いつまでも落ち着けないクシクラゲ
一方、2011年には5億8千万年前の化石が中国から出てきて、それを見ると当時すでに出現していたクシクラゲの先祖は、2本の触手を持った左右相称ではなく、今のクラゲよりもさらに原始的な形態をしているように見えるため、クシクラゲはカイメンよりも後に出現したかもしれないけれども、同じくらい古くからいて、クラゲよりは原始的と考えられるという説も出てきました。
今回のニュースは実はまだ論文になっていない学会発表の段階での報道なので、その分は学問的信頼度は差し引いて考えておいたほうがいいかもしれません。
それにしても、Natureが取り上げているのですから、引用する価値はあると思います。
シアトルのワシントン大学のBillie Swalla達は一番上に写真で出ているグースベリー・クシクラゲのゲノムを解析して、1月3日から7日までサンフランシスコで開かれていたSociety for Integrative and Comparative Biologyの年会で発表したのは、クシクラゲはカイメンよりも原始的なグループなのだということだったのです。フロリダ大学のグループは下のほうに出ているクシクラゲMnemiopsis leidyiのゲノムを解析し、クシクラゲはカイメンよりも原始的であるか、あるいは同等に原始的だと結論しています。
結局、今生きているカイメンとクシクラゲを比較すると明らかにクシクラゲの方が複雑な体制をしているので、後に進化してきたように見えるかもしれないけれども、両者の先祖がどういう形態をしていたかなどということは今行きている子孫をいくら見比べてもわからない。だからゲノムの結果のほうが信頼できるというのが、彼らの主張です。
最近注目を集めているmicroRNAという遺伝子産物があって、あらゆる動物で広く重要な働きをしていることがわかっているのですが、クシクラゲはmicroRNAを作るために必要な酵素を持たない唯一の動物だということです。さらに、クシクラゲやカイメンは他の動物がみんな持っている遺伝子ファミリーのうち持っていないものがあるのだとも言っています。もしカイメンがクシクラゲよりも後に進化してきた動物だとしたら、その後に「退化」したと考えられます。あるいはカイメンは我々がまだ知らないユニークな性質を持っているかもしれません。
彼らの報告が論文になるのを楽しみにしたいと思いますが、カイメンとクシクラゲのどっちが原始的なのかという論争はまだしばらく続きそうな感じがします。
傍で見ているだけでも楽しい動物の起源論争です。