5号館を出て

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自分で起こす突然変異

 気温はどんどん下がってきています。おそらく、真夜中の外気温は1℃か2℃だと思います。時折、空から降ってきているものは、雨ではなく雪です。風もかなり強くなってきました。

 今日の講義の後は、明日のゼミで紹介する論文を読んでいました。

 9月頃に出た論文なのですが、ウイルスのおもしろい生き方についての研究です。

 百日咳のバクテリア(細菌)に感染して、内部で増殖し百日咳を破壊してしまう、正義の味方(?)ウイルスの話です。

 百日咳は免疫ができやすく、乳幼児期に一度かかるか、そうでなくてもワクチンが非常に効果的に効くので、それほど問題になっていることもないのですが、ヒトに悪さをする細菌を殺してくれるウイルスは、納税者にも説明しやすい研究対象かもしれません。研究が進んでいるようです。

 そのウイルスが、百日咳菌に感染する時には、細菌の表面にある毒素に結合して侵入します。一方、百日咳菌はときどき毒素を作らないタイプに変異してしまうので、その時には毒素を介したウイルスの感染も起こらなくなると思われていました。

 ところが敵もさるもので、毒素を作らなくなった百日咳菌に感染できるようにウイルスも変異することがわかりました。

 それだけなら、自然界に良くある進化競争のひとつとして片づけられるのですが、そのウイルスの変異の仕方がなんと驚くことに、自分で自分の遺伝子を変異させるカセット遺伝子を用意していて、時に応じてそのカセットから遺伝子を呼び出して、それまで使っていた遺伝子の部品を交換して変化させているということがわかりました。

 毒のない百日咳菌に感染できるようになったウイルスは毒のある菌に感染する力はなくなってしまうのですが、百日咳菌が毒性を回復すると、また例のカセット遺伝子を呼び出して自分の遺伝子を組み換えて、毒性菌に感染できるように復帰もできるというのです。

 現代の進化論は、突然変異はランダムにしか起こらず、ランダムな突然変異の中から適応的な遺伝子を持った個体が自然の力で選択させることで進化が起こると説明しています。

 ところが、ウイルスの研究から、特定の場所に特定の突然変異を引き起こすことがあり得ることが示されるようになってきました。つまり、生物に都合の良い突然変異を起こしうるということです。

 しかも、今回ウイルスで発見された突然変異を引き起こすカセット遺伝子が、ウイルスのみならず、もう少し高等なシアノバクテリアという光合成細菌にあることもわかってきました。

 長い間不思議に思われてきた、合目的な進化というものを期待させてくれる発見なのかも知れません。

 生物というものは、本当に底知れない存在です。
# by stochinai | 2004-11-15 17:45 | 生物学 | Comments(3)

雪がこい

 日頃の行いが良いせい(?)で、今日は一日暖かい小春日和でした。

 というわけで、予定通りに庭木の冬支度を終えることができました。こちらでは、竹で支柱を立てて荒縄などで雪に負けないように木の周りを囲うので、「雪囲い」という処置をするのが一般的なのですが、私のはかなり簡易バージョンです。

 基本的にツツジなどの小さな木には雪囲いをしなければならないのですが、数年前から意識的に雪に負けない枝の張り方をするように剪定をしています。それで、多くのものは竹の支柱を必要としないような枝ぶりになってきていますので、木を縄でグルグル巻きにするだけです。縄もワラでできた荒縄ではなく、5ミリくらいのビニール(PPと書いてあるのでポリプロピレンかな)のロープです。安いし丈夫だし、害虫の住みかにもならないので、廃棄物問題を考えなければかなりの優れものです。

 私が慣れてきたせいもありますが、一昨年くらいまでは2日かかっていた庭木の処置が、今年は一日で余裕を持って終わりました。

 その後は、ビールを飲んで昼風呂にはいってノンビリと休息。

 夜は、明日の講義のや明後日のゼミや某出版社のゲラなど各種の雑用が気になりつつも、DVD鑑賞。

 「フォーン・ブース」という、舞台でも使えそうな小品でしたが、楽しめました。出演者も声だけの電話の相手と、電話ボックスの中で電話をかけ続けさせられる男の、二人だけと言っても良いくらいのもので、会話だけで作られているような心理映画なのですが、映画としてもきちんと細かいところまでお金をかけて作られていることがわかり、安心して見ていられます。

 ストーリー自体は荒唐無稽と言えなくもないのですが、こちらを引き込むだけのきっちりとした脚本と舞台装置が用意されていますから、安心して話に浸っていられます。時間も最近の映画としては短めの81分ですので、だれることもなく一気に終わりまでいけます。お薦めです。

 最近は映画を選ぶ必要があった時には、出演俳優で選べばまず間違いないという気がしています。この映画も、渋めですがいい俳優が出ています。

 逆に言うと、出演俳優を見るとダメな映画もわかると言うわけです。

 日本の場合は良くわからないこともあるのですが、アメリカ映画に関していうならば俳優が出る映画を選んでいることが感じられますので、彼らの判断を信用してもいいということだと思っています。

 人を信用するということはなかなか難しいことですが、それができるならばブレインが増えることになりますから、信用できる人間を増やしていくことができれば、生きることにも少し楽ができるように思えます。これからも、信じらることのできる人を増やしていきたいと思います。
# by stochinai | 2004-11-14 17:46 | 趣味 | Comments(0)

雪はありません

 昨夜は、冷たい雨に台風並みの強風が吹き荒れていて、自転車の私は大変な目にあいました。

 とは言え、私はただ濡れ鼠になっただけですが、札幌のすぐ近くに石狩湾新港では貨物船が防波堤に激突し、船体が3つに折れ6人の方がなくなる大事故が起こっていました。

 今朝は、たくさんのヘリコプターが千歳空港からも飛んできて、自宅の上空を通って石狩方面へ向かっておりましたが、たいへんだったようです。

 昨夜の予想では、雨は雪の嵐となり、朝には一面の銀世界になっているという雰囲気だったので、今朝は明るい光が漏れているカーテンを開ける時には、ちょと期待をしてしまいましたが、外は太陽が照りつけていたものの、雪のかけらもありませんでした。気温も、思ったほど低くはありませんでした。なんだか、肩すかしを食らった感じです。

 今年は、本当に天気の変化が荒っぽい気がします。

 荒っぽいと言えば、国会の党首討論での某氏の発言については、しばらくは書く気分になれないほど落ち込んだ気分にさせられたいました。

 サマワを非戦闘地域と断言した根拠は何かと問われたことへの答が「戦闘が行われていない。だからこそ非戦闘地域だ」でした。

 これは、「非」という接頭語の使い方を習ったばかりの中学生(小学生?)の答としては許されるかもしれませんが、高校生以上だと不可か、お情けで鉛筆代として10点満点中の1点くらいをやろうというレベルの答です。

 法人化された大学では、経営の圧迫源であるとして全国的に非常勤講師を削減しようという動きがあるようです。これまで大学教育の中で大きな貢献をしてきた非常勤講師の方々を経済原則だけで切り捨ててよいはずはなく、そんな時に「では、大学にとって非常勤講師とは何なのですが」と質問した時に、「非常勤講師とは、常勤ではない講師のことです」と学長などが答えたとしたら、どうでしょう。

 その瞬間に、その人の学問する人としての権威は失墜します。つまり、彼はその時に研究者として死を迎えるのです。我々、研究者の置かれているのはそのくらいの厳しさのある場所であり、自己点検とか自己評価とか第三者評価とか言われるまでもなく、長い時間をかけてそのような緊張感のある環境が築かれてきたのです。

 その大学を含めた組織の運営に責任を持っている政府の最高責任者が、すべてを台無しにするような発言を繰り返していることは、日本全体に対する侮蔑であり政府というものに対する責任放棄です。あの瞬間に、政治家生命が失われなかったことに対しては、日本国民全体が責任を持たなければならないと感じました。脱力していて済む話ではありません。

 なぜかと考えてみると、どうも首相にも任期があるということがこの無責任の原因のひとつであるような気がしてきました。大臣なども、どうせ改造までの半年か1年しかその任にいないんだし、首相にしてもいくら長くても残り2年くらいということになると、「旅の恥はかき捨て」みたいな粗雑な言動が、彼らの口から次から次へと出てくるのもわかるような気がします。

 そう考えると、今大学の現場などで任期制こそが教員や研究者の質を維持するための切り札の一つなどと言われて推進されていることについても、冷静に考え直して見た方が良い気がしてきました。

 再任が期待できない任期制ほど、人間のモラルと品性をダメにするものがないということを首相自らが実例になって示してくれたという、ポジティブ(?)な評価も可能かなというのが、この件に関する精一杯のサービス・コメントです。
# by stochinai | 2004-11-13 17:47 | つぶやき | Comments(0)

ひとくきの 白あやめなり いさぎよき     日野草城


by stochinai