5号館を出て

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岡林信康の時代から40年

 年越し派遣村のニュースを見ていて、かつて山谷や釜ヶ崎(あいりん地区)で行われていた「越年闘争」の話を思い出していました。昔といっても1970年前後の話で、その頃は日本の高度成長の陰で大量に生み出されていた「日雇い労働者」が、仕事のない年末年始に餓死や凍死したりするのを防止するために、東京なら山谷、大阪なら釜ヶ崎という日雇い労働者が集まるドヤ街と呼ばれる街で行われていた炊き出しをそう呼んでいたのだと思います。

 タイミング良く、先ほどBSで岡林信康が「山谷ブルース」を歌っていました。彼が歌い始めてから40年になるのだそうですが、時代がらせん的に回帰したのか、当時から何も変わっていないのか、岡林の歌は完全に今の時代にも重なります。山谷ブルースの「今日の仕事は辛かった 後は焼酎をあおるだけ」という歌詞は、リアルタイムでは知らない人でも、かなりの人が知っているのではないでしょうか。
  工事終わればそれっきり お払い箱の俺達さ
  いいさいいさ山谷の立ちんぼう
  世間怨んで何になる
 当時は「自己責任」などという流行語はなかったと思いますが、右肩上がりの高度成長期ですから、それなりの「努力」をしてある程度の「学歴」を身につけていれば、なんとか「一億総中流」の仲間入りをすることはかなりの現実味を帯びた未来であり、逆に日雇いの職に甘んじている人たちは、自分たちは自己責任の結果そうなったという「自覚」を持っていた人も多かったのかもしれません。

 その一方で、その高度成長を最底辺で支えているのが自分たちであるという「自覚」もあったのだと思います。
  人は山谷を悪く言う だけど俺達いなくなりゃ
  ビルもビルも道路も出来ぁしない
 岡林は下のように歌っていましたが、彼らが解放される日が来るとは誰も思ってはいなかったでしょう。
  だけど俺達ちゃ泣かないぜ 働く俺達の世の中が
  きっときっと来るさそのうちに
  その日にゃ泣こうぜうれし泣き
 しかし40年たって、逆にその状況がこんなに広がるということもまた想像していなかったのだとも思います。

 山谷や釜ヶ崎の日雇いや派遣労働者のこともそうですが、貧困が大きな原因のひとつになって起こったのかもしれないいろいろな「事件」見聞きするたびに、岡林の歌を思い出すことが多くなる今日この頃です。NHKにライブなどに出るということで、彼の志(思想?)を疑う人もいるのかもしれませんが、私は逆に彼の歌が「思想」などを越えた「普通の出来事」になってきている現実を感じました。
チューリップのアップリケ

岡林信康 作詞/作曲

うちがなんぼはよ おきても
お父ちゃんはもう くつトントンたたいてはる
あんまりうちのこと かもてくれはらへん
うちのお母ちゃん どこへ行ってしもたのん
うちの服を はよう持って来てんか
まえは学校へ そっと会いに来てくれたのに
もうおじいちゃんが 死んださかいに
だれもお母ちゃん 怒らはらへんで
はよう持って来てんか
スカートがほしいさかいに

チューリップのアップリケ
ついたスカート持って来て
お父ちゃんも時々 こうてくれはるけど
うちやっぱり お母ちゃんにこうてほしい
うちやっぱり お母ちゃんにこうてほしい

うちのお父ちゃん 暗いうちからおそうまで
毎日くつを トントンたたいてはる
あんな一生懸命 働いてはるのに
なんでうちの家 いつも金がないんやろ
みんな貧乏が みんな貧乏が悪いんや
そやでお母ちゃん 家を出ていかはった
おじいちゃんに お金のことで
いつも大きな声で 怒られはったもん
みんな貧乏のせいや
お母ちゃん ちっとも悪うない

チューリップのアップリケ
ついたスカート持って来て
お父ちゃんも時々 こうてくれはるけど
うちやっぱり お母ちゃんにこうてほしい
うちやっぱり お母ちゃんにこうてほしい
 今日は、派遣村の受け入れキャパシティを越えて人が集まりすぎたために、厚労省が庁舎内の講堂を開放したり、区が廃校となった小学校の体育館などを開放する方針を決めたというニュースもありました。

 派遣村に集まった人が、初日は100人くらいだったのが2日目の昨日は200人くらい、そして今日は300人を越えた結果が政府や都(区)を動かしたのだと思います。数が力になるという前例になったかもしれません。このまま毎日100人ずつ増えていき、日本中の失業者がすべて東京に集まって国会に圧力をかけるという状況になれば状況も変わるかもしれません。

 なんだか、ようやく民主主義のレッスンが始まったかのように思える日本のお正月です。
Commented by ある at 2009-01-03 05:01 x
一部に「彼らは能力がないから、派遣になった。分相応だ」と考える人もいるのも事実です。逆に、そういう価値観が日本人に増えたのが私にとってショックでした。どんな仕事も神聖ですし、仕事に対するプライドとそれに従事する人たちへの敬意を持つ心は失いたくないものです。
Commented by fn.line at 2009-01-03 06:35 x
終身雇用であると就職前に(事実上)言われて、実際に終身雇用されて定年を迎えた世代というのは労働期間で1世代(微妙な表現ですが)ちょっとではないでしょうか。安定雇用は高度経済成長期の幻です。

かつて貧しかった多くの新興国の国民の生活水準は向上しています。現代は、異常な投資銀行的暴挙の後始末に加えて、自然かつ人類的には日本一国より重要ななグローバルな格差是正が同時進行しています。

アピールが成功しても、有効な政策はあるんでしょうか?
Commented by stochinai at 2009-01-03 09:08
 国内的には、利益の再分配制度を抜本的に改革して、労働している限りは誰でも、最低限度の生活が保障されるようにすべきだと思います。それは、日本人の平均生活水準を下げることになるかもしれませんが、長い目で見たらそれ以外の解法はないと思います。
Commented at 2009-01-03 20:06 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by magu at 2009-01-04 01:26 x
最近の主流の経済学者の発言を聞いていると、「福祉」とか「セーフティネット」といった発想が著しく欠落していることに怒りを覚えます。あまりに暴走した資本主義を肯定するのは、人の不幸を肯定する学問であり、そんな学問が現在の経済学というのなら、学問の名に値しないと思います。
Commented by ななし at 2009-01-04 05:18 x
日本でノーベル経済学賞が出ない理由?
http://soudan1.biglobe.ne.jp/qa660042.html
Commented by コメント at 2009-01-05 01:26 x
派遣社員は無能だから、解雇されたのだ。

そんな意見をネット上でよく見かけます。しかし、そうでしょうか?

アホウ首相は、中学受験の小学生でも間違えないような、漢字の読み間違いをするウツケ者ですが、親の七光りで大企業の社長を務めました。皆さんの職場に、アホウ首相の様な、漢字の読み間違いをする社員が居たら、バカ扱いでしょう。

アホウ首相が、庶民の家の生まれなら、派遣社員になっていた可能性が高い気がします。本人の努力が、、と言いますが、生まれ育った家庭の違いで、立身出世が違う、世襲制の身分社会に逆戻りしている気がします。

私個人の意見ですが、相続税をバカ高くし、本人の能力で生活レベルが決まる様な社会になって欲しいと思います。アメリカは貧富の差がある社会ですが、金持ちでも会社経営に失敗すれば、ホームレスになりますから。。日本もアメリカを真似るなら、こういう点も真似て欲しいですね。
Commented by ありがち at 2009-01-05 01:45 x
それはアメリカ社会の典型的誤解ですね。学閥に閨閥に組合に宗教と、アメリカはセイフティネットだらけです。それからこぼれた移民などは悲惨なことになりますけどね。
Commented by コメント at 2009-01-05 14:10 x
>>ありがちさんへ

私は誤解などしていません。あなたが書かれたことも、実体験として経験した上で書いています。

私が指摘したいことは
日本の政治家が、「競争原理を、市場原理を入れる」と宣伝し、実は正反対の、「世襲制に近い身分社会」を作ったことです。

アメリカでは、市民自身が、建前(理想)として、
「努力次第で社会的成功を得られる。(逆に、ホームレスもありうる。)」
と信じていました。。。

アメリカから競争的制度を入れるなら、日本の支配層に都合の良い部分だけでなく、”建前”の部分も実行して欲しいものです。

(補足:
建前とは違い、現実には、アメリカはコネが強く、有力者がお気に入りを優遇する社会。相続税も、税率は日本の方が高いかも知れない。本当に競争原理を日本に入れるなら、アメリカの理想(建前)も真似て貰いたい。。。)
Commented by ある at 2009-01-05 23:14 x
よく、大学改革でも「アメリカでは...」とか言う論調をみます。最近は、「アメリカでは...」という論調が減った代わりに、「北欧では...」と言う論調が増えてます。こういう論調をみると、日本にあった独自のシステムを作る能力のある人はいないのかなあ?と思います。
Commented by ある at 2009-01-05 23:18 x
コメントさん

>日本の政治家が、「競争原理を、市場原理を入れる」と宣伝し、実は正>反対の、「世襲制に近い身分社会」を作ったことです。

そう思いますよ。何にもないところから、競争させるなら、フェアーですけど、もともと差があるところに競争原理を入れても、差が拡大するだけですよね。アメリカはどうか知りませんが、
Commented by ない at 2009-01-06 13:58 x
>日本にあった独自のシステムを作る能力のある人はいないのかなあ

どういうシステムを求めるのか現場の人間が主張しない限り無理でしょう。
Commented by あるある at 2009-01-07 00:18 x
>どういうシステムを求めるのか現場の人間が主張しない限り無理でし>ょう。

現場主義
ttp://business.nikkeibp.co.jp/special/fl/
ですね。
Commented by 鶏肋 at 2009-01-08 02:39 x
そういえば総務政務官が派遣村に関して、政治的運動を感じると発現していましたね。「本当にまじめに働こうとする人が集まっているのか」と。

終身雇用が半ば崩壊して、これだけ派遣労働が一般化したのに、新卒偏重の一括雇用は相変わらずなんですよね。この偏向是正と、派遣の待遇を正社員並み(不安定な分、それ以上が好ましいのですが)にするだけで、事態は改善されると考えています。安価な労働力としての「使い捨て」が続く限り、このような状況は繰り返されるでしょうし、もし不況が去った後でまた同じような雇用をしようとするのなら、この国は未来がないと感じます。そういう意味でも、今が試金石なのではないでしょうか。
Commented by ある at 2009-01-08 05:42 x
今までは、「無関心、お任せ」でよかったのですが、どうも、最近の政治、官僚はお任せにすると「危ない」感じです。後期高齢者制度、裁判員制度、年金制度、派遣労働者制度、大学独立法人化etcをみると最近の法律は緻密さが欠けると言うか、法案立案能力がかなり低下している気がします。今、話題の給付金の右往左往がまさにそれを象徴しています。 先のコメントの”現場主義”に立ち返って意見を言わないと不沈空母”日本丸”は沈没しそうです。
Commented by stochinai at 2009-01-08 09:25
 「官僚の質の低下」が日本を迷走させているというのは同感です。それはまさに、我々国民の側が官僚お任せ体制から脱皮しなければならないということにもなります。

 試されているのは、「我々」なのでしょう。
Commented by Musigny at 2009-01-08 10:58 x
>我々国民の側が官僚お任せ体制から脱皮

我々日本人は、やはり他の国々に比べると、どうしても「官僚おまかせ体質」が染み込んでいます。何か問題があると、やはり国や「お上」に頼ってしまう。
良く言われることですが、裁判ものの映画やドラマの場合、欧米では主人公が被告やその弁護士(つまり反体制側)であることが多いのですが
、日本では検事や判事(キムタクのヒーローや大岡越前など)であるうことが多いです。これは、日本人のお上に頼りがちな民族性を表していると言う人もいます。

もちろん、個人個人でやることには限界がありあますから、国や自治体の役割は大きいので、強く要求していくことは必用でしょう。でも、官僚支配からの脱却を目指すなら、個人個人が覚悟をもって自立するということも同時に求められているのでしょう。
stochinaiさんの言われるように、我々も試されているんですよね。
Commented by ある分析 at 2009-01-08 11:05 x
派遣労働者に対する待遇改善は、緊急に必用だとは思います。
ですが、それが逆に日本における雇用機会を減少させてしまう、という分析もあります。
(このタイトルの「ある分析」をクリックすれば、それを見ることができます。)

ここにも、この問題の深刻さと根深さがあると思います。
Commented by コメント at 2009-01-08 11:07 x
官僚の質の低下は、マスゴミ報道と、それを支持した国民が作ったのです。

キャリア官僚と仕事をしたことがありますが、殆ど毎日、午前様の生活です。電車がない時間まで、本当に働くのです。だから、都内の宿舎や、タクシー券が必要なのでしょう。マスゴミの報道と随分違うと思いました。マスゴミ報道は、悪代官の如くかき立てますよね。。

実際のキャリアは、激務を、民間企業(例えばマスゴミ)よりずっと安い月給でこなします。しかし、年を取ってからの就職口すら”天下り叩き”で不確実です。国への使命感で激務をこなしても、「公僕だから当然 」という扱い。若手キャリアの離職率は高いそうです。
Commented by コメント at 2009-01-08 11:19 x
> 最近の政治、官僚はお任せにすると「危ない」感じです。後期高齢者制度、
> 裁判員制度、年金制度、派遣労働者制度、大学独立法人化etc

これらの政策は、アメリカから日本への要求として出される年次改革要望書を実行したものです。

要望書は、日本が中国に出した「対華21ヶ条の要求」の現代版です。アメリカの利益を追求し、日本の国益を害しています。

下記HPにまとめがありますが、小泉内閣は、日本の国益に反することの連続でした。A級戦犯は小泉首相と竹中大臣の二人でしょう。そして、マスゴミがそれを上手く脚色しました。マスゴミにCIAのスパイでも入り込んでしょうか??
http://www001.upp.so-net.ne.jp/fukushi/year/koizumi_cabinet.html
Commented by ある at 2009-01-08 22:28 x
コメント様 情報ありがとうございます。大学教員も似たような立場にいるので、キャリア官僚の気持ちは、よくわかります。でも、最近の法律はちょっとひどいですねえ。
by stochinai | 2009-01-02 23:05 | つぶやき | Comments(21)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai