2008年 12月 09日
精神を病んだ人間の犯罪
東金市の女児殺害事件の犯人と思われる人間が逮捕されました。確か土曜日に逮捕されたと思うのですが、その時の報道から犯人は精神を病んでいる精神的な問題を抱えている人間であることがすぐに感じられました。
知的発達の遅れから養護施設に入っていたということも報道されており、普通に考えても一般の殺人犯とは同様に扱えないと思っていたので、昨日のワイドショーやニュースで、犯人と記者たちが個人的に接触して取材された膨大な量のビデオが繰り返し放送されていることに、なんとも言いようのない気持ちの悪さを覚えております。
犯人が気持が悪いというのではありません。知的障害だけではなくそれ以外にも精神的障害疾患が疑われる犯人に接触して、一緒に行動したり、話をさせたり、カラオケをさせたりということをやっている放送局員(これは、とても「記者」と呼ばれる人がやっていることではないと感じます)の方々の行動が気持ち悪いのです。
興味本位で犯人に近づき、犯人の弱点であると思われる女性を使って取材するという態度を見ていると、この人達に放送倫理という言葉は通じないのだろうという無力感にも襲われます。
現時点では、彼の実名を出すことにすら意味があるとは思われません。
それはさておき、警察の発表ということで彼が言ったという「気が付いたら女の子が部屋で死んでいた」という言葉を聞いて、少し前に広島で女の子を殺したペルー人の言葉を思い出しました。彼も確か逮捕された時に「気が付いたら、部屋の中で女の子が死んでいた」と言っていたように記憶しています。また、「悪魔が自分の中に入ってきた」とも言っていました。
偶然の一致か、今日広島高裁で開かれた控訴審判決公判で、ヤギ被告の量刑を、「無期懲役とした一審判決を破棄、審理を広島地裁に差し戻した」というニュースが流れ、不思議な気持になりました。
もちろん、殺人を犯したことを認めたくないために、彼らが根も葉もないウソを言っている可能性も高いと思いますが、ひょっとすると彼らの脳の中には人を殺している時の人格と、死んだ女の子を見て我に返った時の人格が引き裂かれて存在しているのかもしれないとも思えます。
だからと言って、殺人が許される訳ではないので、彼らは一生どこかに閉じこめておくか、それ以上の刑を与えることが適当だとは思いますが、彼らが同じようなことを言っていることにはなんらかの脳の基質的あるいは精神的「原因」があるのかもしれないと気になります。
土浦・秋葉原の無差別殺傷事件や、元厚生事務次官殺害事件などを見ていても、とても正常な精神状態とは思えない人間のやったことに思えます。彼らを抹殺することは、ある意味で簡単なことかもしれませんが、我々が目指すべきことが報復ではなく再発防止であるならば、このような精神状態の人間がどうして生じてきたのか、どうして野放しにされてきたのか、どうしてサポートする人間がいなかったのか、そしてどうして最後の行動に出たのかを理解することだと思います。
「報道」と称して、いたずらに興味本位の猟期番組を増やすのではなく、再発防止のために何をなすべきかを我々と一緒に考える番組作りをお願いしたいところです。
知的発達の遅れから養護施設に入っていたということも報道されており、普通に考えても一般の殺人犯とは同様に扱えないと思っていたので、昨日のワイドショーやニュースで、犯人と記者たちが個人的に接触して取材された膨大な量のビデオが繰り返し放送されていることに、なんとも言いようのない気持ちの悪さを覚えております。
犯人が気持が悪いというのではありません。知的障害だけではなくそれ以外にも精神
興味本位で犯人に近づき、犯人の弱点であると思われる女性を使って取材するという態度を見ていると、この人達に放送倫理という言葉は通じないのだろうという無力感にも襲われます。
現時点では、彼の実名を出すことにすら意味があるとは思われません。
それはさておき、警察の発表ということで彼が言ったという「気が付いたら女の子が部屋で死んでいた」という言葉を聞いて、少し前に広島で女の子を殺したペルー人の言葉を思い出しました。彼も確か逮捕された時に「気が付いたら、部屋の中で女の子が死んでいた」と言っていたように記憶しています。また、「悪魔が自分の中に入ってきた」とも言っていました。
偶然の一致か、今日広島高裁で開かれた控訴審判決公判で、ヤギ被告の量刑を、「無期懲役とした一審判決を破棄、審理を広島地裁に差し戻した」というニュースが流れ、不思議な気持になりました。
もちろん、殺人を犯したことを認めたくないために、彼らが根も葉もないウソを言っている可能性も高いと思いますが、ひょっとすると彼らの脳の中には人を殺している時の人格と、死んだ女の子を見て我に返った時の人格が引き裂かれて存在しているのかもしれないとも思えます。
だからと言って、殺人が許される訳ではないので、彼らは一生どこかに閉じこめておくか、それ以上の刑を与えることが適当だとは思いますが、彼らが同じようなことを言っていることにはなんらかの脳の基質的あるいは精神的「原因」があるのかもしれないと気になります。
土浦・秋葉原の無差別殺傷事件や、元厚生事務次官殺害事件などを見ていても、とても正常な精神状態とは思えない人間のやったことに思えます。彼らを抹殺することは、ある意味で簡単なことかもしれませんが、我々が目指すべきことが報復ではなく再発防止であるならば、このような精神状態の人間がどうして生じてきたのか、どうして野放しにされてきたのか、どうしてサポートする人間がいなかったのか、そしてどうして最後の行動に出たのかを理解することだと思います。
「報道」と称して、いたずらに興味本位の猟期番組を増やすのではなく、再発防止のために何をなすべきかを我々と一緒に考える番組作りをお願いしたいところです。
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yugo-yuzin-hana at 2008-12-09 23:13
精神科勤務の者です。
報道だけで精神障害の有無は判別できません。
精神を病む=統合失調ということなら、僕は全く報道だけからは
そうは全く「感じません」。あの報道の受け答えから精神病圏を
疑うの無理を感じます。
PDD(広汎性発達障害)は確かにクエスチョンを「感じ」ましたが、
これは生得的なもので、彼らの精神が病んでいると捉えるのには
ぼく自身は疑問を感じます。
MR(精神遅滞)の人の精神を「病んでいる」と考えるのも正しい
認識ではないでしょう。
個人的には触法精神障害者の犯罪行為は、当人の現実検討能力に
応じて、それなりに裁かれて、責任を取る必要があると考えています。
報道だけで精神障害の有無は判別できません。
精神を病む=統合失調ということなら、僕は全く報道だけからは
そうは全く「感じません」。あの報道の受け答えから精神病圏を
疑うの無理を感じます。
PDD(広汎性発達障害)は確かにクエスチョンを「感じ」ましたが、
これは生得的なもので、彼らの精神が病んでいると捉えるのには
ぼく自身は疑問を感じます。
MR(精神遅滞)の人の精神を「病んでいる」と考えるのも正しい
認識ではないでしょう。
個人的には触法精神障害者の犯罪行為は、当人の現実検討能力に
応じて、それなりに裁かれて、責任を取る必要があると考えています。
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ある
at 2008-12-09 23:27
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元厚生省役人殺人の犯人とこの東金市の殺人の犯人、2人とも病的な精神の持ち主であることには間違いないですが、前者が孤立攻撃性を持っているのに対して、後者は自己満足非協調型といういずれも現在が生み出した犯罪者だなあと言うのが印象です。そういう危険人物が身の回りに一杯いることを認め、そういう人格障害者たちを孤立、暴走させないよう社会体制を作る必要があるのかもしれませんね、
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H
at 2008-12-09 23:29
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M(Mild)MRであれ、MRであれ、もし放送されているような診断名が「正しい」のだとしたら、「精神を病んでいる」という表現には疑問を感じます。統合失調とは「まったく」別の話であり、MRを「精神を病んでいる」と言うように表現されるのは(精神科医では有りませんが)医師として非常に抵抗を感じます。科学に携わるものとして、無責任に騒ぎ立てるゴミと一緒の視線にまでは落ちたくないものです。
このような一人暮らしを出来るか否かの境界領域の知性で一人で暮らして(若しくは暮らさざるを得ない事情を持って)居られる方は大勢居る訳で、その人たちに要らぬ視線を落とすものだと思います。このような犯罪を防ぐ方法をこそ考えるべきではないでしょうか。
(例えば、この犯罪犠牲者になった子供さんを、お母さんが仕事の合間にケアできるシステムの拡充などの本質的な議論など、、、。)
このような一人暮らしを出来るか否かの境界領域の知性で一人で暮らして(若しくは暮らさざるを得ない事情を持って)居られる方は大勢居る訳で、その人たちに要らぬ視線を落とすものだと思います。このような犯罪を防ぐ方法をこそ考えるべきではないでしょうか。
(例えば、この犯罪犠牲者になった子供さんを、お母さんが仕事の合間にケアできるシステムの拡充などの本質的な議論など、、、。)
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A
at 2008-12-09 23:45
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>昨日のワイドショーやニュースで、犯人と記者たちが個人的に接触して取材された膨大な量のビデオが繰り返し放送されていることに、なんとも言いようのない気持ちの悪さを覚えております。
>犯人に接触して、一緒に行動したり、話をさせたり、カラオケをさせたりということをやっている放送局員(これは、とても「記者」と呼ばれる人がやっていることではないと感じます)の方々の行動が気持ち悪いのです。
>興味本位で犯人に近づき、犯人の弱点であると思われる女性を使って取材するという態度
被疑者の精神障害の有無にかかわらず、
このような取材及び放送がなされたことには嫌悪感を禁じ得ません。
被疑者を弄ぶ様はほとんど2ch的ですらあります。
アナも顔をさらしてよくこんな恥ずかしいことができますね。
>犯人に接触して、一緒に行動したり、話をさせたり、カラオケをさせたりということをやっている放送局員(これは、とても「記者」と呼ばれる人がやっていることではないと感じます)の方々の行動が気持ち悪いのです。
>興味本位で犯人に近づき、犯人の弱点であると思われる女性を使って取材するという態度
被疑者の精神障害の有無にかかわらず、
このような取材及び放送がなされたことには嫌悪感を禁じ得ません。
被疑者を弄ぶ様はほとんど2ch的ですらあります。
アナも顔をさらしてよくこんな恥ずかしいことができますね。
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stochinai at 2008-12-10 00:04
医師の方々からコメントをいただき感謝します。しかし、今回のことも含めやはり医療関係の方々からの説明が足りないと感じます。単に私が理解不足なだけかもしれませんが、一般に人々に対する精神疾患や疾患ではない精神状態がどういうものなのかを、機会あるごとに説明していただけるとありがたいです。統合失調ということだけをとりあげてみても、我々の理解は非常に浅薄なものですが、それを正すことを精神医療に関係している方々にお願いするのは過大な要求でしょうか。脳トレのようなものばかりを押しつけられて、本当の情報をいただけていないと感じる毎日です。
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umishida
at 2008-12-10 01:01
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うーん、それはやはり過大な要求なのではないでしょうか。私は、統合失調についても、知的障害についても、一般的な知識は持っているつもりです。それは、身近に障害をもった人間が現れた時に、本屋で一般向けの解説書を漁って得たものです。そういう意味では、現状でも情報はAvailableです。
機会あるごとに説明して欲しいという要求も理解できますが、それはむしろ報道機関に対してすべきではないでしょうか。取材がくれば丁寧に答える、という医療関係者は、それなりにいるのではないかと想像します。
機会あるごとに説明して欲しいという要求も理解できますが、それはむしろ報道機関に対してすべきではないでしょうか。取材がくれば丁寧に答える、という医療関係者は、それなりにいるのではないかと想像します。
発達障害について臨床心理学の立場から研究、実践しています(臨床心理士&大学教員)。タイトル自体の件については、医師の方からのコメントもあり、stochinai先生もご理解いただいたかと思います。
発達障害や、知的障害などについては、最近、特別支援教育の関係で、わかりやすい解説本が、いくつかの出版社からシリーズで刊行されています(精神障害について解説されたものも、あります)。中には、子どもが読んでも分かるように作られたものもあります。それらの媒体によって、障害のある方についての、さらに正しい理解が広がることを願うものです。
ところで、今回のエントリーの主題は、「精神障害」「発達障害」などを伴う(および、それが十分に推定されるであろう)人たちに対する、マスコミの取材、報道のあり方に対する疑問の提示にあると思います。今回の容疑者については、軽度知的障害があることが報道されています。報道されている範囲で知り得る彼の行動は、軽度知的障害があるという観点から理解できます。ただ、テレビ報道、とくに、ワイドショー的な番組の報道の仕方は、いかがなものかという点については、stochinai先生のご意見に賛成したいと思います。
発達障害や、知的障害などについては、最近、特別支援教育の関係で、わかりやすい解説本が、いくつかの出版社からシリーズで刊行されています(精神障害について解説されたものも、あります)。中には、子どもが読んでも分かるように作られたものもあります。それらの媒体によって、障害のある方についての、さらに正しい理解が広がることを願うものです。
ところで、今回のエントリーの主題は、「精神障害」「発達障害」などを伴う(および、それが十分に推定されるであろう)人たちに対する、マスコミの取材、報道のあり方に対する疑問の提示にあると思います。今回の容疑者については、軽度知的障害があることが報道されています。報道されている範囲で知り得る彼の行動は、軽度知的障害があるという観点から理解できます。ただ、テレビ報道、とくに、ワイドショー的な番組の報道の仕方は、いかがなものかという点については、stochinai先生のご意見に賛成したいと思います。
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yugo-yuzin-hana at 2008-12-10 07:34
TV等で「専門」のコメンテーターが知ったように要因を様々に論じていますが、近年報道された社会的に有名な重大犯罪(少年・少女、青年等による)のか少なからぬケースの背景にPDDがあることは疑いないかと思っています。しかし、報道でその事件を伝えた場合、普通に適応して生活しているアスペルガー障害や高機能自閉症の方達に対して多大な社会的差別をもたらす危険性もあり、PDDと犯罪を絡めて報道するのには個人的には反対です。統合失調症の有病率は約1%、PDDはおそらく広くとって2-3%あたりでしょうから、誰の身近にもいらっしゃいます。上記でお書きになられていたように、近年関連書籍は山のように出ています。「知ろう」と思えば簡単にアクセス出来ます。
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123
at 2008-12-10 11:07
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精神的問題が生じるのに、単に遺伝的な素因が理由であるばかりでなく、核家族などの状態によって十分な世話をしてもらえずに育って、色んな意味での脳の発達が不十分になっている例が増えているのではないでしょうか? また人とのつき合いが希薄なまま育って、社会に出た時に大きなストレスを感じて変調を来す場合も多いのではないでしょうか?
双極性障害(躁うつ病)II型を持っています。最近分かりました。
うつを持っている女性が工場勤務で品物に針を入れた事件があって、その裁判がTVニュースになっていました。うつを持っているからということが考慮され、執行猶予が付いていましたが、わたしにはどうしてそうなるのか因果関係が分かりません。
マスコミの浅薄な報道と言えば、大阪・池田小での小学生殺傷事件のときに犯人が精神科に通った履歴があって、何か薬を飲んでいたという報道があって、一斉にマスコミが騒ぎました。ですが、その手の薬はおおむね気分を落ち着かせるものであって、覚せい剤のような効果の出るものはごく少ないのです。
そのときの騒ぎから、こんなに何も知らずに報道しているんだ、とつくづく分かりました。この事件に際して同じような精神障害者が傷ついたことを報道したのは、「赤旗」だけでした(わたしは共産党員ではありません)。その薬はネットでの噂では「デパス」だったとか。ごく弱い安定剤です。
精神科近辺の話がなかなか公にならないわけは、未だに根強い偏見があると思います。最近はうつが市民権を持ちすぎて、「うつの診断書下さい」という人もいるようですが……
うつを持っている女性が工場勤務で品物に針を入れた事件があって、その裁判がTVニュースになっていました。うつを持っているからということが考慮され、執行猶予が付いていましたが、わたしにはどうしてそうなるのか因果関係が分かりません。
マスコミの浅薄な報道と言えば、大阪・池田小での小学生殺傷事件のときに犯人が精神科に通った履歴があって、何か薬を飲んでいたという報道があって、一斉にマスコミが騒ぎました。ですが、その手の薬はおおむね気分を落ち着かせるものであって、覚せい剤のような効果の出るものはごく少ないのです。
そのときの騒ぎから、こんなに何も知らずに報道しているんだ、とつくづく分かりました。この事件に際して同じような精神障害者が傷ついたことを報道したのは、「赤旗」だけでした(わたしは共産党員ではありません)。その薬はネットでの噂では「デパス」だったとか。ごく弱い安定剤です。
精神科近辺の話がなかなか公にならないわけは、未だに根強い偏見があると思います。最近はうつが市民権を持ちすぎて、「うつの診断書下さい」という人もいるようですが……
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ある
at 2008-12-10 19:07
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ヨシダヒロコ さんのおっしゃるように、こういう事件が誤解に基づく差別を生まないようにしなければならないでしょうね。
by stochinai
| 2008-12-09 22:12
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Comments(11)