5号館を出て

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被害者は誰?

 朝日記事

 鳥取・岩美「かんぽの宿」 1万円で入手し6千倍で転売

 いろいろな経費はかかったでしょうが、1万円で入手した旧「かんぽの宿 鳥取岩井」が6千万円で売れたのですから、これを手に入れた東京の不動産会社はほとんど何もせずに5999万円を儲けたことになります。法的にはまったく問題がないとしても、商道徳という見地から見ると明らかに黒い取引だと思います。

 1万円で売ったのは旧日本郵政公社です。1978年に郵政省が建てたということになるのでしょうが、「4階建て、延べ4219平方メートルで建設され、土地は1万3000平方メートル」ということですから、どう見ても数億円以上はかかったのではないでしょうか。もちろん売却の理由として、営業赤字の連続計上があり「05年度に2700万円、06年度にも4200万円」ということですから、持っているとどんどん損が膨らむので、(1万円という売値はさておき)売却は納得できる処置ではあります。

 「かんぽの宿」という名前から、これは郵政省が簡易保険の運用で得た利益で建てたものだ思いますので、本来は簡易保険の利用者に還元すべき利益を旅館運営に宛てたものの、失敗したということだとすると、簡易保険の利用者が損害を受けたということになるのでしょうか。

 旧郵政省は私企業ではありませんので、得られた利益は国民全体に還元されるべきものだと思いますし、逆に損を出した場合には国民全体に対して責任をとるべきということになると思います。

 いずれにせよ、たとえ「かんぽの宿」が失敗だったとしても、それをたった1万円で売却したという感覚はまったく信じがたいもので、国民全体が得るべき5999万円をみすみす1不動産会社に献上してしまったようなものですから、その責任は売却担当者に取ってもらいたいものです。

 もちろん、公金の運用をこういう無責任なところに任せていたのは我々国民の監視が足りなかったことも理由のひとつですから、今後そういうことができないような体制を作ってもらえるように政治に働きかけていくことが求められているということでしょう。

 公金を私物化する官僚をコントロールできる政府を作るためにも、1日も早く総選挙をやってもらいたいものです。
by stochinai | 2009-01-31 14:14 | つぶやき | Comments(7)
 BBC NEWS に米軍兵士の自殺が増えているという記事がありました。

 US army suicides hit record high

 2008年のアメリカ陸軍(?US army)における自殺者の数が128名(それプラス調査中が15名)だったそうです。昨年も同じような記事があって、2007年もも記録的に自殺者が多かったというニュースだったのですが、その時で115名です。

 US army suicides at record level

 この時にも、2006年よりも13%増加したということで問題になっていました。今年も増加傾向が続いているということです。

 もちろん、背景にイラク・アフガニスタン戦争があるわけですが、派兵される前に自殺した人が35%、派兵中に自殺した人が30%(そのうちの4分の3が最初に派遣された時)、そしてアメリカ帰還後に自殺した人が35%です。原因はいろいろなところにあるのでしょうが、最初の派兵の時に自殺する人が多いということは、やはり戦争という現実を目の当たりにして耐えられなくなったということなのかもしれません。ニュースなどを見ていると、米軍の兵士は勇敢にどんどん殺戮をしているように思えますが、この自殺者の数を考えると彼らの多くも「普通の人」なのだろうと感じます。

 もちろん誰だって殺されたくないでしょうが、「普通の人」ならば殺すのもいやなはずです。アメリカの兵士の多くは、不法移民やアフリカ系などの貧しい階層の人だと聞きます。アメリカの正義を信じて戦争に参加するというよりは、貧困から逃れるための手段として軍隊に参加した人にとって、本当に殺したり殺されたりする戦場で平気でいられるはずはありません。これだけ自殺する人が多いということは、その寸前まで心を病んでいる人がその何十倍もいるのではないかと推測されます。

 それを考えると、400人の子どもを含めたガザの人々を1300人以上も殺したイスラエルの兵士の中にも心を病んでいる人がたくさんいることが推測されます。

 たとえ勝ったとしても、死にたくなるような結果になるのだとしたら、やはり戦争はヒトという動物にとって受け入れられるものではない異常行動なのでしょう。

 権力闘争としての戦争で国レベルでは勝ち負けが決まったとしても、それに参加した兵士は両軍ともに敗北ということになる気がします。だとしたら、兵士にとってそれは自分のための戦いではないでしょう。

 戦争なんて、やっぱり愚かすぎます。

【追記】
 戦争をしていない日本の自衛隊でも自殺者が多いことが問題になっているようですね。こちらにまとめがあります。

 自衛隊員の自殺が止まらない

 戦争をするために存在する軍隊という組織そのものにも問題がありそうです。
by stochinai | 2009-01-30 20:47 | つぶやき | Comments(8)
 進化から見た病気 (ブルーバックス)

 発売から10日ほど経ちましたが、アマゾンにようやくカスタマーレビューを書いてくださる方が現れました。hjfyx771さん、ありがとうございました。

 すべて(といってもまだ1件ですが)のカスタマーレビューを見る

 昨日くらいは、本 > 科学・テクノロジー > 生物・バイオテクノロジー > 遺伝子・分子生物学のランキングもだいぶ下がっていたようなのですが、間違いなくこの書評のおかげでまた1位に戻っています。

 hjfyx771さんのレビューでは、「ちなみに最終章最後のメッセージにはサイエンス啓蒙書ながら感動させられた」と書いてあります。まさに、私が本書にすべり込ませたメッセージのひとつをしっかりと受け止めてくださっていただき、私の方が感動してしまいました。

 少しずつ手にとって下さる方からのご連絡もいただけるようになり、昨日は世界最年少の読者から写真が送られてきました。
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 写真のタイトルは「私も読んでいます」だそうです。ありがとうございます。
by stochinai | 2009-01-30 13:38 | つぶやき | Comments(3)
 世界で初めてクローンネコの作成に成功し、ペットのクローンを作りますという会社を作ったアメリカのの企業が倒産したというニュースは、もう2年くらい前の話だったと思います。

 クローンネコよりも難しいとされていたクローンイヌ(Snuppy)もできていたのですが、それを作ったのがあの論文ねつ造で世界的に有名になった韓国のファン・ウ・ソクのグループだったので、こちらは疑いの目で見られていました。しかし、その後そのイヌが本当のクローンだったという論文がNatureに出ましたので、ペットのイヌやネコのクローンを作るビジネスが本格的に動き出すかもしれないという話もありました。

 しかし、数百万円から千数百万円というその作成費用の高さから、なかなか依頼する人が現れないのは当然のことでした。アラブの金持ちが依頼するのではないかという声もありましたが、やはりというべきかクライアントはアメリカ人でした。

 世界初、ペットのクローン犬誕生=その名も「アンコール」-米 (2009/01/29-時事通信)

 とても、かわいらしいラブラドル・レトリーバーの写真や動画があちこちにあります。



 依頼をしたご夫妻も登場しているようですが、「やはり」という感じのお金持ちそうな方です。上の記事では「世界初」となっていますが、同じような話を前にも聞いたことがあるような気がして調べてみると、昨年の夏にアメリカン・ピット・ブルテリアのクローンが一度に5匹も作られていました。こちらも動画があります。



 こちらのクローンは韓国の会社が請け負って成功させたものです。今回のラブラドルはカリフォルニアのバイオ企業が請け負ったということで、「アメリカで成功したのが初めて」ということなのかと思って記事をよく読むと、アメリカの会社は取り次ぎをしただけだということがわかります。
クローンは昨年11月中旬、この分野では先進国である韓国の委託先研究機関で誕生した。同社は研究目的でない犬のクローン再生は世界初としている。
 というわけで、こちらも韓国で実行されたことがわかります。

 昨年、クローンイヌを作ったのはRNL BIO社というところです。会社のサイトには5匹のクローンの写真もあります。では今回やったのはどこなのでしょう。この記事Lancelot Encore is First Commercially Cloned Dogによると、なんと「South Korea's Dr. Hwang Woo-suk performed the necessary steps」と書いてあります。そうです、あのファン・ウ・ソクです。とするとあのSnuppyを作ったソウル大学のチームがやったのかもしれません。

 それにしても、なぜ同じ韓国でやった二番煎じのペットのクローンイヌ作成を「a dog was cloned for commercial purposes for the first time」などと言っているのか不思議です。

 ひとつだけ思い当たることがあるとしたら、昨年のケースでは「RNL BIO社はPR効果を狙い、15万ドルという最初の提示価格を5万ドルに値下げし」ているのです。つまり、これでは営業的に損をしています。今回のケースでは、依頼者が15万ドル(約1350万円)以上の費用を支払ったと報道されています。つまり、営業的に成り立っているというわけです。

 最初に作られたクローンイヌのsnuppyは研究目的、昨年の成功はPRのために赤字、そして今回のものが「世界初」の営業的に黒字を出したケースというわけでしょうか。

 なんだか、あほらしいニュースに思えてきましたが、韓国では想像以上にクローン技術が発展しているのかもしれません。この調子だと、本当にヒトのクローンが韓国で作られそうです。
by stochinai | 2009-01-29 19:50 | 生物学 | Comments(6)

昔の北海道の冬の暮らし

 近くにいるとなかなかいけないものですが、北海道庁の赤レンガ庁舎の2階に小規模なものですが北海道開拓記念館の分室「北海道の歴史ギャラリー」があります。先日行われた理学部の親睦会が始まる前にちょっと寄ってみました。そこで見つけた昔の北海道の冬の暮らしの必需品の数々は、まさに私が子ども時代に使っていたものばかりでした。

 まずは貯炭式と呼ばれるストーブです。
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 塔のようになった部分の上にある光った金属部分が蓋になっていて、そこを開けて石炭を投げ込みます。塔の下のほうに回転式で調整する空気取り入れ口が2つ見えますが、下側が灰がたまる場所、その上が燃焼室です。燃焼室で燃え尽きた灰が下に落ちると、上から新しい石炭が供給されるしくみです。

 燃焼してできた熱い空気は後側にある鍋などを熱する部分を通過して右奥につながれた煙突へと導かれます。後に見える銅色をしたものは、お風呂と同じ原理の湯沸かしです。燃焼室の左右にはやかんなどを保温するための台も用意されており、非常に合理的にできています。右側に置かれた石炭箱からジュウノウ(あるいはジョンバ)と呼ばれるシャベルで石炭を入れるのはおもしろい作業でした。ストーブの右側に置かれた火かき棒はデレッキと呼ばれます。

 冬になる前にはどこの家でもトンの単位で石炭を購入し、「石炭小屋」に貯めておきました。だんだんと石炭が少なくなると広くなってくるのですが、子どもが悪さをすると真っ暗な石炭小屋に閉じこめるぞ、とおどされたのも懐かしい思い出です。

 石炭を燃やすと、ものすごい煤煙がでますので、昔の札幌の雪は白くはありませんでした。スズメも寒いと煙突にもぐり込むので冬は真っ黒になっていました。とんでもなく環境を破壊していた暖房器具だったと思います。

 夜に寝る時にはストーブは消しますので、室内も零下になってしまうのが普通でしたから、布団の中には暖房が必要です。最近、リバイバルしている湯たんぽですが、私が使っていたのは陶器だったと思います。湯たんぽのお湯は朝はぬるくなっていますが、顔を洗うのに使いました。
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 湯たんぽに変わって登場したのが、その左側にあるアンカです。豆炭という成型炭に火をつけて中央に置いて折りたたんで使います。不思議に朝まで火が持ちました。出た当時はハイテク製品だったのですが・・・。

 子どもは風の子ですから、どんなに寒くても外で遊びます。今なら民芸品仕様ということで高価に売れるかもしれない写真のようなそりはどこの家にもあったものです。先端にヒモをつけるリングがありますが、そりを犬にひかせていたおじさんもいましたね。
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 写真の右下に片方だけ写っているのは、「雪スケート」です。スケートリンクなどというがほとんどなかったので、子ども達は雪スケートを長靴やスキー靴にしばりつけて、固まった雪の上をすべっていました。雪に埋まらないようにブレードが幅広くなっているのが特徴です。

 こんな時期から、半世紀が過ぎてしまったんですねえ。
by stochinai | 2009-01-28 17:52 | 札幌・北海道 | Comments(2)
 今朝の朝日新聞の記事に目がとまりました。

 患者団体が1型糖尿病研究を助成 根治療法開発めざす

 日本では研究をサポートしてくれるのは、ほとんどが政府系それも文部科学省を中心とする財源です。もちろん、医学系の研究ならば厚生労働省や企業からの研究費も期待できます。しかし、政府系の研究費にしても、大企業系の研究費にしても、結局は「国民の声」や「消費者の声」という多数派を代表することになってしまうのは、「資本主義」あるいは「民主主義」というものの限界なのかもしれません。

 そんな中で、自分たちを悩ませている病気を治すための研究をして欲しいということで、患者さんを中心とする組織が直接研究助成に乗り出したというニュースは、ブレークスルーを感じさせてくれるものでした。

 患者団体が1型糖尿病研究を助成 根治療法開発めざす 
 1型糖尿病に苦しむ患者や家族らでつくるNPO法人「日本IDDMネットワーク」(井上龍夫理事長)は根治療法の開発を推進するため、研究者らに助成する仕組みをつくった。
 従来ならば、インフルエンザなどと比べるとある意味で「少数派」であるこうした疾患に対する研究を進めて欲しいという場合には、まず政府へ陳情し、政府は国民の声を斟酌しながら、研究費の配分にそうした声を反映させようとするのだと思います。

 しかし、そういうシステムだと特殊なケースを除き、政府は「こういう研究をしてくれる人には研究費を出します」というような言い方をせずに、研究費を申請してくる研究者の中にたまたまそうした研究に近い申請があった場合に、研究費を配分するというようなきわめて受動的な姿勢にならざるを得ません。その結果、患者さんやその家族の訴えはなかなか研究者のところにまで届かないというもどかしさがあるのだと思います。

 そこで、こんなことではいつまでたっても研究者は自分たちの望む研究をしてくれないという危機感を持ったのでしょう。患者さんやその家族の方々が基金を創設し、それを自分たちが望む研究をしてくれる研究者に配分するという行動に出ました。

 現行の研究費配分法にさまざまな異論がある中で、こうした動きは非常に好ましい一石を投じてくれるのではないかと期待しています。

 最近ではバイオ系の大型研究費は数千万から数億、場合によっては十数億から数十億という規模になってきていますので、今回の基金が提供する200万円というお金は、リッチな研究室にとっては何の魅力も感じられない額だとは思いますが、一方でたとえ50万円100万円でも非常にありがたいと思ってくれる研究室があるのもまた事実です。

 医学研究をする研究室はどちらかというと前者が多いのだろうとは思いますが、患者さんから直接受け取る100万円のお金には、数千万円の研究費にまさる「何か」が込められていることも感じます。受け取る研究者は、文科省からの数千万円の研究費よりも責任感を感じていることだと思います。

 また、こうした動きが将来的には大きな基金へと発展する可能性も期待したいところです。政府や大企業を通さない新しい研究費配分モデルとして、病気の克服などのような研究成果を直接期待する利害関係者を越えて、すぐには問題解決へとつながらないような基礎研究までをもサポートしてくれる、イギリスのウェルカムとラストのような財団が、日本にもできるかもしれないという夢を見させてくれるニュースだとも思いました。

 ただし、そのためには科学者の側からも直接市民に研究のサポートを訴える行動が必須だと思います。そもそも基本的には、間に政府が入っていようといまいと、国民に基礎研究の重要性を理解してもらえなければ、税金や寄付を財源とする基礎研究活動などはできなくなっても当然なのでしょう。そういう意味では、現状で科学者の側からの働きかけがあまりにも少ないことを恥ずかしく思わされるニュースでもありました。

 まあ自業自得とはいえ、たとえ50万円でも「何の役にもたたなさそうな研究」に資金を提供してくれる「市民グループ」が現れるなどということは、現状では夢のまた夢だとは思います。しかし、そうしたことを実現するモデルを模索することも必要だと思う、今日この頃なのでした。
by stochinai | 2009-01-27 20:55 | 科学一般 | Comments(13)

カエルの電車ごっこ

 アフリカツメガエルを飼育している人にはおなじみの光景かもしれません。オスとメスと隔離して飼育していると、オスの水槽では時々おもしろいことが起こります。

 オスが発情が最高潮に達すると、相手がメスでなくても抱きつくことが良くあります。これはオスがオスに抱きついたペアです。
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 一見、普通のオスメスのペアのように見えますが、抱きつかれている方の手のひらの内側が真っ黒になっているので、オスだということがわかります。

 まあ、これくらいなら特にどうということはないのですが、時にはこんな電車ごっこになってしまいます。
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 これを前からみたところ。まことに真抜けた脱力感あふれる光景です。
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 日がだんだんと長くなってきたのを感じての行動だと思います。

 春もそう遠くないですね。
by stochinai | 2009-01-26 21:13 | スマイル | Comments(8)
 タミフルというのは不運な薬なのかもしれません。今年は、世界中にタミフル耐性のインフルエンザウイルスが蔓延しているようです。

 私のサイトでも繰り返しタミフルについては言及してきました。カスタム検索してみると10件もあります。

 5号館のつぶやきで「タミフル」を検索

 一昨年は異常行動が問題になり、10代への使用中止が決まり、昨年になって安全宣言をしたと思ったら、そのデータ解析に問題が発覚して、中止が継続されているところへ、この冬はタミフル耐性ウイルスの大量発生です。

 札幌の保健所の調べによると「インフルエンザウイルスの検体検査をして100検体のうち9割がAソ連型そのほとんどがタミフル耐性だろう」ということです。

 札幌テレビ放送(2009年1月26日(月)「どさんこワイド180」)

 不思議なことにタミフルと同様に、ウイルスのノイラミニダーゼという酵素を阻害することによってウイルスの増殖を抑える働きをするリレンザという薬はこの耐性ウイルスにも効果があるとのことです。同じ酵素をブロックするために結合する場所がタミフルとリレンザでは異なっており、タミフルの結合部位には変異が起こり、そのことで結合力が弱まり耐性になりやすいのに対して、リレンザの結合部位には変異が起こりにくいことがその原因のようです。

 私の「進化から見た病気」にも書いてあるように、ウイルスや細菌、時には農作物の害虫、がん細胞でさえ薬物で対処しようとすると、必ず「耐性」が進化してきます。

 ところが、今はやっているAソ連型がタミフルがほとんど使われていない国でも耐性ウイルスが大量に発見されています。つまり、今回の耐性の出現はタミフルの使用とは関係なく発生した変異が原因ではないかと考えられています。とはいえ、耐性ウイルスが出現した後でタミフルを使うということは、タミフル耐性ウイルスを選択的に生き延びさせる(非耐性ウイルスを選択的に減少させる)ということになりますので、耐性ウイルスが出現してしまった以上、基本的にはタミフルを使うべきではない状況になったということだと、私は考えます。

 タミフル耐性ウイルスにはリレンザが効くといっても、タミフルが効くかどうか試しているうちに、リレンザの有効期限である感染から48時間以内という時間が過ぎてしまうという恐れもあります。

 というわけで、今年のインフルエンザにはタミフルを使うべきではないということになるでしょう。

 ところで、「新型インフルエンザ」対策と称して大量に備蓄しているタミフルですが、そちらが今回のAソ連型のような耐性を獲得してしまったらどうしたら良いのでしょう。Aソ連型では、こんなに簡単に耐性が出現したのですから、そちらも覚悟して別の方法を考えておいたほうが良いということにならないでしょうか。

 タミフルには不幸なことでしたが・・・。
by stochinai | 2009-01-26 20:39 | 医療・健康 | Comments(0)

研究室間格差

 別に今に始まったことではないのかもしれませんが、最近はとみに研究室間の経済格差が大きくなってきているのではないかという話が昨日の会議の中でも聞かれました。

 学会の年次大会以外に、シンポジウムとかワークショップさらには国外学会へ日本の学会として組織的に参加することを呼びかけても、参加できるのは限られた大学や研究所の限られた研究室からだけということが多くなっているのだそうです。

 昨今、研究費でもかなり苦しい思いをする研究室が増えてきました。日常的に研究室で使うお金に比べると、それなりの数の教員・学生がまとまって学会に参加するには結構大きなお金が必要になります。

 昔、高校の理科の先生が「研究費」という名目で使えるお金が年間数万円から十数万円くらいだという話を聞いたことがあり、さすがにそれではできる「研究」に大きな制限がかかってしまうと思った記憶があります。

 それが、最近では大学の理学部の研究室でも、年間研究費が50万円くらいしかないところも珍しくないという話も聞きます。外部研究費を獲得できなかった場合には、自分のポケットマネーを研究費に使っているという方の話もそんなに珍しくありません。

 学会の旅費も、学生には研究費から旅費を出すものの、自分は私費でとか、あるいはそれほど遠くない場所ならば、ラボ全員が教員の車で移動することもあると聞きます。

 一方で、使い切れないくらいの研究費が潤沢にある一握りの研究室もあります。そうした研究室では、最先端の機器をそろえ、高価なキットもどんどん使って、バリバリと研究が進み、学会やシンポジウムはもれなく出かけ、学生でさえ海外の学会に派遣してもらえるというところもあるようです。もちろん、こうした研究室からは国際レベルの業績もどんどん出ますので、研究費は継続的に維持されます。

 一方で、大多数の研究室がプア・ラボとして、恒常的な研究も維持できないほど追いつめられているのだとしたら、数年先さらには十数年先の日本の科学研究は確実に先細りになるでしょう。なぜならば、次の時代を担う萌芽的研究の多くは現在主流ではないところから出てくるものだからです。

 おまけに高学歴プアになることをきらい、研究者になることを希望する学生がどんどん減ってきています。今は、博士後期課程に進む学生が減少していることの影響は弱小ラボの方にに顕著に出てきているかもしれませんが、遅かれ早かれその影響はビッグ・ラボにも及ぶでしょう。

 底辺層をプアにしてしまうと、いずれ上部層も崩れてしまうことは、ちょっと想像力の働く人ならばわかることだと思うのですが、日本の科学教育政策担当者にはそうした想像力が欠如しているのでしょうか。

 日本の科学シーンが枯れ野になっている未来が見えてしまうのは私だけでしょうか。
by stochinai | 2009-01-25 23:02 | 科学一般 | Comments(42)

福岡伸一と福岡伸一の間

 週間金曜日さんもごらんになった、今朝の新聞広告の効果でしょうか。

  アマゾンのベストセラーランキング、本 > 科学・テクノロジー > 生物・バイオテクノロジーの順位です。
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 たとえ、一瞬のうたかた(泡沫)だとしても、悪い気分はしないものです。
by stochinai | 2009-01-25 17:46 | その他 | Comments(0)

今日二つ三つ朝顔の通り道          稲畑廣太郎


by stochinai