5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

エッセイ「ダーウィン医学のすすめ」

 講談社から出ている「」という月刊情報誌をご存じでしょうか。年間購読料900円というものですから、まあ有料のPR誌という部類になるのでしょう。書店によっては無料で配布しているところもあるかもしれません。
小冊子「本」は読書人のための月刊情報誌です。
講談社発行の新刊書籍のガイド、著者自身によるPRエッセイをはじめ、文学やアート、社会科学やサイエンス、スポーツに至るまで、幅広い話題を提供しています。現代の碩学による新鮮な古典の味わい、気鋭の学者やライターによる今日的テーマとの格闘など、一般誌にはできない実験的な試みも満載しています。
 2月号が本日発売になりました。
エッセイ「ダーウィン医学のすすめ」_c0025115_1451549.jpg
 色がちょっと異なるページがあるのに気が付かれると思いますが、いくつかの記事はオンラインで全文を読むことができます。今月号は、「対称性とノーベル賞 中沢新一」「『篤姫』に描かれなかった幕末史 町田明広」「『ダーウィン医学』のすすめ 栃内新」「『悪党の戦』と性の密教 金重明」が公開されており、3月号が出るまでの1ヶ月間はここに置かれているはずです。

 というわけで、私のPRエッセイも全文公開されておりますので、興味がありましたらお読みいただけると幸いです。もちろん、中味はブルーバックスの宣伝なのですが、本のタイトルや宣伝コピーからだけでは今ひとつ中味がわからないけれども、店頭に行ってまで見る気分にも慣れないという方がいらっしゃいましたら、どうぞ。

 「ダーウィン医学」のすすめ 栃内新

 3000字以上もある長い文章なので、それを読むのも面倒くさいとおっしゃる方のために、一部を抜粋してご紹介いたします。
「病気なんてものは、治るものは放っておいても治るし、治らないものはどんなにがんばったって治らない」。

 どんなに伝染性や致死性の強い病気であっても、種を絶滅させるまでに至ることは少ないということを推測させる事例がヒトの歴史に残っている。それは第一次大戦中の一九一八年に発生して、全世界的流行(パンデミック)になったインフルエンザ「スペイン風邪」である。正確なデータとは言えないが、当時の全地球人口の半分以上にあたる六億人がこのインフルエンザ・ウイルスに感染(発症)し、死者は全世界で五〇〇〇万人ともいわれている。見方を変えれば、このウイルスはヒトという種の五〇%にしか感染せず、感染したヒトの中でも死に至ったのは一〇%以下ということになる。

 ヒトが持っている病気とたたかう力、病気から自然に治癒する力も、進化の過程で自然選択によって獲得してきたものである。こうした進化論の考え方に基づいて病気を考えると、ヒトがなぜ病気になるか、なぜ治るのか、なぜ薬が効いたり効かなかったりするのか、なぜヒトの身体は完璧ではないのかなどといった疑問が次々と解けていく。

ダーウィン医学自体がまだまだ若い学問であるため、将来の課題として残されている部分が多いことは否めないが、それにしても病気とヒトの身体に対する「常識」が次々とくつがえされる心地よさは味わってもらえるものと確信する。是非とも本書でダーウィン医学に入門していただきたい。
 長々と引用しましたが、自分の著作だからまあ許してもらえるでしょう。

 以上、予告編でした。
by stochinai | 2009-01-22 15:06 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai