5号館を出て

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あるMLの閉鎖

 ガ島通信さんの撤退宣言の余波が収まらない本日の午後6時頃、衝撃のメールが飛び込んできました。

 「突然の事で申し訳ありませんが,いろいろな事情を勘案して,月末(3月28日昼頃)をもって,本MLを廃止する事を決めました.・・・・・・本年の1月頃から,廃止にしようと考えてきました.理由はたくさんありますが,10年一区切りと思っています.」

 私がそのMLに参加したのが4-5年前のことですので、MLはその時にはもう5-6年の歴史を持っていたと言うことになります。

 「現在の配信アドレスは,1300です.延べでは3500程度でした.専用のサーバになって今の機械で3台目です.過去には,学生でお金がなく,寄付を受けてサーバを構築したこともありました.」

 何となく感じてはいたのですが、これほど大規模に運営されているMLであるのにもかかわらず、基本的にはたった一人のボランティアと、その人のプライベートなサーバー・マシンによって運営されていたようです。(ほとんど意識せずに、使わせていただいていました。ありがとうございました。)

 そのMLは「理科教育メーリングリスト(http://rika.org/)」という名で、理科教育関係の教員を中心に、学生、生徒の父母、研究者などが、理科教育に関係した(あるいは関係しない)様々な話題について、かなり精力的にやりとりがなされているMLでした。

 そんなMLが、たった一人の、しかも始めた頃はおそらく学生だった人の活動に支えられて10年も続いていたとは、その方のボランティア精神に感謝すると同時に、インターネットの持つ信じられないほどのコスト・パフォーマンスに感動しています。

 しかし、その方が今や理科教育とは離れた分野に職を得ておられるらしく、さらには「個人情報保護法への対応で作業が発生し,その作業負荷に耐えられない」という状況はかなり深刻な現実なのだと思います。個人情報保護法がそうした、中規模のコミュニケーションの破壊につながるということも再認識しました。何千人でも何万人でもが参加するMLでも、技術的には個人の持つパソコンで運用は可能なのでしょうが、法的な対応が必要になってくるとなると話はガラッと変わってくると思います。これについては、いずれまた改めて考えてみなければならないと思っています。

 それと、もうひとつの大きな理由はネット環境の変化です。少数の大きなMLが力を持っていた時代から、たくさんの多様なMLへと分化が進んでいることと、ブログやホームページによる個人を中心とする情報交換の手段だどんどん進化していること、などから1000人以上の参加者を持つメガMLの存在意義は、10年前と比べるとずいぶんと小さくなってきていることも、また事実だと思います。

 日本で3月というのは、旧年度の最後の月ですから、人が身の振り方を考え、大きな動きをする時期ではあります。大学でも、卒業生を送り出し、来月に入ってくる新入生を迎える準備をしなければならない、一年でもっとも落ち着かない時期です。新たな希望に心が弾み始める時期でもありますが、新年度に向けて新しい動きのできない自分を見つけて、心が乱れる時期でもあるのです。

 いろんな人のいろんな動きを見るにつけても、さて自分はどうするのかと問いかけられているような気もするこの時期が、日本では春という季節で本当に良かったと思うこともあります。これが、欧米のように冬を迎える直前の秋だったら、精神の落ち込みに耐えられない人が増えてしまうことが心配にもなる今日この頃です。

 日本の新年度が春なのには、そういう意味もあるのだとしたら、国際化という名の下に検討されている、新学期の秋開始というアイディアをそう簡単に受け入れない方が良いのかもしれないですね。
by stochinai | 2005-03-06 23:59 | つぶやき | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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