹くことに成功していますが、こういう小物を使う時には操作にとまどったりすると逆効果になるので、しっかりと使いこなせるようになる前にデビューすることだけは避けたほうがよろしいようです。
by stochinai | 2006-12-25 23:43 | コンピューター・ネット | Comments(6)

日の暮の背中淋しき紅葉哉            小林一茶


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