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クローズアップ現代: 教育に穴が空く ~“非正規”教員 依存のひずみ~

 先ほど放送していた、NHKのクローズアップ現代は、日本の公教育がすでに崩壊してしまったことを示していました。

11月6日(木)放送
教育に穴が空く
~“非正規”教員 依存のひずみ~


 昔から、小中高校の非常勤講師をする方々の多くは、チャンスがあれば正規教員になりたいと思っているので、信じられないほどの待遇の悪さにも耐えて、お小遣い程度にしかならない非常勤講師を続けながら、教員試験に挑んできたのだと思います。

 ところが、「財政難に苦しむ多くの自治体では、ここ数年、教育予算を抑えるため、正規の教員数を削減し続けてきた」ということです。ということは、たとえ非常勤講師を続けていても正規の教員として採用される可能性はどんどん低くなってくるわけで、これではやっておられないと非常勤講師を辞めてしまう人も増えているのではないでしょうか。

 実際、番組にでてきた非常勤の方々の生活ぶりを見ていると、見ている方がつらくなるほどのものでした。

 教員を減らしつつ、「教育現場には、少人数学級など『きめ細かな教育』が求められている」として非常勤の採用を増やそうというわけですから、数のミスマッチが起こるのは当然すぎるほど当然のことです。そして非常勤講師の数が、なんと「教師全体の少なくとも14%に上っている」と聞いては、この国は教育を放棄したのだと思いました。

 実は、これは小中高の公教育のことだけではなく、近い将来国立大学にも起こりうることだと思われます。

 今はまだ、大学教員を目指して非常勤講師やポスドク、さらにはテクニシャンで糊口をしのいでいる人が多いので、顕著には見えていないと思いますが、この先は大学、特に研究環境の整っていないところに就職したいという人は激減するだろうということが予測されます。つまり、大学教員になったからといって、必ずしも研究環境が保証されているわけではないことや、大学の教員や事務員が減る一方で、教育や事務的雑用の負担が年々増大しているのが、今の大学だからです。

 それが、知れ渡ってくると、臥薪嘗胆長い年月をかけて苦労してまで大学の教員になろうと思う人は減ってくるだろうと思います。

 就職希望者がいなくなるということは、その業種はすでに崩壊していると考えられますので、今や日本の小中高の教育は崩壊しており、やがて大学も崩壊するだろうということを予感させる番組でした。

 しかし、ここまでひどいことになっても、何も変化が出てこないということは、国民が教育を必要としていないということなのでしょうか。その一方で大臣経験者やどこぞの知事さんが、もはや亡霊のような存在に過ぎない日教組批判を繰り返しているという状況は、ブラックジョークですらありません。

 大学ならばいらないという人がいても不思議はありませんが、小中高校もいらないと思われているのでしょうか。あるいは、教育のことを考えるほどの余裕がないほど、生活に追われているのでしょうか。

 ちょっと、わからなくなってきました。

 winter-cosmosさんも頭をかかえておられるようなので、トラックバックを送ります。
Commented by KI at 2008-11-06 22:57
近い将来どころか,教養部廃止以降の「一般教養科目」の非常勤講師率は,某有名国立大学ではすでに50%らしいです.
Commented by winter-cosmos at 2008-11-07 19:36
こんばんは。
TBありがとうございます。たくさんのお客様でびっくりしました。(^^;

あの番組で紹介されたところのことを思えば、まだこちらは恵まれているのかもしれません。
それでも、うちの新米さん(高校の数学です)は、毎日ヘトヘトのようです。
Commented by さなえ at 2008-11-07 20:12
私もこの番組を見て驚きました。国民の権利を考えると、教育に関することに効率を持ち込むのはおかしなことです。特に日本の資源は人なのですから、教育に必要なことを予算化して積み上げていき赤字は補填する姿勢でなければならないと思います。ただ、教科書の無償配布は中止して、貸与にすべきだと思っていますし、無駄は徹底して省くべきですが。
Commented by もと非常勤講師 at 2008-11-07 20:31
教育現場には予算より大きな問題があります。たとえば教科主任、担任、また学年主任のようなポストにつく手当の廃止です(平等という名目の組合活動の大きな成果)。負担の大きな仕事は責任感がある若い人に押し付けられます。若いという理由で、部活の顧問やコンピュータを使う雑用一切が押し付けられます。組合が本当の意味で必要な若い人は組合活動をする時間がありません。組合(政治)活動をするのは団塊世代とその少し下の世代です。その昔卒業式で国旗を暴力的に引き摺り下ろした武勇伝を楽しげに語ります。政府見解と異なる論文を発表した自衛官は辞めさせられますが、国旗を引き摺り下ろした公務員はお咎めなしです。偏狭な理想論を振りかざして現実を見ようともせず、押し付け理想論と現実の間で悩む若手にすべての責任を負わせる、無責任で身勝手な権利意識の病的に肥大した団塊世代の一掃が必要です。団塊世代の仕事に対する不当に高い給料は、若手の負担の上に成り立っています。
Commented by stochinai at 2008-11-07 20:57
 世代間闘争がここにもありますね。日本を動かしている官僚や国会議員もこの年代の人が多いので、なかなか変わらないのだと思います。もちろん、彼らを一掃することなど無理ではありますが、若い年代の代表を国会に送ることはできるし、必要なことではないでしょうか。戦わずして良い結論が得られるならそれが一番ですが、世代間闘争をせずに解決できないのだとしたら、若者が団結して立ち上がらなければならない時だとも思います。
Commented by 定数改善 at 2008-11-08 16:09
文科省も教育に対する要求が高まっているなかで、逆に人手を減らすのはよくないとわかっていて定数改善も試みましたが財務省が予算をくれず、その落とし所として団塊世代の退職者を嘱託で雇い続けて穴を埋めるつもりだそうです。
これで一時的にしのげてもそのかわり、若者の新規採用が減り続けるだけで、教師としてのノウハウが下世代に円滑に継承されないなどの問題が残るだけですが。新自由主義による公共部門の予算カットが世代間格差を助長する好例だと思います。
この問題に関しては総務省も罪深いと思います。もともと三位一体の改革や市町村合併は学校の統廃合を促し教員の人員削減をもたらすだけでしたが郵政選挙の直後に竹中氏が総務相に就任してからさらに露骨に交付税カットなどで人員削減への圧力をかけてきたと思います。自治体が自由に使える交付税は削る一方箱ものを作るのに有利な起債などに依存せざるを得ない自治体の財政の体質は改めようとせず・・・。人作りのための投資よりコンクリを流しこむことに予算が垂れ流されるこの国の前途は明るくなさそうです。
by stochinai | 2008-11-06 21:11 | 大学・高等教育 | Comments(6)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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